原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

今年のシジュウカラ

2015年05月26日 08時08分27秒 | 自然/動植物
5月に山に入って、最初に出会ったのがシジュウカラ。北海道では普通に観賞できる野鳥で、毎年のように見かけているのだが、これまで意外に写真は少なかった。出会うタイミングが悪かったのかもしれない。今年は最初の野鳥がシジュウカラ。ということは、これからたくさん出会うことができるということなのだろうか。せっかくだから、シジュウカラの生態を少し勉強してみた。意外な一面を持つ野鳥であることがちょっぴりと分かった。

胸にネクタイをつけたような独特の模様が特徴的な鳥だ。幅の広いネクタイをしているのが雄で、狭いのが雌。これで見分けができる。冒頭の写真は雄。雌は近くにいたのだが撮りそこなった。
この鳥につけられた奇妙な和名『シジュウカラ』の由来が気になる。四十雀と表記される。ゴジュウカラ(五十雀)という別の鳥がいるので、数字が名前の由来かと思われがちだが(一説には四十羽分の価値のある鳥とか)、どうやら違うらしい。この鳥の地鳴きは実に多くあり、その中にシジュウ、シジュウと聞こえる鳴き方がある。ここからシジュウカラという名前がついた。カラは鳥一般の呼び名であり、シジュウと鳴く鳥という意味からシジュウカラとなったということだ。
鳴き声は確かにいろいろ聞いた。体長15センチほどの小さな身体のわりにその声はよく響く。「ツツピー、ツツピー」「ツピー、ツピー」「ツッピン、ツッピン」もある。基本の地鳴きは「チッ、チッ、チッ」。耳を澄ますとよく聞く声だ。時折「ジー、ジー、ジー」とか「ジュク、ジュク、ジュク」と鳴く時がある。これは危険が迫っていることを知らせる声で、巣の近くに近づくと、こういう警戒音を発する。猫や犬が巣に近づくと子供を守るために鳴くらしい。こんな時は、できるだけ早めに去ったほうが彼らのためだ。


見かけは可愛らしい鳥だが、以外に獰猛な一面をも持っている。小さなくちばしは木の実を簡単に割る力を持っている。そのくちばしで冬眠中のコウモリの頭を砕いて脳を食べてしまうとか。これは、彼らの習性なのだから残酷という言葉は当てはまならない。イルカの囲い込み漁を非難する欧米の常識と一緒になってしまう。
習性と言えば彼らには求愛給餌というものがある。繁殖前に雌は雄に対してひな鳥のような声で甘えのポーズ(翼をばたつかせる)をする。これを見た雄は要求に応じるために食物を探し出し、雌にささげる。諸説はあるのだが、貢物で雄の品定めがされるという話だ。なんとも身につまされる。男はつらいね、という寅さんの嘆きが聞こえる。一説ではこのおかげでお産から子育て時の栄養源(雌の)になるとも言われてはいるが。
雄と雌の違いで面白い研究がスウェーデンでされていた。報告によるとシジュウカラの場合、雌の方が断然記憶力がいいらしい。鳥の脳と言えば小さくて使い物にならない喩に使われるのであるが、少なくても雌のシジュウカラはこれには当てはまらない。男にとって、これまた身につまされる話だ。


野生のシジュウカラの平均寿命は1.7年とか。北国の厳しい気候と天敵に襲われるというアクシデントが常にあるからだ。野生の日常は見た目ほどゆるくはない。今、けたたましく声を張り上げる彼らの多くは2年後にこの世に存在していない。そう思って聞くと、何となくもの哀しくもある。うまく天敵から逃れた幸運児は7年から10年は生きられる。無事を祈りたい。


シジュウカラ:スズメ目、シジュウカラ科。学名・Parus minor。和名・シジュウカラ
分布・日本を含む東アジア・ロシア極東に分布。その他のユーラシア大陸や北アフリカに生息する鳥はシジュウカラの近縁種で学名のParus minorと名づけられている。アジアのシジュウカラはJapanese TitとかOriental Titと呼ばれる。

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