備忘録として

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Humble to the end

2015-11-28 23:29:44 | 映画

昨日27日のThe Strait Timesネット版に、上の写真とともに「Setsuko humbled to the end」という短い記事が載った。原節子の死亡記事である。シンガポールの新聞だけでなく、アメリカのNew York Times、Washinton Post、Wall Street Journalや、イギリスのDaily MailやBBC、フランスやドイツや中国やインドネシアなどでも報道されていた。50年以上前に日本映画で活躍し銀幕から消えた女優の死が、これほど海外のメディアで取り上げられたことに驚く。記事のすべてが小津安二郎監督の「東京物語」や「晩春」での彼女の気高く控えめな演技に触れているように、小津監督作品とそれを支え演じた女優が今も世界的に高く評価されているからだろう。以前触れたように「Tokyo Story(東京物語)」は英国映画協会の評論家が選ぶ映画トップ250で3位、監督が選ぶ映画トップ100で1位になっている。先月のプサン国際映画祭でもアジアの監督や評論家が選ぶアジア映画トップ100の1位に選ばれている。(2位は黒澤明監督の「羅生門」)

英国映画協会のランキング

The Critics’ Top 10 Greatest Films of All Time (評論家によるランキング)

1. Vertigo (Hitchcock, 1958)
2. Citizen Kane (Welles, 1941)
3. Tokyo Story (Ozu, 1953)
4. La Règle du jeu (Renoir, 1939)
5. Sunrise: a Song for Two Humans (Murnau, 1927)
6. 2001: A Space Odyssey (Kubrick, 1968)
7. The Searchers (Ford, 1956)
8. Man with a Movie Camera (Dziga Vertov, 1929)
9. The Passion of Joan of Arc (Dreyer, 1927)
10. 8 ½ (Fellini, 1963)

Note: Check out more details and the top 50 on BFI’s official site.

The Directors’ Top 10 Greatest Films of All Time (監督によるランキング)

1. Tokyo Story (Ozu, 1953)
2. 2001: A Space Odyssey (Kubrick, 1968) and Citizen Kane (Welles, 1941) (tie)
4. 8 ½ (Fellini, 1963)
5. Taxi Driver (Scorsese, 1980)
6. Apocalypse Now (Coppola, 1979)
7. The Godfather (Coppola, 1972) and Vertigo (Hitchcock, 1958) (tie)
9. Mirror (Tarkovsky, 1974)
10. Bicycle Thieves (De Sica, 1948)

1963年12月に小津安二郎がガンで亡くなり、その通夜に出席したのを最後に原節子は世間から姿を消す。前年の「忠臣蔵」で大石りくを演じたのが最期の作品となり、これが原節子の事実上の映画界からの引退となった。42歳だった原節子はそれからずっと独り身で鎌倉の家で暮らし世間との接触はほとんどなかったという。 生涯独身だった小津の墓は鎌倉の円覚寺にあり、墓標は”無”とあるらしい。先週、鎌倉円覚寺に行ったのに小津の墓を見逃した。

英文記事で目についたことばを以下に並べる。

  • Those pictures will continue to enchant and move future generations largely because of her presence in (Wall Street Journal)
  • Hara came to represent an ideal of womanliness, nobility and generosity. (New York Times)
  • Donald Ricchie hailed her performance as “marvelously detailed and delicate." (Washinton Post)
  • Ozu once said "However, it is rare to find an actress who can play the role of a daughter from a good family." (Washinton Post)

いずれの記事も映画の中の原節子の気品、やさしさ、女性らしさ、繊細、存在感を絶賛する。

原節子の引退は1962年で、自分はまだ小学校に入ったばかりだから当時の彼女の活躍や人気を知る由もない。はるか後年に観た「東京物語」、「青い山脈」、「わが青春に悔いなし」で知るばかりである。小津の映画も「東京物語」しか知らない。確かに「東京物語」はいい映画だと思った(★4つ)し、老夫婦を気遣い健気で控えめに生きる原節子に共感したが、はるか50年も前に引退し静かに死んでいった女優を世界中がニュースで取り上げ絶賛するほどの理由を知りたいものである。The Strait Times記事のタイトル「Setsuko humbled to the end」は、”節子は最後まで控えめだった”とでも訳すのだろうか。


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