浪速夢見頃>江戸川柳♪2
♪玄宗は 泣き泣き耳の 垢を掘り
♪一の富 何処かの者が 取りは取り
♪薦(こも)被こもかぶ り ととでまんまを 食った奴
(乞食も御乳母日傘で育てられた
金持ちの坊ちゃんだった
♪あの女房 すんでにおれが 持つところ
♪愛想の よいをほれられたと思い
♪通り抜け 無用で通り抜けが知れ
♪仲条は むごったらしい 蔵を建て
(仲条は江戸の有名な堕胎医一族
♪禿(かむろ) から 目にもろもろの 罪を見て
(遊郭の少女(禿)の見聞
♪新田を 手に入れて立つ 馬喰町
(公事宿は馬喰町にあった
♪役人の骨っぽいのは猪牙(ちょき) に乗せ
(猪牙:吉原へ行く小船
♪残念か いいか常盤は 泣いてさせ
(源義朝の後家の常盤御前は平清盛の
意に従う3人の子供を救った
♪小松殿 開(ぼぼ) が敵と 世をなげき
(平清盛の嫡男小松内府重盛らは
牛若(源義経)に滅ぼされた
♪一門は 蟹と遊女に 名を残し
(平家一門は壇ノ浦で滅び平家蟹となる
♪西海のくろうも 水の泡となり
(源義経(九郎判官)は西海で平家を苦労して
滅ぼしたが,奥州平泉で滅ぼされた
♪おつむりと 下は違うと まさ子いい
(源頼朝は大頭だった
♪親鸞は 世をひろく見て あなかしこ
(弘法は裏 親鸞は表
♪手を握る ばかり志賀ない 老いの僧
(高徳の老僧であって志賀寺の上人が美女の
京極の 御息所に一目ぼれして
♪三つのうち 目も歯もよくて 哀れなり
♪ひとりもの 店賃(たなちん) ほどは 内にいず
♪おさしみの 前に土手をば ちょっとなで
♪歯は入れ歯 目はめがねにて 事たれど
♪遠くから 口説くを見れば 馬鹿なもの
♪むつかしい顔をうっちゃる袖の下
♪五右衛門は生煮えのとき一首よみ
♪蝿は逃げたのに静かに手を開き
♪神々も恵方果報の当り年
(恵方=吉の方向,果報=賽銭
♪知れて居るものをかぞへるせんがく寺
♪こらへかねこらへかねての短慮なり
♪手を出した方が負けだと下馬で言ひ
♪丑(うし) の日はのらくらとしたものを喰い
♪天地の出合楊貴妃織女なり
♪させもせずしもせぬ二人名が高し
(二人=小野小町と武蔵坊弁慶
♪瓜田(かでん) より炬燵(こたつ) の足の疑わし
♪忍ぶ夜の蚊はたたかれてそっと死に
♪痩せこけた 死骸があると わらび取り
♪掛取かけと りが来ると作兵衛唸り出し
(作兵衛=仮病人
♪居酒屋のねんごろぶりは立って飲み
(ねんごろぶり=常連のフリ
♪神代にもだます工面は酒が入り
♪本降りになって出て行く雨宿り
♪ちかづきを考えて居る雨宿り
(ちかづき=近所の知り合い
♪腹立って出る傘(からかさ) はひらきすぎ
♪店中たなじゅう の尻で大屋は餅をつき
(共同便所の肥取り代で餅をついた
♪嫁さえざえと牡丹餅を七つ喰い
(姑の四九日
♪死水を嫁にとられる残念さ
♪ねがはくは嫁の死水とる気なり
♪医者衆は辞世をほめて立たれけり
(医者の偽善
♪まま母とにらんで女衒ぜげん 安くつけ
♪つぶれ前女衒ぜげん まで来るむごい事
(つぶれ前=破産寸前
♪嘘も少しはつきますと女衒ぜげん いい
(女郎の最大の武器は嘘
♪座頭のを借りて座頭の鳴りをやめ
(座頭からの借金を座頭から借りて返す
♪家督公事目鼻がつくと座頭来る
(家督相続の訴訟(公事)にけりで借金取り
♪なきなきもよい方をとるかたみわけ
♪五分五分に枕をよせる旅戻り
♪かよう遊ばせと鶺鴒(せきれい) びくつかせ
(鶺鴒=神への性の教え鳥
♪も一つの伝授鶺鴒(せきれい) 泣いてみせ
♪人化かす狐も土の団子喰い
(稲荷へあげる土団子
♪出家でもうけたを医者で遣いすて
(生臭坊主が医者に化けて花街へ
♪仲人はあばたの数をかぞえて来
(小姑の数を減らして仲人口
♪けちな医者さて犀角
(さいかく)に困りはて
(犀角=犀の角の漢方薬
♪日を呑んで月を流すは恋の道
(日=朔日丸=避妊薬・堕胎薬,月=月経
♪恋の味袂たもと をかんで娘知り
♪叱られて娘は櫛の歯をかぞへ
♪我が好いた男の前をかけぬける
♪髪を結ふ時に女は目がすわり
♪相性は聞きたし年は隠したし
♪くどかれて娘は猫にものを言ひ
♪マミムメモ今宵はじめてサシスセソ
♪箱入りのあったら金に嫁を添え
(親は箱入りと思っても
持参金なしでは売れず
♪ひる過ぎの娘は琴の弟子も取り
(ひるすぎの娘=行き遅れ
♪抱いた子にたたかせてみる惚れた人
♪ふところに抱いてゐたのに滅ぼされ
(常盤御前の抱いていた
頼朝と義経が平家を滅ぼした
♪腹の立つ裾へかけるも女房也
♪いけんきく息子の胸に女あり
♪ふみの来るたんびに息子ちえがつき
♪ひと塩すると実体の息子なり
(ひと塩=道楽息子を銚子へ勘当,
実体=実直
♪逃げしなにおぼえてゐろは負けたやつ
♪夏草や野良者共の出合あと
(出合=村出合=村の男女の密会
♪出合する上をひばりは舞って居る
♪芝居にて見合い濡れ場が教え鳥
♪金箔のつかぬは木地のいい娘
(持参金なしでよいのは器量良し
♪菅笠も夜は重なる夫婦旅
♪女房の留守もなかなか乙なもの
♪女房をこわがる奴は金が出来
♪さわらねばなお祟りあり山の神
♪色男ちとそろばんはにちゅう也
(にちゅう=未熟
♪傾城の尾羽打ちからすいい男
(傾城が騙されるような色男
♪口がるく尻のおもたい居候
♪恥ずかしさ知って女の苦のはじめ
♪雲となり雨となったで月を見ず
(雲雨=男女の営み,月=妊娠
♪弁天を大黒にして布袋にし
(弁天=美人,大黒=生臭坊主の隠し妻,
布袋=妊婦
♪天知る地知る二人知る御用知る
(天知,地知,我知,汝知:密事はばれる
♪四つ手駕月の都をさして駈け
(四つ手駕=辻駕,月の都=八月一五夜と
九月十三夜=吉原の紋日
♪馬鹿らしゅうありんす国の面白さ
(ありんす国=吉原
♪突出しの親人参をたんと飲み
♪水にする起請もかたい紙へ書き
(水にする=水に流すつもりの嘘起請
♪鶯も 蛙も鳴かぬ 小倉山
♪花の色は 美しけれど 実はならず
♪侘びぬれば 今はたおなじご借金
♪座敷牢 千々にものこそ悲しけれ
♪喰うも憂し 喰はぬも辛し 居候