「ボクも…わかった気がします。多分、ボクたちの知ってる神田さんの
YUは、生には執着してない。むしろ死にたい、眠りたい、と願ってる。『あのひと』との愛の記憶は壊れてて、どこの誰かもわからない女性に執着し、なんとしても生きていたいと思う気持ちは本来は薄い。だから自分を大切にしない、だから、無謀な戦闘パターンになる。そして更に… 心のなかに、『あのひとに会いたい』って、神田さん固有の記憶や思考回路とはまったく別のところから発する強烈な想いがあって、負けそうなとき、『戦うのをあきらめてしまったほうがずっと楽なのに』、あきらめてしまったらあのヒトに会えなくなるって、
引くことをさせずに限界まで神田さんを戦わせてしまうから… 結果神田さんは、もっとボロボロになるんだ、多分、きっと…」
「だニャ。
他人に操られる『お人形のイメージ』――――― 星野先生がおっしゃった言葉通りの神田さんの姿がそこには見えるのニャ。せめて神田さんが、
あのひととのしあわせだった記憶を持ってて、あのひとを愛してて、アルマよりもあのひとが大事で、あのひとに逢うことのほうがずっとずっと素敵なことだから、大切じゃないし、自分を殺してあのひとと逢うのを妨げるアルマを破壊することに決めた、って云うのならよかったのに… YUは、絶対あのひとに逢わなきゃいけないってプログラミングされた綺麗なお人形。愛の記憶もなく、アルマよりもあのひとを大切に思える思い出も気持ちもまったくないのに、『おまえは悪くない』って思う大切な相手を斬らなきゃいけないって以上に悲劇的なことって、あるのかニャあ」
(つづく)