ttの書評

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書評D

2018-11-06 09:20:39 | 課題書評
書評D
大和田敢太〔2018〕『職場のハラスメント』 中公新書

A本書で得た新たな知見とそれに対するコメント
1.電通自殺事件において過重な残業のほかにも上司からの暴言があったこと(p.20)
→この事件は働き方を考える書籍において触れる機会が多いが、この事実を知って改めてハラスメントの陰惨さを感じた。

2.業務の適正を超えた指導(ハラスメント)が禁止されていることは裏を返せば超えない範囲での指導を認められていることになる。(p.40)
→厚生労働省が定義しているハラスメントの概念では不十分だと感じた。ただ指導をしなければ技術の上達は見込めず、他方面からのハラスメントには対処しきれないことから非常に難しい部分であることも念頭に置かなければならないと思った。

3.消費者側からの外部的ハラスメントへの対策(pp.79-80)
→従業員が個別に対応してしまうと対応に差異が発生するため、その企業全体のマイナスイメージを与えることに繋がることも考えられる。これを避けるためにも企業は労働者を守りより良い対応を可能にするためにもクレームや迷惑行為へのガイドラインを作ることが良いと思った。

4.履歴書匿名化の試み(p.180)
→確かに履歴書を参考にすることで個人の能力を大まかに知ることの助けになることは間違いないだろうと思う。しかし、今の日本において新入社員が長続きする保証はなく、インターネットを通じた就職活動が主要なため、差別を生みやすい出身や出身大学の項目は企業によってはなくなっていくと感じた。また、能力に関してはインターンや研修を充実させることで実際に目で判断する必要があると思う。

5.ハラスメント加害者への対応(p.208-209)
 →単に加害者を処罰してしまうと加害者は何が相手へのハラスメントに抵触したのかわからず別の場所でもハラスメントを起こしてしまうと感じた。そして加害者も苦しむことになる。この防止のためにも企業は加害者にもカウンセリングや原因に応じた指導をすることが重要であり、尚且つ加害者側の思考や理由を知ることは貴重で企業側の再発防止策に役立つと考えているため実践してみる価値はあるのではないかと思っている。

B感想・批評
平成が終わりを迎えつつあるなか、この何十年間で女性の社会進出が進み社会の職場は大きく変化した。しかしそれと同時に今まで影にかくれていたハラスメント問題が表面化していった。もちろん男性から女性へのハラスメントのみということではなく今やハラスメントの種類は多様を極めている。
 本書でも述べられているように、原因はまず加害者であることは確かだが、基本的なハラスメントは「職場で起こるトラブル」であるため、原因の一端は発生を許してしまった職場そして企業にあるということだ。そのため企業は職場を定期的に監視し、問題が見受けられるようであれば早急に労働者の配置を変えるなどの行動が今後はより求められると感じた。
 ハラスメントは近年新しくできた問題ではない。以前から多くの人々が体験してきたことがようやく問題に取り上げられるようになったのだ。報道されるものは莫大な母数の一部分であり今も苦しんでいる人達がいるのは明らかである。そういった人達やこれから新しく社会に進む人のためにも企業は慢性的な経営課題と捉えて解消に当たるべきだ。
 本書ではハラスメント問題は日本だけでなく世界中の国が取り組んでいるかだいであることがわかり、他国と比較すると日本は何段階も遅れていると感じた。自分は加害者がハラスメントを起こす原因には加害者自身がハラスメントを起こしていることを自覚していないことが多きいと感じている。そのため人口の少ない日本では被害者のケアはもちろんだがいかに加害者に再発防止をさせつつ職場に戻すかが必要だと考えている。

書評C

2018-11-05 20:51:40 | 課題書評
書評C
選んだ本:細川義洋〔2018〕『ある日突然AIがあなたの会社に』 マイナビ新書

A本書で新たに得た知見とそれに対するコメント
1.「例えば英語で『Come On』と言った場合、普通は『こちらに来なさい』という意味ですが、状況によっては『いいかげんにしてくれ』とか『やめてくれ』という意味合いになったりします。しかし、そういったニュアンスをくみ取ることができない辞書どおりにしか判断できなかったのです。それがシチュエーションによる意味合いをAIが学習することによって、今では自律的に判断できるようになってきました。」(pp.22-23)
⇒今までAIは言葉の裏に隠れている人間独特の意味をAIが感じ取れることはないと思っていたが、このことを知って何万通りのコミュニケーションを通していくことでAIにも言葉の裏の感情を判断できると知って、将来的には疑似的な感情も学習して得るのではないかと思った。

2.「世の中には何か思っていることがあっても、わざわざアンケートに答えない人や、潜在的に思ったことがあっても、それ自体に気づかない人もいます。」(p.61)
⇒アンケートで導ける情報は基本的に積極的な人の層から構成されていて、膨大な情報量から素早く埋没している意見を見つけられるのはAIに向いていることがわかった。

3.「どうしても単純作業をせざるを得ない人たちをどうするのかというのは、重大な問題として残っていきます。」(p.86)
⇒AIが進歩していくうえで避けては通れないAIに仕事を奪われるという話題だが、明確な答えは今出ることはないと感じた。しかし、本書で紹介されているAIに仕事は任せて人間はクリエイティビティを活かしたボランティアへの従事など対立ではなく共生の関係を築けるようなアイデアもあるため今はAIの認識を固めるのではなく議論をするタイミングだと感じた。

4.「市民は今の『AIによる問い合わせ対応』の実力に大いに満足しているわけではなのですが、今後はもっと良くなるだろうという期待をしているということです。」(p.97)
⇒神奈川県川崎市で行われた実証実験の結果、知りたい情報の半分ほど入手できて実験の継続を希望している意見が多くなりました。他にも「AIだけのやり取りで完結するのは怖い」のなどの意見もあるが、私達もAIが進歩すれば生活にメリットが生まれると理解して期待を寄せているため、今後はどうやってAIで行われる作業への不信感や怖さを取り除けるかということも大事だと感じた。

5.「今後AIが人間を超えてしまい、その発達の予測すらつかなくなるシンギュラリティの時代がやってくると言われています。」
  「そんな時代にあって大切なことは、人間には人間としての魅力がたくさんあると信じ、それを見つけて伸ばしていくことではないかと考えています。」(p.171)
⇒本書ではAIやロボットの優位な点を取り上げているため相対的に人間がこれらより優れている点はないように感じるかもしれないが、会話の中での即興によって会話が突如弾むことで当初予想していた成果以上の結果が得られるなど過去の事例から参照するAIやロボットには再現が難しいシーンがある限り人はAIに取って代わられることはないと感じた。

〈感想・批評〉
本書はタイトルの通り現在実用化もされているAIの多様な使用方法や性能を紹介したうえで今後多くの職場にAIが本格的に導入された時、従業員はどうなるのかということが書かれている。結論として恩恵は受けるが従業員が必要なくなることは起こりにくいと感じた。今まで時間が割かれていた作業をAIが自動で行ってくれるようになったり、AIが職場や工場全体を管理することで未然に異常を防いだり効率が良くなると考えられる。そしてAIが効率よく働くためにも判断材料になる情報を最初に与えるのは人間でありの役目であり、それを基にAIは学習していく。後に人間が情報を与えなくても過去の事例から予測を立てられるようになっても定期的に過去だけでなく実際の現実の人間が得た情報と今までの情報とを擦り合わせて間違いや乖離が発生していないかの確認が必要であるため、従業員は必要であると考えている。効率よく利用することはもちろんAIに仕事が奪われることで人間の可能性の幅が広がることすらあると本書を読んで知った。仕事が減少することで以前から興味のあったことに挑戦・没頭する時間が生まれ、中立性を活用することで他人の意図が入りやすい役割を任せることで良い信頼関係を築けるかもしれない。
重要なことは議論だと考えている。一度に対立か共生かを決めるのではなく、より多くの人にAIについて興味をもってもらい意見を交換しあい想像の幅を広げる段階に今はあると思った。

書評B

2018-11-05 20:48:43 | 課題書評
書評B
山本寛〔2018〕『なぜ、御社は若手が辞めるのか』日本経済新聞出版社。

1.「年収500万円の社員だとしたら、年間で465万~1000万円の損失が企業にもたらされ  
  ているということになります。」(p.31)
 ⇒抜けた人員の穴埋めのための採用コスト、またその新人の教育コスト、抜けた人が持っ
  ていた能力を考えると想像より多くかかっていることがわかった。
2.「理由のどれか1つによって辞職を決意するということは珍しく、いろいろな理由が複合
  的に重なり合って『やめよう』という決断を下すことが多い」(p.55)
⇒何か今の仕事に一つ不満があっても、給与面や仕事の魅力などで相殺できていること
  が多い。このため複数の不満が予想される場合、すべてに手を出すのではなく、優先
  順位を決め、1つずつ改善していくことが有効だと考えた。
3.「『業績は必ずしも高くないけれども、部署内のコミュニケーションの中心となり雰囲気
  を和らげる、皆をやる気にさせるような社員』もリテンションの対象となり得ます₁」(p.110)。₁…リテンション(引き留め)
 ⇒ムードメーカーが会社にとって有益な影響をもたらしていることを意味しており、  このような人材を見出すには職場の現状をしっかりと把握していることが重要だと感じた。
4.「『ベテラン層は充実しているんですけど、そこが抜けたあとの次の世代、30代・40代
  の中堅社員がやや薄い。やっと育ってきた層が抜けてきているので、そこを守っていく
  必要がある。』」(p.114)
⇒より多くの理由で退職者が増えている現代では、若年層だけでなく様々な年代へのフォローが必要だと感じた。また、中堅への待遇を整えることで若年層の将来への不安を
  和らげ、勤続しやすくなると思った。
5.「退職理由の聞き取り、転職先の紹介など退職時に企業がどんなフォローをするかも重要
  なポイントです。(p.185)⇒これからのリテンションの参考や、きめ細かい対応が企業の口コミや社内に知られることで、従業員に  良い影響をもたらすと感じた。
6.「働きがいとは、『働いた結果に意味が見出せること』で、働いている時間だけ、に感じるものではありません」(pp.214~216)
 ⇒今の日本では、残業時間を減らすように徹底されているが、仕事を続けるなかである程度の従業員に時間設定を委ねた残業時間とい  うものは必要ではないかと思った。

〈まとめ・感想〉
 本書はタイトル通り若手に焦点をあてているが、大部分は1つの退職が次々と他の従業員の退職を引き起こす「連鎖退職」から始まり、その対策法として挙げられているリテンションと退職の原因、そして企業は何をするべきかという内容になっている。本書はまだあまり知られていないリテンションという内容だが、中立の立場で書かれているため、リテンションについてよく知らない者でもリテンションが効果的に働く場合、働かない場合がわかるようになっていると感じた。
 この本を読むまで、自分の中で退職とは働いているなかで最後に訪れる出来事だと思っていたが、読み終わった後、退職は決して悲しいものだけではなくもっと良い環境をもとめるために必要な行為でもあると知った。そしてその退職の中で引き留めが可能である退職がリテンションの対象だとわかった。退職して新しい職場についた人、今現在退職しようか悩んでいる人、そして会社を辞める人が少なくなるように行動する立場の上司の人といった様々なコメントからリテンション・マネジメントが分析されていることから、人手不足でありながら、常にノルマ達成や優秀な人材が求められている日本で、労働側には退職をポジティブな行動であると広く理解してもらうこと、企業側には、どの方面に力を注ぐことで会社員が辞めるのを躊躇うような良好な企業になるのか、競合企業と差別化し人材を確保できるのかという課題に役立つ本であると考えている。



書評A

2018-11-05 20:45:12 | 課題書評
書評A
川人博[1998]『過労自殺』岩波書店

1.「〔念書〕と題する書面を渡し、この通りに書いて会社に提出するように求めた」(p.9)
⇒自殺の責任問題で会社と争うということはよく聞くが、念書を書かせるよう求めてくること自体が自殺の原因に会社が関係していると言うようなものだと感じた。
2.「5月にはそのうちの一人が退職し、9月にはもう一人が他の部署へ配置転換となり、経験のある従業員は公治さん一人となっていた」(pp.29~30)
⇒自殺した人のなかには人間関係が原因のものも多く、この例はさらに業務の軽減がなかったことが大きな引き金となっている。
3.「六人は誰も精神科の治療を受けていなかったが、いずれの場合も、自殺後の調査の結果、被災者はうつ病に罹患していたと推察できる」(pp.59~60)
⇒精神科に通うということにマイナスのイメージが根強く日本の社会上にあることが自殺を助長してしまっているのではないか?
4.「そもそも労基省に遺族が労災を申請する件数がごくわずかなこと」(p.106)
⇒原因として企業が労災申請に対して非協力的な事が挙げられているが、すでに起こっていしまったことに対して真摯に取り組み、再発防止に活かすことが信用を取り戻し、自殺してしまった被災者とその遺族への唯一の方法ではないのかと感じた。
5.「就職前の予備知識、心の準備が、青年労働者の過労自殺を予防するうえで大切なのである」(pp.197)⇒受け身になるだけでなくインターンなどを活用して企業を自ら知ろうとする行動が就職において必要な一つにこの20年でなりつつある。
〈まとめ・感想〉                                                                          
本書が発行されてから今年で20年経つが、未だに仕事上でのトラブルによる自殺者が後を絶たないということが現実である。本の中では過労が原因と考えられている自殺者の数日前からの行動・言動といったものから、わずかな昼休みの間に自殺をしてしまった事例などが遺族の言葉も含めて生々しく痛烈に書かれている。
特に、数々の事例の中多くに共通している点として、自殺する前の段階に精神又は身体のどちらか、またはその両方が疲弊していたことが紹介され、そしてこの疲弊から発病するうつ病こそが過労自殺の原因であると筆者は書き綴っている。
筆者は経済のグローバル化が進んだことによる経済競争の激化とうつ病を診断する上でかかせない精神科への理解の低さが過労自殺を招く一因だとして扱っている。私もグローバル化が過労自殺の原因の一つであると思っているが、グローバル化が進むからこそ過労自殺の防止を防ぐ選択肢を増やしていると考えている。精神科やカウンセリングへの偏見は日本に依然と比べると減ったものの未だ残っている。一方海外では精神治療やカウンセリングへの理解はすすんでいる。さらにグローバル化はこれからも広がっていくだろう。しかしグローバル化には世界との壁を無くし、ヒトや情報の出入りが容易になる利点も存在しているのだ。この点を活かして精神科への理解を深め、海外企業の取り入れている働き方を日本企業が挑戦していくことこそが今の日本に必要なことだと考えている。