118 本牧③

『こ、これは！』

真ん中にリングもある。

観客も低所得者じゃない。

けっこう金持ってそうだ。

着飾ったオバサンもいる。

「村田、頑張ってな」

「おい、本格的じゃねえか」

「だろ、ここら辺はこういうの好きなんだよ」

けっこう歴史古くて安定？したギャンブルとして定着しているそうだ。

もしかしたら21世紀になった現在でも続いているかもしれない。

まったく斎藤のネットワークはどうなってるんだ(笑)。

さっきまでは緊張だけだったがだんだん気合が入ってきた。

『しかし　イワノフ・ロゴスキーが出てきたらどうするんだ？』

当時空手バカ一代は芦原英幸編に突入していたが

つのだじろう編クライマックスを思い出した。

控えでシャドウをやって身体を仕上げていた。

さていよいよ時間だ。

覚悟を決めた。

117 本牧②

「内海です。よろしく」

おっかなそうなロマンスグレーのオッサンだ。

多分本業だ。

『ヤバいか』　少しビビった。

「斎藤さん。大丈夫なんですか。情けないファイトしたら金出すどころじゃないですよ」

内海さんから見れば俺なんぞ子供だ。

しかしここで下がれない。

「これでも極真会館　真樹日佐夫三段の弟子です」

突っ張ってしまった。

「おお、大山先生の。見たところお若いので失礼しました」

黒塗外車に乗るのは初めてだ。

スカイビルから桜木町　横浜球場を越えマリンタワーが見えてきた。

山下公園から先へ行った事がない。


のちにベイサイドクラブができたり

近藤が結婚式二次会を上げた頃は

多少雰囲気が変わったが

当時は凄い所だった。


本牧倉庫街　はじめて入った。

116 本牧①

だいぶ吹っ切れていた。


久しぶりの斎藤から連絡

正直あまり会いたくなかった。



順子にも及川にも会わないのなら金は別に要らない。


「やってほしいバイトがあるんだ」


「もういいよ。もう遊ぶ気ないし」


「村田じゃないと無理。というよりケジメだよ」


『お前にケジメ云々言われたくない(笑)』


「ボクシングの試合だ」


「えっ？」


「負けても4000円。勝ったら一万以上出すよ」


「俺、プロじゃないよ」


「黒川の仇だよ」


「えっ？」


『黒川か、懐かしい』


話を聞いて初めてあの時の真相を知った。

　もともとプロを目指しながらも

金もいるので博ゴロもやっていたのだ。

なるほどそれで斎藤と顔見知りか。


「あいつ負けちゃってさ。なんか女におぼれて今は(ボクシング)やってないみたいだ」

お決まり転落か。

横須賀から千葉に引越したようだ。


「で　黒川に勝った奴とやってみないか？」


「面白いな」


「よし決定。決まったら迎えに行くよ」


金沢八景での感じを予想していたが


実は大変な事を承諾してしまったのだ。

115 転回

洋子ちゃんから連絡があった。

ここでは書けない内容が原因だが　しばらく会えなくなっていた。

「連絡できなくてゴメン」

膝の故障で運動は休止しているとの事。

「知りたいでしょ。ジュンの連絡先」

「も、もちろん」

決まったら教えてくれると言ってくれてたがホッとした。

「頑張ってね」

その後 洋子ちゃんは結婚して

かなり近くにいるのだが会う事はなかった。

今でも大変感謝している。

　続く時は連チャンで続くものだ

斎藤から連絡があった。

ひさびさに

まさしくとんでもないバイトを持ってきた。

114 及川の真意

「そりゃ良かった。おめでとう」

どこからだか(興信所だろう)問い合わせがあったら答えてほしいということだ。

その数日後電話があったが　

お世話になった真面目な先輩(笑)だと答えておいた。

帰り際に

「順子さんとは何もなかったんだって」

「はい」

「私はぶん殴ったのに？」

「ごめんなさい」

「仕返ししていい？」

「どうぞ」

殴られるかと思ったらキスしてくれた。

「順子さんのこと好き？」

「・・・」

「はっきり言いな」

「好きです」

「本人にはっきり言うんだよ」

「はい」

たじたじだった。

「今のは及川からの伝言だよ」

「えっ？」

なんと捕まったらしい。斎藤がらみだろう。

「最初は(本命は)順子さんだったけどなかなか落ちなくて 私になっちゃたじゃない」

「だから村田の事応援してあげたのに。心配してたよ」

そうか　薄々は気がついてたが悪い事をした。

及川に会うのはこの3年後だが元気にアパレル関係の仕事をしていた。

合ってると思う。

その後二人がどうなったか知らんが上手くやっている事を祈る次第。