9月8日午後6時、ふくは妻に看取られ息をひきとった。享年14歳、2000年2月29日シンガポール生まれである。カナダにいる長女、仕事中だった次女と長男、シンガポールからの帰国便機中にいた自分は死に目に会えなかった。目が開いたばかりの片手で持ち上げられる頃にペットショップで出会った。若い頃のふくはお転婆で力があり、大好きだった散歩では行先は自分が決めるんだとばかりにぐいぐいとリードを引っ張った。誤ってリードから外れようものなら風のように駆けていった。散歩道で出会う自分より小さな犬には強気で挑発し、大きな犬には甘えるか尻をみせて逃げた。人懐っこくて誰にでもおなかを見せて愛撫をねだった。それでいて気性は激しく気に入らないことがあると誰かれなく牙をむいた。躾のために口輪をすると「はやくはずして!」と鼻を摺り寄せて甘えてきた。繊細で、家族旅行に連れていけず数日預けたペットホテルから戻ってきた時には声がかすれ足腰が立たないほどにやつれていた。ダックスフントは体重が増えると腰を痛めることもありカロリー管理と体重制限をしていた。そのため食事が待ち遠しく、食事時間が近づくと小さく吠えて催促し、食事の準備が整うと狂喜して何度もジャンプを繰り返した。食事を前に「お座り、待て、お手、おかわり」でじらされ、「よし!」の声がかかるやいなや、あっというまに平らげた。幼いころにはフィラリア治療、がん治療、子宮摘出、ダニ治療、狂犬病予防接種も経験した。1年前には生死の境をさまよい何度も病院の世話になったがいつも元気に回復した。若い頃はケージで寝たが、大病をし老いてからは心細いのか必ず誰かの布団にもぐりこんで寝た。帰宅するとしっぽを振りながら真っ先に玄関まで走り出てきて飛びつき何度も何度も顔をなめて家族を愛し、家族の皆から愛されたふくはもういない。
写真はシンガポールの散歩道