魚鳥木、申すか?申さぬか?

ぎょ・ちょう・もく、申すか?申さぬか?
申す!申す! 魚⇒ニシキゴイ。鳥⇒ニホンキジ。木⇒制定無し、花は桜と菊

神葬祭の死生観と葬祭史③

2017年08月12日 | 民俗学探究
神葬祭の死生観と葬祭史② からの続き



人が亡くなってから行われる「葬儀」は、それぞれの地域社会において、
規範となるコンセンサスがあって、その下で行われていた。

現在でも、相互扶助組・共同体(葬式組、葬連組、葬式講中、隣組、弔い組、等)
による葬儀が行われている地域はあるが、戦後の都市化、地方の過疎化、
核家族化によって、規範となる家(イエ)が失われていく中で、
個人化・個性化が進み、葬儀の多様化の要望が進み
「直葬」「樹木葬」「手元供養」など葬儀式が現れてきているのである。

なかでも2010年以降、「葬儀不要論」ともいうべき葬儀への批判が相次ぐとともに、
グリーフケアの観点から葬儀の必要性が再検討されるなど活発な議論が展開している。

特に近年では、経済的な事情や特殊事情から余儀なく選択された
葬式をしない火葬だけの「直送」が増えており、
死者に対する疎遠、冷淡化、単なる死体処理行為としての
葬儀を営む遺族たちが出現しているのである。

死別の悲観が問題になるのは、死という事が死者だけに起こる出来事でなく、
生をそれぞれの形で共有した故に起きる事であり、
「生の共有」が無ければ、そこで発生する死は、
悲観の対象ではなく、義務としての死体処理だけとなり、
「弔い」が存在しなくなるのである。

葬儀や年忌法要は、遺族と深く関わりを持つための極めて重要な機会であり、
かつ遺族が深い悲嘆から立ち直る心の作業(グリーフワーク)を
サポートすることのできる機会でもある。

さらに、宗教者側にとっては、葬儀からいかに伝道に繋げていくかという、
伝道論的な課題として捉え治すことも可能でると考える。

今回取り上げた、神道式の葬儀である「神葬祭」が近年、
葬儀業界が抱えている諸問題を解決できる潜在能力は十分に
有していると言えると思うのでありますが、いかがでしょうか?



参考文献・資料
加藤隆久(著)『神葬祭大事典』出版:戎光祥出版
国学院大学日本文化研究所(編)『神葬祭資料集成』出版:ぺりかん社
藤井雅夫(著)『新版 神事の基礎知識』出版:講談社
芳賀登(著)『葬儀の歴史 増訂版』出版:雄山閣出版
圭室諦成(著)『葬式仏教』出版:大豊輪閣
五来重(著)『先祖供養と墓』出版:角川書店
滋野佐武朗(著)『日本人の霊魂観と国家神道』出版:文芸社
島田裕巳(著)『葬式は要らない』出版:幻冬社
一条真也(著)『葬式は必要!』出版:扶桑社
新谷尚紀(著)『お葬式 死と慰霊の日本史』出版:吉川弘文館
新谷尚紀/席沢まゆみ(編)『民俗小事典 死と葬送』出版:吉川弘文館
藤井正雄(著)『仏教民俗学大系4 祖先祭祀と葬墓』出版:名著出版
吉川美津子(著)『図解入門業界研究 最新葬儀業界の動向とカラクリがよ~くわかる本』出版:秀和システム
上田正昭(著)『死をみつめて生きる 日本人の自然観と死生観』出版:角川学芸出版
加地伸行(著)『沈黙の宗教―儒教』出版:筑摩書房
奥山晶子(著)『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』出版:文芸春秋
勝田至(編)『日本葬制史』出版:吉川弘文館
倉野 憲司・武田 祐吉(著)『古事記 祝詞(日本古典文学大系 新装版)』出版:岩波書店
坂本 太郎・井上 光貞・家永 三郎・大野 晋(著)『日本書紀 (日本古典文学大系 新装版 上・下』出版:岩波書店

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