「論」ブログヨシ樹

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書評 『未来のことは未来の私にまかせよう』

2021年08月07日 | 書評


生前の著者からのメッセージ


著者の享年は若干32歳である。まだこれから、という時に多くの人たちに惜しまれながら此岸(しがん)を発ち、永い旅に出てしまった。死因は胃がんであった。著者の名前は黒木奈々さん。職業はテレビのニュースキャスター。当該書籍の表紙に写っている写真を見ると長身で細身の美人である(掲載動画ご参照)。これから黒木奈々さんの闘病記である同書の感想を記していきたい。

わたしが同書に出合ったのは電子書籍リーダーを購入してからである。電子書籍一冊目が『未来のことは未来の私にまかせよう』(文藝春秋刊)だった。爾来(じらい)、辛いときや苦しいときに何回も何回も当該書籍に励まされ、慰められてきた。しかも繰り返し読んでも飽きが来ないのだ。わたしにとって同書はそういう息の長い不思議な書籍である。この本を読み進めると誰にでもすぐにわかることがある。それは著者の人柄の良さだ。当該書籍に出てくる彼女の友人の多さには感心する。

自分の容姿が美しい女性というのは、それを意識している。「あら、わたし、自分の美しさに全然、気づかなかったわ」という迂闊千万な女性は決していない。これは、わたしの苦い経験に照らしてみても明らかである。ところが黒木奈々さんはどうだ!彼女の文章を読むと自分が美人であることを知らないかのように生きている。あざといのではない。そういう人柄なのだ。さような女性には滅多にお目にかかれない。生前、多くの友人に恵まれていたゆえんである。

件の本は「それは突然やってきた」という章名から始まる。第一章が、さような章名なのである。ところは、フランスのワインバーで。ときは、夏の夜の気のおけない友人たちとの会食時。著者は《突然胃に激痛が走った。》と書いている。著者は記す。《私は思わずお腹を押さえて椅子にうずくまった。まるで内臓を直接握りつぶされるような強烈な痛みが襲ってきたのだ。》と。

彼女は堪らずトイレに駆け込む。そして、そこで痛みを堪えていたが気を失う。著者は記す。《私の意識はしばらく戻らなかった。何分経ったのだろうか?なかなか席に戻らない私を心配したななせちゃんが、お手洗いに来て、倒れている私を発見した。「奈々ちゃん、奈々ちゃん!」彼女が体をゆすってくれて、やっと私は意識を取り戻した。》と。

やがて店に救急車が呼ばれて奈々さんは病院へ搬送される。友人であるななせちゃんが、すぐに救急車を手配したのだ。そのうえ手際よく著者のケータイから各方面に著者が倒れたことを連絡したのだ。著者は後にこのことを振り返って本の中でも感謝の意を表している。著者は書く。《今考えると、あの時彼女が救急車を呼んでくれて本当に助かった。もし一人で家に帰っていたら、どうなっていたか。ななせちゃんには感謝してもしきれない。》と。

さらに著者は書く。《私は生まれてから三十一年間、病気らしい病気をしたことがない。救急車に乗ったのも人生初の経験だった。》と。そうなのだ。我々はいつ病気に罹るか知らないのである。人間は自分の髪の毛さえ白くも黒くもできないのだ。昨日まで健康そのものだった人があくる日には死の淵を彷徨うことだってあるのだ。

屈強な偉丈夫でも神がいったん御許(みもと)に召す、と決定されたら抗うことはできないのである。人間の命は神の主権に属する。それゆえ偉丈夫だろうが、黒木奈々さんのような気立ての良い美人だろうが、若くして死ぬ、ということは十分あり得る。わたしが思うに人は神のご臨在を思って、もっと謙虚に生きなければならない。

このフランスのワインバーでの出来事を皮切りに黒木奈々さんの闘病生活は始まる。このとき、著者はNHKの『国際報道2014』のメインキャスターに抜擢されたばかりだった。著者は当該書籍で《フジテレビにいらした小島奈津子さんのようなアナウンサーになりたいと憧れて、それから七年間フリーアナウンサーとして頑張ってきた。そして、やっとつかんだチャンスがこの番組だった。》と記している。

彼女にとっては、まさに青天の霹靂(へきれき)だったに違いあるまい。黒木さんは、この仕事に懸けていたし、この仕事にやりがいも感じていた、と自分自身で記している。読者諸賢のなかに今の仕事に懸けているし、やりがいも感じている、という方は、いかほどいっらしゃるだろうか。もし自分の仕事に命を懸けていてしかもやりがいも感じているなら、それは十分に喜ぶべきことであるし、感謝すべきことだ。生活のため嫌々、働いている人々も少なくないのだから。

いわゆるネタバレになるので、あえて同書の内容については、この辺りで触れるのをやめたいと思う。この先は読者諸賢が当該書籍を実際に読んでみることをお勧めする。残念至極ではあるが著者は31歳で胃がんに罹り、32歳で、その生涯の幕を閉じている。当該書籍のサブタイトルは「31歳で胃がんになったニュースキャスター」である。

件の書籍は電子書籍として購入して電子書籍リーダーで読むといいかと思う。自分の経験に鑑みても電子書籍リーダーで読むと読書が捗ることを請け合える。アマゾンのキンドルのサイトで件のタイトルを是非、検索してほしい。ヒットするはずである。なお、当該書籍の感想をもう少し詳しく書いてほしい、という読者からの要望があれば承りたい、と考えている。リクエストがあればコメント欄にその旨を書いてほしい。

末筆になるが読者諸賢よ、この酷暑を無事に乗り越えるべく、くれぐれもご自愛ください。読み手にとって、この記事が暑さ厳しいこの時季に一服の清涼剤のように感じられるなら書き手にとって、これにまさる喜びはありません。


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2 コメント

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Unknown (ぷりん)
2022-09-25 15:37:36
初めて投稿します。
さっそく、kindleでダウンロードしてみました。

非常に引き込まれる紹介文で、気づいたらスマホでクリックして注文してしまいました。素晴らしい書評だと思います。

人柄の良さは文章にも反映する。そう思った日でした。

読んでみよう。自分だっていつ寿命がくるのかわからない。そのとき、尽きる命に悲観するのか、それとも歩いてきた人生に満足して、笑って天に昇れるのか、今はまだわかりません。ですが、筆者のように生きたいと思います。

本の紹介、ありがとうございました。
コメントありがとう! (管理人)
2022-10-03 04:41:31
ぷりんさん、ご返事が遅くなり誠に申し訳ありません。現在、本業の他に副業をしていまして準備が大変なのです。副業は家庭教師です。今はプロ家庭教師として週に二回、授業をしています。ただし、その準備で結構、手間暇かかっています。家庭教師は時間単価で考えたら決して割のいい仕事ではありません。家庭教師で儲けようなどと考えている方には儲からないよ、と忠告したいですね。

閑話休題。ぷりんさんは早速、わたしが、ご紹介した書籍を電子書籍で購入された、とのことで嬉しかったです。書評を書く目的は読者にご紹介した本を実際に入手してもらって読んでもらうことに他なりません。思うに、ご紹介したのに読んでもらえなかったとしたら、わたしの書いた書評は失敗だった、ということになります。

お忙しいとは思いますが当該書籍を読了したら、またその感想を投稿していただけないでしょうか。あるいは本ブログの他のジャンルの記事で興味を覚えた記事がありましたらコメントを頂戴できると嬉しい限りです。わたしもぷりんさんの執筆している作品にさらにコメントをする予定でいます。

これから仕事に行きます。今日は少し早く目が覚めてしましました。しかしながら、こうしてぷりんさんのコメントに返事を記すことができたので早起きも悪いものではありませんね。それではここら辺で擱筆いたします。

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