Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<淳と亮>過去回想(1)ー本音ー

2016-07-08 01:00:00 | <淳と亮>過去回想(1)〜(10)
青田淳という人間が、河村姉弟に対して、彼らとの関係に関してどう思ってきたのか。

それがこれから語られようとしていた。

いつか静香に向けて伝えた、あの言葉が蘇る。

「なぜか皆、俺は言われるがままに生きてると思ってるけどー‥」



淳ははっきりと自覚していた。

そうじゃない、と。



初めて亮と静香と顔を合わせた後、父親から言われた言葉を今も覚えている。

「今日会った子たちは、可哀想な子達なんだ。良くしてあげなさい。分かったね?」



あの時、少年淳は頷いた。いつもの”物分りの良い子供”を演じて。

心の中ではずっとこう思っていた。父親の組み敷いた意図も察した上で。

違う。

少しも可哀想だなんて思ってないこと、俺も良く分かってる。




どうして彼らを呼んだのかも。



じっと黙って従っているのは、



本音を押し込めて、見て見ぬフリをして、数年が過ぎた。

それでも淳の本音と建前は変わらない。



特に損することもないからで、



役に立つこともあったからだ。



心の扉を閉め切ったその先に、亮と静香は存在していた。

自身を侵害されなければ、この線の中に入って来なければ耐えられる。

そう、思っていた。



「ったりめーよ!」



「お前はいっこも間違ってねーぞ?」



真っ直ぐな目をして、亮が淳のことを肯定したあの時からだった。

堅く閉まっていた扉の先から、僅かに光が漏れ始めたのは。



ギシリ、と扉の軋む音が鼓膜の奥に響く気がした。

淳は無表情ながらも、目を見開きながら初めて耳にするその音を聞く。



亮は淳の変化に特に気付くこともなく、

淳が幼い頃から集めていたサインボールを持って行った男に対して怒っていた。

「あんなヤツ、せいぜい他人のモンが欲しいってとこか、単なるひったくりでぇ。

次からはぜってーこんなお人好しのバカみてーなことすんなよ!な?!」




歯に衣着せぬ物言いの亮が、ハッキリと自分の意見を口にするのを聞いて、

思わず淳は笑いが込み上げた。亮はそんな淳の姿を、不思議そうな顔をして見つめている。



「はははっ!」「あぁん?何バカウケしてんだよ!



二人は共に廊下を歩いた。

こうやって肩を並べて、幼い頃から共に育って来た二人。

「あ〜つーかマジコンサートよぉぉぉ!お前、オレの代わりに行って来てくれよ!」

「分かったよ」



閉め切っていた扉の向こうから、ゆるゆると風が入ってくるのが分かる。

あの時淳は妙に心地良いその風を感じながら、亮の隣でこう考えていた。

人は狡賢いものだから、



彼らは父さんに利用されてるだけなんだから憎む理由も無いじゃないかと、

そんな風に考えることにした。後付けかもしれないけど









亮と静香が青田家に夕食に招かれたその日

運動がてらバスケットボールを手に、三人は夜のコートに出た。

汗だくになりながらボールを追いかける亮と、



弟には厳しい言葉を掛けるが、淳にはエールを送る静香。



淳は夕食の時に感じていたモヤモヤとした思いを、

身体を動かしながら徐々に消化して行く。



身長も体型も大して変わらない二人。

必死になりながら、一つのボールに食らい付く。



傍目から見れば三人は兄弟のように仲睦まじい。

それでも淳は心の中で、常に彼らを俯瞰していた。

お前達のことがすごく好きで一緒に居たわけでもなかったし、

特別嫌いだったわけでもなかったから。




そんな考え、本当に後付けだけど。







何度目かの亮のシュートは、残念ながらもゴールリングに弾かれ下に落ちた。



亮は地面にへたり込みながら、悔しそうに声を上げる。

「あーっ!惜しい!」



すると。



そんな亮に、淳は手を差し伸べた。

まるで親愛の情を表したかのような、穏やかな笑みを浮かべながら。






じわり、と亮の心に温かな感情が湧いた。

亮は差し出された淳のその手を取り、二人は互いに同じ高さまで立ち上がる。

「うっしゃ。‥あー‥擦り剥いちまった」「手、気をつけろよ」



傷ついた手の平を見つめる亮に、淳はそう声を掛けた。

温かな微笑みを残して。






亮は何も言わなかったが、ただ笑い合うだけで気持ちが通じ合うような気がしていた。

すると静香が淳に駆け寄り、強引な仕草と言葉で彼に突進する。

「終わった?!アイス食べに行こー!」



「あたし振られて傷心なんだから!

おいしいもの食べさせてよね!」


「分かった分かった」



ギュッ!



静香はそう言いながら強く淳に抱きついた。

そして彼女は淳の腕に自分のそれを絡ませ、三人は歩き出す。

「行こ」



くっついて歩く淳と静香の背中を見ながら、亮はどこか嬉しそうな表情で彼らの後を歩いた。

大事にしろよ、と気遣われた自身の左手を、じっと愛おしむように見つめながら。





数週間後。



淳は亮が行きたがっていたコンサートへと出向いて行った。

青田家が所有するスポンサーの特権を使い、亮の為に楽屋にまで足を伸ばして。

「サインの依頼だったね。名前は?」



「河村亮です」



僅かに開いた扉の隙間から、淡い光が漏れていた。

それは刹那に輝いた、親愛の情の煌めき‥。

だからそれなりの好意も示したのにー‥



いつの間にか扉は再び閉まっていた。

見えていた光は、煌めきは、その親愛の情は、今となっては全て幻ー‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<淳と亮>過去回想(1)ー本音ー でした。

淳の過去回想オンリーで行くかと思いきや、現在の淳と亮が当時のことを思い出して語るという形式‥。

時系列順に並べたらそれはそれで分かりにくいので、<淳と亮>という過去回想に特化したカテゴリで

物語を追って行くことにしました。よろしくおねがいします。


そして淳目線の過去回想、興味深いですね。

やはり少年淳は父の目論見に気付いていたのか。そりゃ警戒してかかりますよね‥。

淳のことをまるで疑いもしない亮と、警戒心と上っ面の淳の差が切ないです。

過去回想、現在の視点も交えまだまだ続きそうです。


次回<淳と亮>過去回想(2)ー真実ー です。

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4 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (ありんこ)
2016-07-08 07:56:42
バスケのシーン…言葉のチョイス神ですね。すごくマッチしててじーんと来ました。。
確かに信頼し合えていたはずなのに。
でもこうして二人一緒の場で過去を清算できれば、あの頃とは違う形でもこの先も支え合えるのではないかと…どこかで繋がっていてほしいと願ってしまいます。
淳の処世術 (うめやん)
2016-07-08 16:04:15
今回父の否定が印象的ですね。
自分も同じ処世術を繰り返しているのに、俺は違うというこの感じ、、

前回のでも不思議だたんですが、淳はとっくに抜け出してるというあの下りも、過去を捨てたいけど捨てきれない自分にいっているように見えるんです。
亮が過去心を開いた一瞬があるだけに、尚更強がりになるというか。

無意識かって言うとそうじゃない気がするんですよね。でも客観的に自分の非を認める感覚は無いと言うか、、自己嫌悪はありえないんでしょうね。プライド的に、、

む~ん。。淳のターン、終わりが見えないです(-_-;)亮は本音が出ると相変わらずですね。(笑)
Unknown (宵っぱり)
2016-07-09 07:32:56
過去話へのリンクにも飛んでまた読み返すとyukkanenさんやコメントされてる方の考察の深さにうなりました。
まだ若いけれど彼らの抱えてる心の傷、一瞬芽生えかけた友情とそのすれ違いが切なくて。
今より純粋で柔らかい心をもっていただけに、淳くんの心に光が差しかけたのに、汚い大人の思惑によって傷を負い、今に至るまで硬く閉ざしてしまったのが悲しいです。
それでも、淳くんと違って、亮さんは淳に怒れるだけの愛情がまだあるんですよね。
雪ちゃんが淳くんを癒す存在なら、亮さんはその熱さ純粋さで諦めに冷たく沈んだ淳を引っ張り上げる存在であると信じてます。
Unknown (Yukkanen)
2016-07-11 22:00:19
ありんこさん
バスケのシーンの文、気に入ってもらえて嬉しいです!
正面からでは無理でも、どこかで繋がっていて欲しい‥素敵ですね。そんなラストが見たいです。

うめやんさん
そうそう、淳は全然抜け出してないですよね。見ないふりしてるだけで‥。
この後亮が心を開いたらまた違うのかもしれません。この話し合いがどういう決着を迎えるのかが楽しみですよね。

宵っ張りさん
淳と亮と、お互い足りないものを補える仲になれるハズだったのに‥。本当スレ違いがもどかしいです。変な軋轢を乗り越えて、互いを認め合える仲になったら良いですね‥。

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