「ゆるちょ・インサウスティ!」の「海の上の入道雲」

楽しいおしゃべりと、真実の追求をテーマに、楽しく歩いていきます。

ラブ・クリスマス!(9)「ボクとワタシのイブまでの一週間戦争!」

2012年12月28日 | アホな自分
クリスマスイブ6日前の日曜日の午後6時頃、東堂賢一は、夫婦揃って牡蠣鍋を囲んでいた。

「いやあ、やっぱり、冬は牡蠣鍋だねー。牡蠣の美味しいこと・・・ハフハフ・・・美味い!」

と、日本酒をやりながら、の牡蠣鍋はやはり堪えられない。

「あなた・・・今日エイイチさんと電話で話したんだけど・・・」

と、愛美が話しだす。

「おお、なにかあったか?」

と、賢一は、普通に返す。

「エイイチさんが、お詫びを言ってきたの。キャバクラであなたの携帯の電話番号を教えるようなことをしてって・・・」

と、愛美は話している。

「おお、そのことか。なんて言ってた、エイイチは?」

と、素直に聞く賢一だった。

「少し酔っぱらい過ぎてたって、申し訳ないって言ってたわ・・・女の子にどうしても教えてほしいって言われて、つい教えちゃったんだって」

と、愛美は話している。

「あいつ、普段は謹厳実直な癖に、酒と女に弱いからな・・・まあ、俺もそれを知っていて、ああいうところに連れていったんだから、自業自得でもあるがな」

と、賢一は鷹揚に話している。

「でも、なんとなくだけど・・・」

と、愛美は何かを言いたげ。

「なんだ、お前が言い淀むなんて、珍しいな」

と、賢一。

「エイイチさん、アイリに失恋したのは、仕方ないとして・・・誰か、エイイチさんに良い相手、いないかしら。気のつくような女性・・・」

と、愛美は言う。

「季節的にも、クリスマス・シーズンだし・・・なんか、しょんぼりしてたわ、エイイチさん・・・」

と、なんとなく弱っている男性にやさしくしてしまう愛美だった。

「うむ、そうだな・・・元はといえば・・・俺の策につきあわせたのが、いけなかったんだからな。エイイチくんの気持ちを弄んだ形になってもいるからな、俺は」

と、タケルとエイイチの対決を組んだ張本人の賢一だった。

「そうよ・・・責任は、あなたが、とらないといけないんじゃないかしら?」

と、さらりと賢一を見る愛美だった。

「う、うん・・・まあ、こころあたりでも・・・」

と、賢一が言ったところへ、携帯が鳴る。

「ったく、また、こういう時間に・・・」

と、携帯へ出ると、賢一の顔が見る見る青くなる。

「だから、レナちゃん、困るんだよ、この電話にかけられると・・・この番号は、顧客に連絡してある番号だから、おいそれとは変えられないし・・・」

と、賢一は電話をしながら、目の前の愛美の表情が、どんどん白くなっていくことに気づいていた。

「ね、お願いだから、もう、ここに電話しないで、ね。お願いだから、ね」

と、電話を切った、賢一だが・・・白い顔をした愛美は、すぐに席を立ち、ダイニングから出ていった。

「まずいなー・・・いかんぞー・・・」

と、頭を抱える賢一だけが、ダイニングに残っていた。


同じ頃、イズミと美緒は、居酒屋「楽静」の個室で、差し向かいでお酒を飲んでいた。

美緒が、イズミのお猪口に日本酒を注いであげて、イズミがその日本酒を飲み干していた。


二人とも差し向かいで、お互い、やわらかい表情だった。


そのうち、美緒がせつなそうな表情をすると、イズミは立ち上がり、美緒を抱きしめ、お互いの目を見つめるようにしながら、目を閉じてキスをした。

長い長いキスだった。

キスが終わった時、美緒は、少し恥ずかしそうにしながらも、はにかむような、笑顔になった。

そして、今度は、美緒の方から、イズミの唇にキスをした。


と、そんな時に、イズミの胸ポケットに入っていた携帯電話が鳴り出した。

「う、会社からか・・・」

と、イズミは舌打ちしながら、携帯に出る。

「沢村です。はい・・・え、本当ですか、それ・・・わかりました。すぐ行きます。1時間以内に。はい・・・」

と言って、イズミは、携帯を切ると、

「美緒ちゃんごめん。会社に急遽戻らなくっちゃ・・・でも、僕はこの携帯に電話してくれれば、いつでも捕まるから、安心して」

と、イズミは、携帯電話の番号をさらさらと手帳に書き、それを破ると、美緒に渡した。


美緒は、そのイズミに抱きついて、

「強く強く抱きしめて・・・」

と言った。

イズミは、何も言わず、無言で、美緒を強く強く抱きしめた。


クリスマスイブ6日前の日曜日の夜、午後7時頃。その日一日、アミと横浜デートをしていたガオは、自宅アパートにたどり着いていた。

「ふー」

と、ガオはため息をついていた。

アミに言われたダメ出しに、けっこう傷ついていたガオだった。

「アミさんから見たら、俺って、まだまだなのかー」

と、時間が経つにつれて、アミから言われた様々な言葉が、リアルな駄目だしとなって、ガオの心を傷つけていた。

「アミさんって、本当の大人の女だったな・・・俺がドMだったなんて・・・今まで誰にも言われたこと無いのに・・・それをあの短い時間で見抜いてた・・・」

と、ガオは、アミのすごさを素直に認めていた。

「外見は、あんなに少女のような外見なのに、中身は、本当の大人のおんな・・・素敵なひとだ、アミさんって・・・」

と、ガオは素直に思う。

「俺、あんなひと、今まで見たことがない・・・というか、話したことすら、なかったもんな。俺の逢ってきた女達とアミさんは、レベルそのものが全然違う・・・」

と、ガオは思い至る。

「男は女性に因って変わる。女性はつきあう男に因って変わるとは、言うけれど・・・アミさんみたいな大人の女性とつきあっていたら、大きくもなるだろうな・・・」

と、ガオは素直に思う。

「というか、アミさんのポテンシャルが、そもそも半端ないし・・・彼女の求めている男のポテンシャルも半端ない・・・俺は逆立ちしたって、無縁の世界だ」

と、ガオは思う。

「俺は、今まで、何をやってきたんだ・・・」

と、少し落ち込むガオ。

「あーダメだ駄目だ。こんなことで、落ち込んでいては・・・酒でも飲もう」

と、ガオは赤ワインを出してきて、昨日の残りのバケットにローストビーフを乗せて食べ始める。

赤ワインで流して・・・チーズも食べる。

「しかし・・・そのアミさんが、夢中になっている鈴木って、どんだけのポテンシャルを積み上げてきたんだろう・・・」

と、ガオは思う。

「アミさんから見れば、俺と鈴木には、天と地ほどの差があったんだろうな・・・だから呆れてたのか・・・」

と、ガオはそこに思い至る。

「俺は今まで、何をやってきたんだろう・・・会社で仕事ばかりしてきたから・・・大事な男性としての修行を怠ってきたということか・・・」

と、ガオは哀しい。

「俺はこれから、どうやって、男性としての修行をやっていけばいいんだ・・・」

と、ガオは頭を抱えて悩む・・・。


「あなた、もう一回りも二回りも大きくなる為に、このミサって女との恋を思い切り利用しなさい」


アミが言った言葉が、ガオの心の中に蘇る。

「そうか・・・そうだ。アミさんが答えをくれてたじゃないか」

と、ガオは気づく。

「それに、アミさんだって、僕に、アドバイスをしてくれるんだから・・・」

と、ガオの表情が晴れやかになっていく。

「よし。俺はリサさんとの恋と、アミさんのアドバイスで、一回りも二回りも大きな男になってやる!」

と、決意を固めるガオだった。

「やってやるんだ!」

と、気合をいれるガオだった。


同じ頃。東堂エイイチは、都内のとあるフレンチ・レストランで、お見合いパーティーに出席していた。

華やかな服装をした紳士淑女が集い、それぞれが思い思いの相手と談笑していた。

「あ、あのー、僕、弁護士をやっている東堂エイイチというものですが・・・」

と、エイイチは必死に自己紹介を試みるが・・・。

最初こそ、エイイチのイケメンな見た目と、弁護士という肩書きに女性の目はハートマークになるが・・・話している内に女性がフェードアウトしていくのが常だった。

そのうち、エイイチはワインをがぶ飲みし・・・酔って椅子に座っているのが、精一杯という感じになっていた。

「大丈夫ですか?ご気分でもお悪いの?」

と、ひとりの小柄な女性が話しかけてくる。

「少し酔ったみたいで・・・僕、こういうのに、慣れていないんです。恥ずかしながら」

と、エイイチは、少し酔っているせいか、自然と話すことが出来た。

「あなたも・・・。わたしも、清水の舞台から飛び降りる気持ちで、今日、来たんですけど・・・わたしも慣れなくて・・・」

と、女性は安心したように、横に座ってくる。

「わたし、美田園美奈、と言います。27歳。家事手伝いなんです」

と、その女性は自己紹介してくれる。

「僕は東堂エイイチ。30歳。弁護士やってます」

と、自然な笑顔で笑うエイイチ。

美奈も自然な笑顔だった。


クリスマスイブ6日前の日曜日の午後8時頃。リョウコはアイリのマンションにまだ居続けていた。

「リョウコちゃんは、何時頃、ここを出ればいいの?」

と、夕飯の後片付けをしながら、アイリが普通に質問している。

「えーと、ここからなら、今日は30分程度でいける場所ですから・・・8時15分に出ます」

と、リョウコは話す。

「じゃ、お茶一杯くらいは、飲めるわね。ほうじ茶で、いいかしら?」

と、アイリは笑顔になりながら、お茶の用意をしている。

その瞬間、アイリの電話機がルルルルと鳴り出す。

「こんな時間に誰かしら・・・」

と、アイリが電話に出ると、

「もしもし、アイリ?おはよう・・・っていうか、そっちは夜か。こんばんわだな」

と、相手は鈴木タケルだった。

「もしもし、タケル!タケル逢いたいよー。もう、半月も会ってないんだよー。もう、寂しくて死にそうだよー」

と、アイリは、それまでの冷静さ、お姉さん的振る舞いはどこへやら、完全にひとりの少女に戻っている。

「そう言うだろうと思ってさ。元気か、アイリ?泣くなよ、寂しいからって」

と、タケルは冷静に話している。

「あ、そうだ。リョウコちゃんも来てるんだよ。ねえ、リョウコちゃん、ほら、タケルタケル」

と、アイリはリョウコをすぐに呼ぶと電話を代わる。

「あ、もしもし、タケルさんですか?元気ですか?タケルさんのお姿が早くみたいですー」

と、リョウコも、そこは本音で話してしまう。

「いやあ、今日はアイリのマンションに、リョウコちゃんが来てるかな、と勝手に思ってねー。祐の告白レッスンしてくれた?」

と、タケルはペンディングを冷静にフォローするシステムエンジニアのように冷静にリョウコに話を振る。

「あ、そうでした。ちゃんと見てあげましたよ。良い感じに仕上げましたから、バッチリです」

と、リョウコもうれしそうに報告する。

「うん。それは良かった。まあ、祐も、美人な大人のお姉さん2人にレッスンされれば、まあ、本番は問題ないだろう」

と、タケルはそこを心配して電話したのだった。

「タケル、リョウコちゃんは、それはそれは熱心にがんばってくれたのよ。それと、わたしも、がんばったからね!」

と、アイリはタケルのお褒めの言葉が欲しい。

「ああ。アイリはそれこそ、一生懸命がんばってくれると思ってたから。ありがとな、アイリ。そして、リョウコちゃんにも、そう言っておいて」

と、タケルは鷹揚に話す。

「おっと、そろそろ仕事行かなきゃ・・・また、電話するから」

と、タケル。

「ちょっと待って・・・やっぱり、年末は帰ってこられないの?」

と、アイリは哀しそうに質問する。

「うん、今のところ無理だなあ・・・スガさんが帰って来いって言うなら話は別だけど、それもなさそうだし」

と、タケルはしれっと話している。

「そうか・・・そうよね・・・身体に気をつけてね、タケル」

と、アイリはタケルのことを心配している。

「ああ・・・リョウコちゃんにも、よろしく」

と、タケルが言うと、すぐさまリョウコに代わるアイリ。

「もしもし、タケルさん、タケルさんの方こそ、身体に気をつけてくださいね」

と、リョウコも話す。

「お、リョウコちゃん・・・アイリ寂しがってるから、リョウコちゃん、話し相手になってあげて・・・悪いね」

と、タケルはリョウコにだけ、こそっと話す。

「はい、わかりました・・・アイリさんに代わります」

と、受話器をアイリに渡すリョウコ。

「とにかく、アメリカは、風邪も流行っているっていうから、気をつけてね。タケル」

と、アイリが言うと、

「おう。また、電話するから。じゃね」

と、タケルが言って電話は切れた。

アイリとリョウコは、なんとなく疲れて・・・椅子に座りこんだ。


「なんか、疲れましたね」「そうね」

と、それでも、タケルの声を久しぶりに聞けた二人は微笑んでいた。


同じ頃。アミは、自宅のマンションで静かに音楽を聞いていた。

アミは、スズキのマリネと、タコのトマトソースパスタを肴に白ワインを飲んでいた。

ダイニングテーブルの上には、タケルとアミの二人で撮った写真が飾ってあった。

「アイリもお人好しすぎるわ。こんな写真も撮ってくれるし・・・」

と、アミは、白ワインを飲みながら、考えている。

「でも、それは、タケルくんが、絶対に浮気しないっていう、アイリの確信でも、あるか・・・」

と、その写真の隣に飾ってある、アイリとマキとアミの写真を見ながら思うアミ。

「タケルくん、今頃、ニューヨークで、どうしてるかな・・・」

と、アミは、タケルの面影を思い出し、少し嬉しくなりながら、ワインを飲み干し、満足気な笑みを浮かべた。


クリスマスイブ6日前の日曜日の夜は、そんな風に更けていった。


つづく

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