死なないでいる理由 (角川文庫) | |
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角川学芸出版 |
私の祖母は、90歳半ばですが、一人暮らしをしています。
先日、久しぶりに会って話をすると、こんなことを言っていました。
「往診してくださる医師やケアマネジャーが、私のようになるのが目標っていうんよ」
鷲田清一さんの「死なないでいる理由」の中に、次のような記載があったことを
思いだしました。
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「自立」とは他人の力を借りずに、ひとりで生きられるということではない。
たとえ社会的サービスが充実していても、じっさいに動いてくれるのは機械ではなく他人だ。
人間がひとりでできることはきわめて限られていて、食堂で何か食べるときには、調理するひと、配膳するひとがいるし、音楽に浸りたいときには、曲を作るひと、演奏するひと、ひとが要る。
人間はそういう無数の他人に支えられて生きているのであって、ひとりでできることなどたかが知れている。
と、すれば、「自立」とは、他人から独立していること(インディペンデンス)ではなく、他人との相互依存(インターディペンデンス)のネットワークをうまく使いこなすことを意味するはずだ。
(中略)
独力で生きるのではなく、支えあって生きる。
そのように他人とともに生きることが本当の「自立」であるとするならば、そのためには自分も時に支える側にまわる準備ができているのでなければならない。
なじみのない人ともうまくやっていけるよう自分を鍛えておかなくてはならない。
他人にこまごまと助けてもらいながら、その助けてくれる人を歓ばせて歓ぶことができる。そんな凹凸のうまく噛み合った関係をうまく配置できることが本当の「自立支援」ではないかと思う。
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「インターディペンデンス―「自立」の意味」の記述です。
祖母は、周囲の方が“目標”と言ってくださっていることを受けとめ、
素直に歓んでいるようです。
祖母からは、助けてくれている人を歓ばせようとするゆとりも感じます。
祖母は、医療や介護のサービスを「受ける(される)」立場にありますが、
周囲の方の“目標”であることを意識して過ごすことで、「与える(する)」立場になっているのだと思います。
「インターディペンデンス」のお手本といえるかもしれません。
身内ながら、素敵だなと思いました。