マメに働いてる私である。
2歳児のおんぶにも体が慣れてきた今日この頃である。
いず子さんに、いつ電話してもいないと言われ、何時から仕事に行っているのだと尋ねられた。
「フルの日は、9時から4時までで、半日の時は1時から5時まで」
と答えると、バイトとは思えない勤務時間の長さだと言われた。
そうだよねぇ…最初の話では週に2回、1時から4時までだったんだけどねぇ…(遠い目)
「そんなに稼いで使う暇もないだろう、代わりに使ってやる」
と友人に言われた。
「いえいえ、お気づかいなく」
と私。
たろみさんには、
「これで雪さんは出かけられなくなったんじゃない?」
と言われたが、これも全く心配ご無用なのである。
老後の蓄えも大切だが、やはり足腰が丈夫なうちにあっちこっちに出かけたいという気持ちの方が強い。
下北半島に行って来た。
下北半島といえば恐山である。
小さい頃から“その類のハナシ”が大好きだった私にとっては、長年あこがれ続けていた場所である。
ただ、いかんせん遠いので、なかなか腰があがらなかった。
しかし今行かなければ、この先下北まで運転するのは無理かもしれないと思い、思い切って計画を立てた。
「恐山に行って来るよ」
たろみさんに打ち明けると、彼女は言った。
「誰と?」
「ひとりで愛車を運転して」
「え~っ!? もしつかれたらどうするの!?」
つかれる?
疲れたら?
首を捻っていると、さらに彼女は言った。
「誰に祓ってもらうのよっ!」
ああ、疲れるじゃなくって憑かれるのほうね…と気づいた。
「そんな感じの場所?」
するとたろみさんは、首を左右にぶんぶんと振った。
「全然そんなとこじゃないよ」
というのも、数年前仕事で青森に行ったたろみさんは、1日休みを取ってひとりで恐山に行ったのだった。
行くまではバスの中で
「ひとつ積んでは父のためぇ~」
とか流れてドキドキ感がすごかったそうなのだが、いざ到着してみると、恐い話は大嫌いなたろみさんでも
「あれ?ちょっと違うかも…」
と思うくらいの場所だったというのだ。
だったら大丈夫でしょうと、計画通りひとりで車を走らせた。
↑ 途中の峠
駐車場は車がいっぱいだった。
観光バスも数台停まっていた。
なんだかテーマパークにでも来たような雰囲気である。
たろみさんが言っていたように、おどろおどろしい雰囲気は全くないし、幽霊が出る雰囲気でもない。
本堂にお参りをした後は、順路の札にしたがって歩いた。
硫黄の臭いが漂い、ところどころでガスが吹き出ている。
足場は悪く、ところどころで積み重なっている石を崩さないように気をつけながら歩いた。
こんな北の端まで、みんな何を求めてやってきたんだろうと思いながら歩いた。
ある場所までたどり着いた時、その答えが少しわかったような気がした。
で、恐山といったらイタコなわけだが、なんと思いがけずイタコさんに会ってしまった。
しかも目と目があってしまい
「どうぞ」
と言われ、そんな気は全くなかったのだが、母の霊を降ろしてもらうことになってしまった(汗)
これもご縁である。
結果は…ここでは書かないことにする。
帰宅してすぐ、およ子さんに届けなければならないものがあったので、おみやげを持って行った。
「恐山行ってきたの~」
と言う私に、およ子さんは、自分も行った方がいいものかどうか、ずっと悩んでいたと言った。
「どうだった?」
聞かれたので私は言った。
「イタコはさておき、恐山に行くことを悩んでいるなら行ってみたらいいと思う」
結局恐山に行くということは、亡くなった人を思い出すということだと思う。
戦争で亡くなった人、津波で亡くなった人の霊を慰めるのではなく、ごくごく身近で個人的な人の死を哀悼することだと思う。
そこに幽霊がいるとしたら、それは全く知らない人ではなくて自分の知っている人だろう。
私などと違っておよ子さんは毎日ご主人のことを想いながら生きているに違いないのだけれど、また場所を変えてご主人やご両親のことを想ったら、これまで聞こえなかった言葉が聞けるかもしれない。
だから、迷っているなら行ってもいいと思うと私は言った。
私は今回、ずっと憧れていた場所に立つことができてよかったと思った。
しかも結構歩くので、歩けるうちに来れてよかったぁ~と思った。
↑『霊場アイス』なるものを売っていた。もちろん食べた。
今回のドライブは、恐山以外にもいろいろあって、下北半島をぐるり一周してきた。
↑大間 本州最北端
三沢の寺山修司記念館が思いの外良かった。
入館すると、受付の方に館内の説明をしてもらったのだが、館内の常設展と特別展の他に、正面のドアを出て文学碑まで行くようにと言われた。
「一周10分ぐらいです」
え~っ、歩くんですかぁぁぁ…と声には出さなかったが、胸の中でぶうぶう言った。
言われた通りドアを開け外に出ると、紫陽花の花が咲く林の小道を標識に沿って歩いた。
そしてたどり着いたのは沼を見下ろす小高い丘の上で、文学碑はものすごく大きな本の形をしていた。
本のタイトルは『田園に死す』、開かれたページには寺山修司の短歌が三首刻まれている。
その下にはわんこが!
寺山修司が好きだったというビクター犬だ!
このデザインが本当によくって、私はわんこの隣りに座ってずーっと文学碑を眺めていた。
2泊3日で走行距離は1200キロ。
たぶんこの先、私はこれ以上遠いドライブをすることはないような気がする。
憑かれはしなかったが疲れた。
でも今回もたくさんいろいろなモノを見て、たくさんの人に出会って、美味しいものを食べて楽しい旅だった。
旅の充実感が仕事への活力となる。
明日も子どもをおんぶしてやるぞ!という気力も湧いてくる。
そして次の旅は実はもう計画済みで、ミステリーツアー第2弾になる。
今度はどんなものや人に出会えるだろうかと今から楽しみ。