くりぃーむソ~ダ

気まぐれな日記だよ。

夢の彼方に(52)

2016-04-08 06:21:08 | 「夢の彼方に」
 サトルは、「大丈夫さ」と言うと、うんしょ、と手を伸ばして、ブロックの縁に飛びついた。一段ずつブロックの山を登っていくと、まだ数段しか登っていないところで、崩れていない大きなブロックが、行く手を阻んだ。
 ブロックは、半分から下が岩で、上が土だった。サトルが登ってきたブロックも、同じように下が岩で、上が土だった。段違いの壁のようになっている左右のブロックには、いずれも細い木が茂っていた。
 サトルは、前のブロックにそっと手を当てると、右側に滑らせた。
 岩と土のブロックは、その大きさに似つかわしくないほどなめらかに動き、細い木が見えるブロックにぶつかると、粉々に砕いてしまった。と、サトルがブロックを動かしたせいで、真上に載っていた岩と土のブロックが、ズドン、と地響きを立てるように落ちてきた。足下も同じ岩と土のブロックだったため、一段ずり落ちただけで、それ以上崩れることはなかったが、サトルは一瞬ヒヤリと凍りついた。真上から落ちてきたブロックがピタリと動きを止めると、ホッと安堵のため息を漏らした。
 砕け散った細い木のブロックは、氷がはじけたように四角い小さな粒となって、下の段へバラバラと滝のように崩れ落ちていった。崩れたブロックの上に載っていた木のブロックが、ストン、ストン、と空いたブロックのすき間を埋めるように下に落ちてきた。壁のようだったブロックが、次々と崩れ落ち、サトルが動かした岩と土のブロックを土台にして、新しく段々に積み上がった。
 サトルは、自分の背の高さになったブロックを、また一段ずつ登り始めた。大きなブロックが行く手を阻んで立ちふさがると、しっかりとブロックの種類を見極めて動かし、足場を作るために必要な最小限のブロックを崩しながら、山を登っていった。
 積木の山を登り始めて、六合目をなんとか過ぎた頃だった。サトルの頭上を飛んでいたトッピーが、急に大きな声を上げた。
「青騎士が来た!」
「えっ――」と、サトルは登りかけていたブロックの上にしゃがんで、下をのぞきこんだ。
 見ると、馬に乗った青騎士が、サトルを追って山に登ろうと、立ちふさがるブロックを、次から次へと長い槍で砕き割っていた。小さく砕け散ったブロックは、ザザーッと耳障りな音を立てながら、滝のようにどんどん下へ流れ落ちていった。上から見ていると、崩れ落ちていく範囲が、大きな波紋を描くようにみるみる広がっていくのがわかった。
「おいおい、なんて無茶なヤツなんだ――」と、トッピーが槍を振るう青騎士を見ながら言った。「このまま、山ひとつ崩しちまう気じゃないだろうな」
「――いけない、逃げなきゃ」サトルは立ち上がると、振り返ってブロックに飛びつき、無我夢中になって、どんどん上に登っていった。
 青騎士は、砕かれて低い段になったブロックの上に飛び移りながら、楽々と積木の山を登ってきた。このままでは、すぐに追いつかれてしまう……と、サトルは後ろを振り返る余裕もなく、ブロックを登り続けたが、いつまでたっても、青騎士が後ろに迫ってくる気配はなかった。

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