柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

何故、万引きを繰り返すのか?

2011年02月12日 23時58分54秒 | 日記
 親の期待からはずれたことを自覚した段階で、子どもたちは「申しわけない」と思い、自罰感情にさらされるようになる。これが高じると、この罪悪感は反転して、親への攻撃として表現される。「でも私は生まれたくて生まれてきたのではない」「なぜ生んだ」「育て方が悪い」などの言葉が子どもの口から吐き出されるようになるのは、こうしたときである。
 自罰感情が反転して攻撃として表現されないでいると、これはやがて自罰パラノイア(偏執症、妄想性障害)の段階にまで至ることがある。具体的には、過食症少女たちによく見られる窃盗癖はこれに由来している。窃盗→逮捕→処罰される屈辱、という連鎖の中で中核にあるのは、窃盗ではなく、逮捕・処罰なのであって、だからこそ少女たちは「捕まるまで」盗み続けるのである。この場合には、盗んだ店の店主や警察官に呼び出された親たちが屈辱にさらされるという点で、少女たちの復讐心をも満足させている。

斎藤学 『家族の闇をさぐる―現代の親子関係』

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする