Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

遠藤助手の気遣い

2015-10-06 01:00:00 | 雪3年4部(遠藤の~それぞれの意見)



チーズインザトラップ 4部

始まります。




                   





天高く馬肥ゆる秋。

穏やかな晴天の下で、彼女は熱心に勉強をしていた。



A大学経営学部経営学科。

教授の話を聞きながら、今日も熱心にノートを取る。



赤山雪、二十三歳。

切れ長の目が、ふと気になった窓辺を眺める。



学生達がまばらに座った教室の風景。

その向こうに、ロールスクリーンが下りた窓が見える。






眩しい外の風景は、切り取られて少ししか見えなかった。

その少しだけの景色を目に焼き付けた後、再び雪は机に齧りつく‥。






三年生のニ学期もすでに半分が過ぎ去った。

就活戦線に入り込んだからか、皆どこかソワソワし始めている。




そしてその”ソワソワ”は、時に人の焦燥を駆り立てる。

「ぶっちゃけ、過去問さえ覚えれば合格なんでしょう?

それってちょっとひどくないですか?」




糸井直美は、苦い顔をしてそう口にした。

視線の先には、教授助手・遠藤修の姿がある。

「過去問の踏襲なんて、大学の質を下げるだけです!」「そうですよ!」



ムッツリと黙り込んだ遠藤の前で、糸井直美を始めとした女学生たちが抗議を始めた。

「教授に話してみて下さいよ~」「そんなの弁別力が落ちる元ですよ!」



わいのわいの騒がれ、遠藤は煩そうにその不機嫌を顔に出す。

「あーったく!過去問なんて無くても、勉強さえちゃんとやってりゃ合格する!

勉強もせずに過去問持ってる人間探しか?」




遠藤の言葉に、直美は彼から目を逸らして口ごもった。

「そうじゃなくて弁別力は‥」

「どうせ卒業試験はお前らが一、ニ年の時に習った所から出るんだ!」



「俺の言ってることは間違ってるか?」



押し黙る女学生達。

遠藤はダメ押しとばかりに、彼女達に向かって言葉を続けた。

「つーかまだ試験も受けてないのに、過去問と同じ問題が出てくるって言い切れるか?」

「いえそうじゃないですけど、小耳に挟んで‥」

「それに教授、新しく問題を作り直してるっぽかったぞ?

そうなると過去問と全く違う問題になるかもしれん」


「本当ですか?」「ああ!」



そして遠藤は彼女達の性質と、その本心を見抜いてこう言った。

「お前達なぁ、自分達が持ってりゃ何も言わないくせして、

他人が持ってたら不公平だ何だ文句言うのか?」




「そういうことだろ?」

「それは‥」



直美は言葉に詰まって言い返せなかった。

遠藤は呆れた顔をして、彼女達から背を向ける。

「ったく‥いい年してこんなことで談判か。

お前らこんなことしてる間に就活の準備でもしろよ。時間なんてあっという間に過ぎるぞ」


「あ、遠藤助手ー‥」



そしてまだ何か言いかける直美に、遂に遠藤がキレた。

「まだ何かあんのか!!何だ?!あぁ?!

「い、いえっ!」



その遠藤の剣幕に、皆尻尾を巻いて逃げて行った。

彼女達の後ろ姿を見ながら、遠藤はチッと舌打ちする。



‥さて事務室に帰ろう。

そう思った時だった。

「コンニチハ‥」

「うおおおっ!!びっくりしたぁぁぁっ!!!」



音も無く現れた雪の姿に、遠藤は心の底から驚いた。

そんな彼のリアクションを目にして、雪は気まずそうに俯く。

 

遠藤はキョロキョロと辺りを見回して、先程の女学生達が近くにいないか確認した。

しかし雪は遠藤が何も言わないので、そのままくるりと踵を返す。

「では、サヨウナラ‥」「おい!ちょっとこっち来い!」



遠藤は大きな声で雪を呼び止め、雪はおずおずと彼の前に出る。

遠藤が「はあっ」と大きな息を吐いた。



「過去問、青田から貰ったんだろ?」



一呼吸置いた後、遠藤がそう聞いてきた。

先程の遠藤と直美達との会話を聞いていた雪は、とりあえずただ頷いてみる。

「‥はい」



否定されるだろうか、それとも怒られるだろうか?

しかし遠藤の返答は、雪の想定とはまるで違ったものだった。

「そうか。失くすんじゃないぞ」



思わず雪は遠藤を見上げた。

「生産会計と税務のテストは難しいけど、いつも過去問とそっくりだから。

それに木村教授はバケーションのことしか頭に無いから、どうせ問題を新しくはしないさ」




遠藤はそう言った後、先程の女学生らの談判を思い出して舌打ちする。

「フン‥。過去問持ってる人間を追い込むことなんてないだろうに‥」



「あんな奴らのことは気にするな」



そう言って遠藤は息を吐いた。

彼の発する言葉はぶっきらぼうだが、雪に対する気遣いを感じる。

「あんまりおおっぴらには言えないが、

どうせ時期が来れば廻り回って、皆過去問を手に入れるんだ。どうしてあんなことするのか謎だな」




少し棘のある言い方だけれど、彼の言葉は優しかった。

雪は言葉の奥にある遠藤の思いやりを感じて、思わず笑顔になる。



「はい。ありがとうございます」



彼に向かって深く頭を下げて、礼を口にした。

遠藤は雪の気持ちを受け取り、軽く頷く。



雪の抱える色々なしがらみの一端を、遠藤は理解出来るのだろう。

彼はそれ以上何も言わずに、彼女の背中を静かに見送っていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<遠藤助手の気遣い>でした。

さて!チーズインザトラップ第4部突入です~!

4部のイラストもまた素敵ですね!

どうやらこのイラストは全体像があるみたいですよ。



いつかカラーで見れますかね^^


そして今回。

久々の遠藤さん登場でしたね。しかも雪のことを庇ってくれて、直美に辛辣に当たってくれて‥

久しぶりに秀紀兄さんも見たいトコロですね‥もう出てこないのかな‥秀紀兄さん‥


次回は<先輩の意図>です。


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5 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
遠藤さん (CitT)
2015-10-06 07:58:23
「過去問と全く違う問題になるかも知らない」の前。
「それに教授、新しくテストを作ってるらしかった」って
テスト問更新を匂わせました。
でも雪には「教授は長期休みのことばっか考えてて、
いつも問題は作り途中やめる」と言ってます。
つまり、作ろうとするのは本当だけど、
それが実際テストに出ることはないし、
雪以外にはそれを伝わない、と・・・
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CitTさん (Yukkanen)
2015-10-06 10:08:55
なるほど!そういうニュアンスだったのですね!
ありがとうございます!修正します~^^
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遠藤さん (むくげ)
2015-10-11 09:42:13
懐かしい
そしてなんか大人になった
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Unknown (りんこ)
2015-10-12 17:05:47
ほぉ!イラスト徐々に色が付くんですかね。この最後の晩餐風の構図には意味があるんでしょうか。最終章(部)だから??

久々の遠藤さん~
相変わらずガミガミ殺気だっているけど、
言ってることはもっとですし、雪をかばってくれていい奴だ~
ヒデキ兄さんちゃんと就職して、遠藤さんと再会して欲しいです。
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Unknown (Yukkanen)
2015-10-12 21:09:00
むくげさん
遠藤さんがきちんと出番として出てくるのは久々ですよね。
そしてむくげさんの仰るとおり、なんだか大人になりましたよね、彼。

りんごさん
‥ですよね?りんこさんになってるので一瞬動揺しました。笑
イラスト、最後の晩餐風ですよね~。
何かとディナーショーが出てきたりするので、何か引っ掛けてるのかもしれませんね。
スピンオフとしてぜひ遠藤さんとヒデキ兄さんのその後がみたいですね~。
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