原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

朝鮮語に移植された日本語

2015年04月21日 09時44分48秒 | 海外

私は朝鮮語を知らないし、韓国ドラマをほとんど見ないのでごく最近まで知らなかったことがある。偶然に見た韓国製ドラマのセリフに使われた「やくそく」という言葉に反応してしまった。字幕スーパーを見ると「約束」となっている。日本語と同じ言葉を韓国も使うのだな、と思った。同時に漢字の影響で中国由来の言葉なのかなと考えた。しかし、やくそくという発音は日本語そのもの。韓国では表音記号で漢字から成り立っているので中国由来は考えられない。まして中国語の約束に当たる漢字は約定しかない。明らかに約束は日本語由来なのだ。

 

気になって調べてみると、日本語と同じ意味の朝鮮語は結構ある。準備、責任、記憶、契約などなど。似たような発音を含めるとほかにも大量にある。反日というフレーズがあれば国中が一つとなる韓国で、このことに気づいている人はどのくらいいるのだろうか。北朝鮮の事情は分からないが、多分同じなのでは、と思う。

この日本語が定着したのは日韓併合時代(1910年から1945年まで)なのだろう。韓国の人はこの時代を暗黒時代と呼び、ハングルを含め朝鮮文化が否定された時代だと教わっている。だが、事実はちょっと違う。交通網などのインフラを含め、病院や学校が国中に建設された時代である。その証拠は併合前の識字率(昔は文盲率と言った)は10%から80%に拡大。人口は2倍に増えていることでもわかる。ハングル(表音文字)を学校に復活させたのはこの時代の日本の学校である。当然、日本の精神文化も学校で教わる。修身道徳などもその一つ。約束、責任、契約などという日本的精神に基づく言葉もこの時教わった。それが継続されて現代の韓国社会に残った。同じように教育されていた台湾では、今でも日本的精神は大切にされている。が、韓国では全く逆である。日本的なものはすべて否定されている。しかしながら、日本由来の道徳的言葉が今でも韓国社会に残っているというのは、いかにも皮肉ではないか。

1910年以前、かの国では約束とか責任という言葉さえなかったという事実には少なからず驚く。多分、似たような言葉はあったのではないかと思うが、基本的にあまり重要ではなかったとことは間違いない。どうしてこれで日常が過ごせたのか不思議に思う。調べていくと、面白い説にであった。

「儒教文化の国には対等という概念がない。故に対等な関係で約束するということもない。命令と服従あるいは反逆だけで人間関係ができていた」

一割の支配貴族(両班)と九割の奴隷社会で成り立った李王朝の文化をしみじみと感じさせる。約束とか責任とかという現代では普遍的な精神文化が、この国では1910年からはじめて養成された。つまり20世紀後のことなのである。竹島問題や慰安婦問題、最近では仏像盗難事件、産経新聞ソウル支局長の出国停止問題などなど、日本人には違和感しか覚えない彼らの考え方の根本が少し見えてくる。

(1904年頃の崇礼門の風景。日韓併合できれいに整備された)

そんな折も折だ。今年の4月10日にソウルの市議会は仰天的決議をした。「ソウル市の文書や日常生活に残る日本由来の漢字語や日本式の表現を正しい韓国語表記に直す」というのである。始末書は経緯書、残飯は残った食べ物、食費はご飯の値段、となるとか。ソウルというところはよほど暇な役所ということなのか、いやはや、である。

歴代大統領の哀れな末期だけでなく、現在でもいろいろな問題を抱える韓国。セウォル号転覆事件も解決せず、献金疑惑で揺れる現内閣閣僚たち。経済不況に打つ手なし。反日運動だけが心のよりどころなのかもしれないが、酸素、水素、家族、病院、民族、化学、民主主義、協会などなど、日本式の漢字語を今後どうするというのだろうか。

*巻頭の写真は2006年に撮影された崇礼門(俗称南大門)。2008年の腹いせによる放火で楼門は焼失。2013年に復元。


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