「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

「ラブ・クリスマス」(ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!)(3)

2013年11月26日 | 過去の物語

クリスマスイブ7日前の土曜日の夕方午後4時頃。

ガオのミニは、鎌倉山にあった。

鎌倉山のローストビーフは少し値が張るが、それだけ美味しい逸品だった。

ガオはそれを買い求め・・・帰りに北鎌倉の高級スーパーに立ち寄ると、イタリアの青カビ・チーズやら、バケットや、エクストラヴァージンオリーブオイルやらを、

買い求め・・・晩酌の支度をすべて済ませて、自分のアパートに戻った。

バケットを切り、ローストビーフやチーズやらを載せ、オリーブオイルで味付けすると、至福の時間がやってきた。

途中で買い求めた赤ワインを煽ると、気分は陶然となり、快感が身体を駆け抜ける。


しかし、頭の中にある、リサのイメージだけは、変わらなかった。


「酔ってくれば、少しは忘れることが出来るだろう」

ガオはそう信じ、ローストビーフを頬張り、チーズを頬張り、野菜サラダを頬張った。それを赤ワインでどれだけ流しこんでも、

いや、酔えば酔うほど、身体は彼女を求めた・・・。

頭の中は、彼女の映像で一杯になっていった。

「いかん・・・俺は病気だ。彼女には、旦那がいるんだ・・・それなのに、なんだ、この思いは・・・」

ガオは混乱した。

「こんな時、あいつにこの思いを話したら、何て言うだろう?・・・パパなら、わかってくれるだろうか・・・」

と、ガオは思った。

ガオは、すぐに携帯を取り出し、懐かしい華厳寮203号室に電話した。

でも、誰も出なかった。

「まあ、土曜日のこの時間じゃあ、二人共部屋にいないわな。当然だわな」

と、少し酔っているガオは、当然のことを思い出した。

「しかし、このままでは・・・」

ガオはさらに混乱しながら、それでも、なんとか、しようとしていた。


クリスマスイブ7日前の土曜日の午後5時。イズミは、先輩や後輩、現役生と一緒に、野島ゼミにいた。

皆、少し酒を控え、夜からの飲み会に備えていた。

夜の飲みは、野島ゼミ御用達の、ちゃんこ居酒屋「力皇」で決まりだった。

皆と楽しく話していたイズミは、「力皇」に移動と決まった直後、

田中美緒(22)に、

「君も飲み会いくよねー?」

と、さも当然のこと、という顔をして誘った。

しかし、

「ごめんなさい。今日はわたし、どうしても外せない用事があって・・・」

と、やわらかい笑顔を残しながら、彼女はゼミから立ち去った。

イズミは、その後姿を見ながら、心にポッカリと穴が空いていくのを感じていた。


クリスマスイブ7日前の土曜日の午後6時。アイリの部屋には、マキとアミがいつもの如くお酒を買って、デパ地下グルメを買って、来ていた。

「結局、こうなるのよねー、わたしたちー」

と、マキが白ワインを飲みながら、いつものように、話す。

「居心地が良すぎるのかなー。ここが」

と、アミも、白ワインを飲みながら、焼き鳥などを食べている。

「このつくね串絶品!」

と、マキも美味しそうに叫ぶ。

「だけどさー、アイリは、タケルくんがいるから、いいじゃない・・・問題は私たちよ・・・」

と、アミ。

「ねえ、この1年、誰かと寝た?わたし、たった一人よ・・・ちょっと人生的に、やばいかも・・・」

と、マキ。

「わたしは、3人・・・まあ、顔はイケメンだったけど、あっちの方がねー・・・」

と、辛辣な表情をするアミ。

「アミは、そっちに求めすぎなんじゃないの?」

と、マキ。

「そうかなあ・・・せめて、10分くらいは、楽しませて貰わないと、つまんなくない?」

と、アミ。

「やっと前戯が終わって、これからが本番、楽しもうって思ったら、一瞬で終わっちゃうんだもん・・・不満たらたら」

と、アミ。

「自分で上になって、コントロールしたら?そしたら、案外長く持続するかもよ」

と、マキ。

「それ、一番ダメ・・・本気出すと、それこそ、瞬殺・・・わたしが、激しすぎるのかなー」

と、アミ。

「アミは、可愛い顔して、そのくせ、激しいのを求めるから、男どもはびっくりしちゃうんじゃない?虫も殺せないような童顔だもん、アミは」

と、マキ。

「ね、なんで黙ってるの?アイリ」

と、アミ。

「ううん・・・わたしもタケルに求めすぎだったかなーって、思っちゃって・・・それで、少し自分のこと、考えてたの・・・」

と、アイリ。

「そうか・・・でも、相性って一生のことだし。でも、タケルくんは、不満じゃないんでしょう?アイリ的には」

と、アミ。

「まあね。がんばってくれるし、大きいし・・・身体の相性はバッチリだと思う」

と、アイリ。

「ふうーん・・・ま、よかったじゃない・・・それより、わたしとマキの方が問題よねー」

と、白ワインを飲むアミ。

「寂しさが、募るのよ・・・12月は特に寒いし・・・心が凍えるの・・・誰か暖めてくれないと、ほんとに凍えてしまう・・・」

と、マキは寂しそうに話すのだった。

白ワインを飲みながら・・・アミもアイリも、同じように寂しさを感じているのだった。


同じ頃・・・ワインをいくら飲んでも酔えないガオは、

「うーむ・・・とにかく、この混乱を鎮めるために・・・奥の手だ。アイリさんのところに、電話をかけさせて貰おう・・・緊急事態だ」

と、タケルがアイリのマンションにいるものと当たりをつけて、ガオは、アイリのマンションに、電話をかけることにした。

「えーと、電話番号は・・・これでよし・・・まだ、エッチする時間帯ではないからな。まあ、なんとか、いいだろう・・・」

と、ガオがアイリの家に電話すると・・・。

「はい。もしもし、東堂ですが・・・」

と、アイリが出てくる。

「あのー、アイリさんですか?僕、鈴木の同部屋だった、ガオです。お久しぶりです・・・あのー、鈴木がそっちに行ってたら、ちょっと話したいことがありましてー・・・」

「ちょっと緊急事態というか、鈴木の意見がどうしても今必要で・・・そのー、すぐに・・・なんですけど・・・」

と、ガオは一方的にまくしたててしまう。

「あら、ガオさん久しぶり・・・でも、ごめんなさい。鈴木は今ここにはいないのよ・・・鈴木はアメリカに出張中で、1月末まで帰らないの・・・」

と、申し訳なさそうに言うアイリ。

「え、そうなんですか?1月末まで、帰らない・・・え・・・俺どうすりゃあいいんだ・・・」

と、つい本音を漏らしてしまうガオ。

と、アイリは、電話の向こうのガオが、取り乱している雰囲気を、敏感に感じ取り、

「あのー、ガオくん、大丈夫?もし、悩み事があるなら・・・今、この部屋に大人の女性が私も含めて3人いるから・・・もしなんだったら、話してみない?」

と、アイリは提案する。

「え、アイリさんを含めて大人の女性が3人ですか・・・」

と、ガオは一瞬冷静になり考えてみる。

「むしろ、この問題は、リサさんと同じ、大人の女性に聞くべき話だ・・・これは願ったり叶ったりだ。行動してみるもんだ」

と、ガオは判断すると、

「すいません。僕の悩みごとは、大人の女性相手の話なので・・・もし、そうして貰えるなら、とても嬉しいんですか・・・」

と、ガオは頼み込む。

「いいわ・・・ガオくん、ちょっと待っててね」

と、アイリは、すぐに、状況をテキパキとアミとマキに伝え・・・アミとマキの了承を得ると、電話機の音声を外部に聞こえるようにした。

「えーと、じゃあ、私たちの方から、自己紹介するわね。わたし東堂アイリは、29歳、そして・・・」

と、アイリが言うと、

「えーと、私はアイリの同僚で、同じく29歳のマキです」「わたしも同じく同僚で、28歳のアミです。ガオくん、よろしくね」

と、二人の自己紹介が終わる。

「えーと、鈴木タケルと同じ部屋だった、田島ガオです。28歳で、会社入って2年目です・・・」

と、ガオも自己紹介を終える。

「それで、早速なんですが・・・実は昨日、とあるバーで30歳の女性に出会ったんです。突然に・・・」

と、ガオは説明し始める。

「まあ、知り合いの同僚という話だったんですが・・・既婚の女性なんです。一応仮名を使いますが、ミサさんって言うんですけど・・・その女性が電話番号を教えてくれて」

と、ガオは説明する。

「そのー・・・大人の女性の方なら、分かってもらえるかと思うんですけど・・・こう、お互い出会った瞬間に、「あ、このひとだ!」って思う瞬間ってありませんか?」

と、ガオは言う。

「そのー、運命のひと、というか・・・会った瞬間に恋に落ちる・・・そういう経験したことありませんか?」

と、ガオは言う。

「あるわ!」

と、真っ先にアミが反応する。

「ガオくんの言う、その体験、わたしもある・・・私の場合も、相手は、既婚者で・・・もちろん「大人の恋」しか、出来なかったわ・・・」

と、アミは残念そうに話す。

「大人の恋・・・ですか?」

と、ガオは反応する。

「そう。私はそう呼んでいるけど・・・相手が既婚者だったから、私に出来ることは限られていた・・・それでも、楽しめることはあるの・・・」

と、アミが話す。

「秋田在住の作家の白鳥道生さんの話よ・・・アイリもマキも知ってるでしょ!」

と、アミはアイリとマキに話している。

「あー、あの渋いイケメンの・・・あれ、2年くらい前の話だっけ?」

と、マキ。

「確か、40代中盤の男性だったわよね・・・奥さんに、女のお子さんが確か2人・・・」

と、アイリは、記憶力の精密なところを見せる。

「その白鳥さんとは、どんな感じだったんですか?」

と、ガオが聞いてくる。

「道生さんと会った瞬間、それこそ、私は恋に落ちた・・・でも、彼に家族がいるのは、知っていたの。私、担当者だったから・・・情報のやりとりは、していたし・・・」

と、アミは静かに話す。

「彼も私に会った瞬間、私に恋に落ちてた・・・お互いが人生に必要だと言うことも、私は理解していたの・・・でも・・・だからこそ、彼の家族を苦しめては、いけないと・・」

と、アミは言う。

「彼は月に一二度、東京に出てくるだけだったから、わたしは彼の目を見ている時だけが、しあわせだった。お互い、「大人の恋」をしていることは、わかっていたから」

と、アミ。

「彼も、そんな私を受け入れてくれたわ・・・ただ見つめ合うだけの恋。決して、言葉にしちゃいけない恋。だから、たまにランチに誘ってくれると嬉しくてね」

と、アミ。

「そういうやさしさのある彼だった。道生さん・・・今は担当もはずれたし、彼も別の出版社を使うようになったから、会うことはないけど・・・」

と、アミ。

「何か、あったんですか、二人の間に」

と、ガオ。

「「アミちゃんのしあわせの為に、僕は身を引くよ。いつまでも、こういう状態を続けるのは、アミちゃんの人生の為によくない」って彼が言ってくれたの・・・」

と、アミ。

「わたし、彼のやさしさに泣いたわ・・・でも、ほんとに楽しかったの。目を合わせるだけで、お互いを理解出来た・・・わたしは、その時、それだけでしあわせだったの」

と、アミ。

「たまに、私が作っていったお弁当を・・・社の屋上で一緒になって食べて・・・おしゃべりして、楽しく笑って・・・それだけで十分なしあわせを感じていたわ。あの頃」

と、アミ。

「「大人の恋」は、そういうもの・・・目と目を合わせる、あの瞬間が一番なの。それが最高の瞬間。完全なるプラトニックラブね。だって相手の家庭を壊したくないでしょ」

と、アミ。

「はい・・・そこがよくわからなかったんですよ・・・でも、その話聞いて、よくわかりました・・・ただ・・・目と目を合わせるだけで満足出来るもんなんですか?」

と、ガオが素直に聞いている。

「そうね・・・というか、それくらいで満足しないと・・・お互い傷つけあってしまうから・・・それが大人のお約束なの・・・」

と、アミが真面目に答えている。

「で・・・ガオくんの方は、どういう話なの・・・その、ミサさんだっけ?30歳の女性は、どんな感じのひとなの?」

と、アイリがガオに聞いている。

「身長は170センチくらいあったかな・・・細身で、スポーツウーマンって感じで・・・それでいて知的で話がとても合う女性でした」

と、ガオは真面目に話している。

「二人きりで長い時間話し込んで・・・まったく飽きることがなくて・・・僕はこの女性に出会うために生まれてきたんだって、そう思えるようになって・・・」

と、ガオ。

「彼女も僕に恋に落ちたんだと思います。電話番号も教えてくれて・・・いつでもかけていいからって、言われて・・・それ以来、彼女の映像が頭から離れなくて」

と、ガオは真面目に説明する。

「ねえ、ガオくんって、一応聞くけど、女性経験は、あるの?」

と、マキ。

「え?ああ・・・まあ、3人ほど・・・」

と、ガオは素直に話している。

「なるほど・・・初恋でドキマギしちゃったわけでなく・・・ある程度恋愛経験もあるから・・・だからこそ、大事な出会いだということがわかるから、ドキドキしてるのね」

と、アイリが言う。

「はい・・・そういう状況だと思います。だから、これから、どうしたらいいのか、全然わからなくって・・・それで鈴木に聞いてみようかと思って・・・」

と、ガオは言う。

「ガオくんは、これから、どうしたらいいですか?「大人の恋」経験者の、アミさん」

と、アイリが振る。

「そうね・・・そのミサって女性が、どこまでガオくんに求めてくるかね・・・もしかしたら、ガオくんに乗り換える気満々かもしれないし・・・」

と、アミは言う。

「だとしたら・・・ガオくんどうする?」

と、アイリ。

「そのー、僕の直感なんですけど、ものすごく危険な香りがするんですよね・・・この恋に手をだしたら、火傷するぞ的な・・・」

と、ガオ。

「魔性のおんなかもしれないってこと?」

と、アミ。

「ええ・・・」

と、言葉を濁すガオ。

「でも、考えてばかりいたって、始まらないわ・・・」

と、マキ。

「それもそうね・・・」

と、アミ。

「こんな時、タケルだったら・・・どうするかしら・・・」

と、アイリ。

「タケルくんだったら、きっと、いい案をさらりと提案してくれて・・・例のニヤリとした顔をしてくれるんじゃない?」

と、マキ。

「そうね。私たちが、すっきりするような、名案をさらりと出してきて、ごく当然って感じで、ニヤリとしてるわね!」

と、アミ。

「うん。それが、タケルっていう男だもの・・・あのニヤリとした表情・・・また、見たいわ」

と、アイリ。

「ほんと」「ほんとねー」

と、マキとアミも頷いていた。


電話口の向こうで、ガオは、

「鈴木って・・・どんだけ、この3人の大人の女性に買われているんだ?」

と、思っていた。


大人の女3人と、まだまだ未熟な男ひとりの会話は、当分終わらないのでした。


つづく

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