「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

僕がサイクリストになった、いくつかの理由(40)

2012年10月01日 | アホな自分
12月27日の夕方、鈴木タケルは、華厳寮の203号室に姿を現していた。

「あれ、パパ・・・こんな時間にパパが寮に戻ってくるなんて・・・最近じゃ、珍しいんじゃないか?」

と、比較的早く帰宅していたガオが、タケルの姿を見て、驚いている。

「ほんと・・・パパはこのところ、午前様が基本じゃなかったっけ?僕らが寝た後に帰ってくるパターン・・・」

と、イズミも驚いている。

「まあ、そうなんだけど・・・ちょっと理由を上司に話して・・・明日、休みをもらったんだ・・・今日も少し早く返してくれてね・・・」

と、タケルは少し疲れた様子で、そう話す。

「明日、なにか、あるの?」

と、イズミが聞く。

「明日、アイリの両親のところへ、会いにいくことになったんだ・・・。とにかく、結婚への環境をそろそろ整えないといけないからさ・・・」

と、タケルは話す。

「お、結婚への秒読み状態に入ったってわけか・・・アイリさん、よろこんでいるだろ?」

と、ガオが反応。

「へー・・・もう、ラストスパートに入ったのか・・・パパは手堅いからなー・・・でも、今年はイブも仕事だったんだよね?」

と、イズミが反応する。

「ああ・・・11月にちょっと休みがとれたくらいで、それから、ほとんど休みを貰えなかったから・・・まあ、今日は少しおまえらと飲んでゆっくり休もうと思ってさ・・・」

と、部屋着に早速着替えるタケル。

「そういうことなら、飲もう飲もう・・・3人で一緒に飲めるのも、あと何回あるか・・・わからんからな」

と、ガオがすぐに乗る。

「そうだな・・・パパは結婚で早く出ていきそうだし・・・ガオも4月には、この寮を、出るつもりらしいし・・・」

と、イズミ。

「え、そうなの、ガオ・・・」

と、タケル。

「ああ・・・どうせ4月で、寮の構成も変わるっていうから・・・アパートでも借りて一人暮らししようかと思って・・・俺も、パパみたいに、忙しくなる予定なんだ」

と、ガオ。

「一人暮らしなら、仕事で遅くなっても、気を使わずに済むし・・・ルームメイトに、気も使わせなくて済むだろ」

と、ガオはガオなりに考えたよう。

「ま、その話も含めて、久しぶりに飲もう」

と、ガオはイズミとタケルと酒の肴の調達に・・・。


「乾杯」「かんぱーい」「かんぱーい」

と、久しぶりの3人の酒宴は、いつものように始まるのだった。

「で、さー。アイリさんの実家って、どこにあるんだ?」

と、イカくんを食いながらガオが聞く。

「都内だよ。世田谷の方だってさ。大井町線の上野毛って駅が最寄りだって。自由が丘とか、あっちの方らしい」

と、タケルはホットドックを食べながら、缶ビールを飲む。

「へー、でも、近くてよかったじゃん・・・関西とか、九州みたいな遠方じゃなくて」

と、イズミも素直に感想を述べる。

「うん、それはね・・・しかし、おとうさんは弁護士さんなんだ、そうだ・・・まあ、とにかく、当たって砕けろだな。明日は」

と、タケルはもう腹をくくっている。

「へえー・・・まあ、アイリさんを見ていると、生まれのよさを感じる、利発さを感じさせるからな・・・そうか、おとうさんは弁護士か・・・」

と、人の中身を見抜く天才のガオも納得している。

「うん、そうだね・・・ファッションのセンスもいいし・・・大人のシックさがあるひとだよな、アイリさんは・・・」

と、イズミはイズミなりに感想を述べている。

「で、パパは、明日はどこまでいくつもりなんだ?もう一気に「お嬢さんを僕にください!」ってところまで、考えてるの?」

と、ガオは一番大事な所を正面から聞く。

「いや、まずは、地ならしからだな。相手と接触してみて、自分がどう見られるか・・・その場をいい雰囲気に出来るか・・・それを見極める。俺はそれ、得意だし」

と、タケルは笑う。

「確かに・・・パパは場の雰囲気を盛り上げるのは、得意中の得意だからねー」

と、イズミは納得気味。

「そうだな・・・まあ、パパは基本素直でいい子だからな・・・そりゃあ、普通の大人だったら、パパのそういういい面を評価するし、楽しく感じるだろう」

と、ガオはそう反応。

「それにパパは、今は朝トレのおかげで、少年系だからねー・・・体型もシュッとしたし、顔だって少年系・・・アイリさんの両親・・・特におかあさんにヒットするんじゃない?」

と、イズミはそう言う。

「りっちゃんに感謝しなきゃな・・・リッちゃんのおかげで、朝トレするようになったんだから・・・10キロくらい落ちたからな・・・体重」

と、割れた腹筋を皆に見せるタケル。

「そういうりっちゃんは、太鼓腹が余計ひどくなってた・・・この間、ちょっとの間、鎌倉に復帰してたけど、また、長期出張中」

と、イズミが、りっちゃん情報をくれる。

「まあ、でも、いつかガオが言ってたけど、体重が落ちてみると、自転車っていうスポーツも案外自分に合っているような気がするよ」

と、タケルは言う。

「「自分に合うスポーツくらい、探しておけ」って、あの時、ガオ言ったよな」

と、タケルは言う。

「ああ・・・あれは、パパがエイコちゃんと最後に別れた時の飲み会で、言ったんじゃなかったかな?」

と、ガオは記憶を思い出しながら、言う。

「俺が「スポーツは嫌いだ」って、言ったら、「テニスが出来なかったのは、体重が重すぎただけ」って、ガオはあの時言ってた・・・」

と、タケルは言う。

「体重が落ちてみたら、俺、自転車ってスポーツが性に合っているような気がしたよ・・・ま、朝トレには、そして、この湘南でスポーツするなら、自転車かなって、ね」

と、タケルは言う。

「まあ、サーファーの俺から言わせると、ひとつのスポーツを愛することが出来たら・・・他のスポーツも愛せるようになる・・・これは本当さ」

と、ガオが言う。

「柔道を愛せたから、サーフィンも愛せるって、そういうこと?」

と、イズミ。

「そうだ。柔道とサーフィンなんて、水と油、白と黒みたいに正反対に思えるだろうけど、どっこいスポーツという面では、根っこは同じでさ」

と、ガオ。

「目標があって、それに合わせて身体を鍛え、いつしか、掲げた目標を乗り越えていく・・・それがスポーツだ。スポーツの精神だからな」

と、ガオ。

「自分を成長させることの出来る行為、それがスポーツだからな・・・そういう意味じゃ、スポーツの精神を知ったパパは、これから、強くなれるよ」

と、缶ビールを飲んで、真っ赤になるガオ。

「自転車が俺にとって、そういう存在になるのかな・・・」

と、タケルは真っ赤になりながら、考えている。

「いずれにしろ、スポーツの力が、これからのパパを変えていくよ」

と、ガオは明るい笑顔で話すのだった。


ガオは飲み会の途中で気持ちよく寝てしまった。


「ガオ、酒に弱くなったな・・・年齢のせいか?そんなにガオ年取ってないだろ」

と、僕が言うと、

「ガオ、今大変なんだよ・・・研究所でも、最近、いい研究成果が出せてないみたいだし・・・藍ちゃんとも、最近は、うまくいってないみたいだ」

と、イズミ。

「そうだったのか・・・ガオはいつも、すべてがうまくいっているように思えてたけどな・・・」

と、タケルが言うと、

「まあ、研究成果の方は、まだ、見込みがあるらしいけど・・・「時間の問題だ」と笑っていたから・・・でも、藍ちゃんの方は、ちょっとまずいみたいだ」

と、イズミ。

「どんな風にまずいわけ?」

と、タケルが聞くと、

「まあ、簡単に言うと、藍ちゃんが平凡な女性だっていうことだろうな。ガオの豪快さに付いてこれないみたいなんだよ。やさしいガオはそれでも合わせてやってるみたいだけど」

と、イズミ。

「恋愛ってのは、どちらかが、気を使い始めたら・・・終わりの始まりだからな・・・」

と、イズミ。

「ふうん、そういうもんかな・・・」

と、タケル。

「アイリと俺の間ではさ、俺がまだまだ、ガキだってことは、お互い理解している事項なんだ。だから、俺は早急に大人にならなくちゃならない」

と、タケルは話す。

「でも、大人になるなんてことは、そう簡単にいかないじゃん。だから、アイリは待ってくれている状態だし・・・それは気を使っていることじゃないのかな?」

と、タケルはイズミにぶつけてみる。

「厳密に言うと、両者はまったく違うね」

と、イズミ。

「ガオのところは、ガオは口にはしないけど、今のままの藍ちゃんだと、いずれ、別れることになることをガオが理解しているってところだ。そこが大きく違う」

と、イズミ。

「ガオは、それがわかっているから、口にしないし、気を使って、藍ちゃんに合わせてやっている。だけど、ガオは実はそれが本心では、不満なんだよ」

と、イズミ。

「つまり、ガオは別れたくないから、気を使っているんだけど、藍ちゃんは、それにすら、気がついていない・・・いずれガオの不満が爆発したところで、二人は別れるだろうな」

と、イズミ。

「パパとアイリさんのケースでは、お互いが問題点の意識を共有している。ここが全く違うだろ。だから、パパは努力するし、その努力をアイリさんはありがたく感じる」

と、イズミ。

「つまり、関係性が進化するし、強化されるのが、パパとアイリさんのケースなわけだ。だから、うまく行く」

と、イズミ、

「一方で、ガオと藍ちゃんのケースでは、ガオに不満が溜まるばかりなんだよ。カップルが、ドンドン壊れていく方向性だ・・・この違いは決定的だよ」

と、イズミ。

「だから、ガオと藍ちゃんのケースでは、藍ちゃんがガオの不満に気づき、自分を直すことが出来たら・・・でも、無理だ、それは」

と、イズミは匙を投げる。

「そもそもガオが納得して結婚まで行くおんなは、ガオと同等かそれ以上に豪快なおんなだけ・・・ガオは豪快に生きようとしているんだから、それをサポート出来るおんなでないとね」

と、イズミは辛辣に男と女の関係を見ている。

「あるいは、ガオを子供として扱える大人の女、そうして、徹底的にガオに尽くすおんなか、そのどちらかのパターンのみ、ガオは結婚に向かう・・・その話はガオにしたんだけどな」

と、イズミは言う。

「ふ・・・ガオにだって、プライドというモノがあるんだろう・・・イズミの言うとおりばかり、動くのも、しゃくってこともあるんだろ」

と、タケルが言うと、

「プライドなんて、くだらない・・・要はおんなと楽しい時間を過ごせばいいってことなのに・・・」

と、イズミは言いながら、マグカップで、白ワインを飲む。

「で、イズミはどうなんだ?今、彼女関係は?」

と、タケルは聞く。

「前のおんなとは、別れた・・・子供が欲しいとか、結婚したいとか、言い出したから、関係性は切った・・・俺はまだ、そういうものは求めていないから」

と、イズミは少し赤くなりながら、言う。

「イズミは、子供嫌いだったな・・・で、その後、どうなんだよ。おんなと別れて・・・」

と、タケルが聞くと、

「この間、合コンがあってさ・・・コンパニオンをやってたって言う、おんなと出来た・・・」

と、しれっと言うイズミ。

「あれ?前のおんなも、コンパニオンやってたんじゃなかったっけ?」

と、タケルが言うと、

「ああ。俺は、そういうクオリティの高い女じゃないと、つきあえないの」

と、しれっと言うイズミ。

「ふ・・・なんだか、皆いろいろ、なんだな・・・」

と、ため息をつきながら、言うタケル。


「まあ、この203号室で、最初の結婚者になるのは、パパ確定だからさ・・・明日もうまくやりなよ・・・パパなら、うまくやれるよ」

と、イズミは常になく、やさしく言う。

「ああ、ありがとう・・・腹をくくって、がんばってみるよ」

と、タケル。

「ガオもさ・・・きっと嬉しかったんだと、思うよ。パパと会えなくて、ガオ最近、寂しそうだったもん」

と、イズミ。

「だから、今日は、気持ちよく酔っ払って、寝ちゃったんだと思う。きっと今はいい夢を見てる。最近、あまりいいこと、無かったみたいだから、ガオ」

と、イズミ。

「ふ、俺も今日、ここに早く帰ってこれて、よかったと思うよ」

と、タケル。

「男は、友情だな」

と、タケル。

「ああ、友情だ」

と、イズミ。

ガオは、気持ちよさそうに、眠っていた。


つづく

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