原野の言霊

風が流れて木の葉が囁く。鳥たちが囀り虫が羽音を揺らす。そのすべてが言葉となって届く。本当の原野はそんなところだ。

天使か悪魔か、コウリンタンポポ

2015年07月14日 08時57分45秒 | 自然/動植物
七月の声を聞くと、北海道の緑の原野は紅い色で覆われる。コウリンタンポポの群生だ。春先の黄色いタンポポから緑の野へ、そして紅い色へと変遷する様子はなかなかにドラマチックでもある。しかしながら、子供の頃の記憶にはこの花はまったくない。想像通りの外来帰化種であった。日本に持ち込まれたのは明治期の中ごろだという。いつの間にか日本全国で見られるようになった花であるが、ことのほか北海道が性にあっていたらしい。在来種のごとく今では道内のどこでも見ることができる花となった。

花の形がタンポポに似ているので紅輪蒲公英(コウリンタンポポ)の和名がついた。原産地はヨーロッパとか。寒い北海道で自生できたことからも北ヨーロッパ生まれであることは想像できる。面白いのはその学名。正式名はHieracium aurantiacumL.であり英名がOrange flowered hawkweed。Hieraciumはギリシャ語で鷹に因んだ名前。そして英名にもhawkweedと、鷹(hawk)が入っている。直訳すると鷹の草となる。この花と鷹はどういう関係があるのだろうか、ちょっとばかり気になって調べてみたが、ほとんど記述されたものがない。英語のhawkには鷹という意味のほかに、強欲とか他人を食い物にするという意味もある。この花の強い繁殖力がその名前にあるのかと想像したが、どうもしっくりこない。花言葉を聞いてヒントをもらった。この花の花言葉は「眼力」「めざとさ」である。花びらを正面から見て気付いた。鷹の目の瞳孔とよく似ているのである。ヨーロッパの先人たちはこの花を見て鷹の目を想像したのではないだろうか。全くの私見にすぎないのだが、何となく納得している。



コウリンタンポポにはもう一つの別名もある。エフデタンポポとかエフデギクというのである。首の長い立ち姿が絵筆を思わせるからその名がついたらしい。なかなかに優雅なネーミングだ。この名前も外国の影響で生まれていた。アメリカに導入された時につけられた名前が「ビーナスの絵筆」。そこからエフデタンポポの別名が付けられた。ところが、アメリカではこの花のあまりに強い繁殖力のためにいつしか「悪魔の絵筆」と呼ばれるようになったことは意外に知られていない。天使から悪魔に変わっているのである。このことも我々は記憶にとどめておくべきなのだろう。



北海道ブルーリストにも記載されているコウリンタンポポ。その無制限な繁殖にはやはり注意すべきなのかもしれない。同じ帰化種でキバナコウリンタンポポがあり、こちらの繁殖力はさらに強い。ただ美しいと愛でるだけでなく、自然界に正しい目を向ける必要を感じる。自然界を天使にも悪魔にも変えるのは、人間なのだから。

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1 コメント

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豆しば まるこ の まったり生活 (丸子のおかーさん)
2017-08-29 20:22:06
勝手にリンク張ってしまいました。

コウリンタンポポを調べて、詳しく書いてあるので・・
私も北海道生まれで今も北海道なのですが、初めてみたと思います。 可憐でかわいい!!
しかし、繁殖力つよいのですね。これからどんどん増えるのかしら?

リンクだめでしたら、コメントをお願いします。

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