A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

偶然一緒に演奏したのかきっかけで、2人のソウルエネルギーが全開へ・・・

2017-01-10 | CONCORD
Soular Energy / The Ray Brown Trio featuring Gene Harris

毎年8月になるとサンフランシスコに程近いコンコルドの街にはジャズミュージシャンが集まる。街の郊外にあるパビリオンで開かれるコンコルドジャズフェスティバルに参加するためだ。
規模が大きくなるにつれて、西海岸だけでなく東海岸や遠く海外から、日本からも北村英治が参加するようになった。ここでのステージの模様はライブアルバムとして毎年のようにコンコルドレーベルでリリースされ、会場に出向いたファンだけでなく、世界中のファンが楽しむことができた。また、その機会を利用してスタジオでの顔合わせセッションも開かれ、これも数多くアルバムとなって世に登場した。

自分のレーベルの所属ミュージシャンを中心にフェスティバルの毎年の出し物を考えるのはオーナーであるカールジェファーソンの楽しみであり、特権でもあった。1984年のフェスティバルのプログラム構成を企画していたジェファーソンが、何においても彼の片腕であったレイブラウンに、「今回はアネスティンアンダーソンにすべてブルースを歌ってもらおうと思う、メンバーを考えてくれないか」と、相談を持ち掛けた。

レイブラウンはすぐに、ピアノのジーンハリスを思い浮かべた。
というのも、少し前にレイブラウンはハリスに頼まれて2日間ハリスのセッションに付き合って、その縁で一緒にアルバムも作ったからであった。

お互い50年代からジャズ界で活躍してきた2人だが、共演したのはそれが初めてだった。というのも、ハリスは70年代には第一線を退きアイダホ州のボイセという地方都市に引き籠り、地元のホテルでピアノを弾いていた。ボイセはアイダホ州の州都とはいえ人口は20万人ほど。黒人が極端に少ない田舎町。ジャズ界との接点はほとんど無い場所だった。その地ででハリスはジャズだけでなくブルースからカントリーまで日替わりで何でも演奏している毎日だった。

レイブラウンと初めてプレーしたハリスは、久々にジャズのエネルギーが体内に蘇った。一方のレイブラウンはハリスのソウルフルなピアノの躍動感を一緒にプレーすることで体感した。ブラウンは数え切れない程のミュージシャンとの共演経験があるが、この感覚はあのミルトジャクションと一緒にプレーする時と同じだと感じ、早速ハリスを連れてニューヨークに行った。そのミルトジャクションと一緒にアルバムを作るために。
1983年12月のことであった。

その印象が強く残っていたブラウンは、ジェファーソンからの依頼を受けると、早速ボイセにいるハリスに参加を求め、一緒にフェスティバルのステージに立つことになった。

このアネスティンアンダーソンのブルース特集はステージでの演奏だけでなく、別にスタジオでアルバムを作ることになった。サンフランシスコのCoast Recordersスタジオにメンバー達は三々五々集合した。その時のアルバムが、先に紹介したアネスティンのアルバム”When the Sun Goes Down“である。

このアネスティンのレコーディングの準備を行っている最中、トリオの面々はせっかくだから自分達のアルバムも作ろうということになった。特にレコーディングの準備をしている訳でもなかったが、そこは臨機応変に対応できるジャズの良さ。リハーサルもなくスタンダード曲を次々と演奏し始めた。ライブでも初顔合わせの面々が簡単な打ち合わせでセッションを繰り広げるが、そのノリでこのレイブラウントリオのアルバムが誕生した。

過去にブラウンはオスカーピーターソンのトリオで、そして一方のハリスはスリーサウンズでピアノトリオでの演奏には手慣れた2人、レギュラートリオのように次々と曲をこなす。
ドラムはジョーウィリアムスのバックをしていた新人のゲーリックキングを起用したが、2人が引っ張るトリオに複雑なリズムやバックはいらない、ステディなドラムングがかえって効果的だ。
普段もう少し早いテンポで演奏されることが多いTake The A Trainをゆったりとしたテンポでスイングさせるところなどは、即席のトリオとは思えないコンビネーションだ。



ライブでのセッションも、演奏が興に乗じてくると飛び入りの参加で盛り上がる。ここでもアネスティンアンダーソンの録音にスタンバイしていたテナーのレッドホロウェイが加わる。そして、何と自分のアルバム(先日紹介したCatwalk)作りに来ていたギターのエミリーレムラーも加わって一緒に大ブローを披露している。
この曲だけはレイブラウンがヘッドアレンジで曲を提供。思いっきりアーシーな演奏に、レムラーのギターもデビュー当時のモンゴメリーライクなブルージーな演奏となる。自分のアルバムでの演奏と比較すると同じプレーヤーとは思えない。

コンコルドの常連であり重鎮のレイブラウンはこれまでトリオの時はモンティーアレキサンダーなどと組むことが多かった。今回、ハリスとは余程相性が良かったのだろう、これを機に2人のコンビのレイブラウントリオがスタートする。
ハリスにとっても、ちょっと歌伴のお手伝いという感じの参加のはずだった。だが、これがきっかけでコンコルドの看板スターに返り咲き、ジャズ界でのセカンドステージが始まった。何がきっかけで人生の大きな転機を迎えるか分からないものだ。

コンコルドのアルバムは総じて録音が良いが、このアルバムのハリスのピアノのタッチと、レイブラウンの重低音のベースが絡み合う迫力は、演奏だけでなく録音も格別だ。

1. Exactly Like You    Joe Burke / Dorothy Fields / Jimmy McHugh 5:47
2. Cry Me a River                 Arthur Hamilton 5:46
3. Teach Me Tonight            Sammy Cahn / Gene DePaul 4:51
4. Take the "A" Train                Billy Strayhor 6:20
5. Mistreated But Undefeated Blues            Ray Brown 4:16
6. That's All               Alan Brandt / Bob Haymes 5:48
7. Easy Does It         Count Basie / Sidney Keith Russell 4:03
8. Sweet Georgia Brown  Ben Bernie / Kenneth Casey / Maceo Pinkard8:45

Gene Harris (p)
Ray Brown (b)
Gerryck King (ds)
Red Holloway (ts) #5
Emily Remler (g)  #5

Produced by Carl Jefferson
Engineer : Pill Edwars
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, August 1984
Originally released on Concord CJ-268

Soular Energy
クリエーター情報なし
Concord Records
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レギュラー活動での成果をオーナーの前でお披露目に・・・・

2017-01-07 | CONCORD
Catwalk / Emily Remler


世間では正月休みも終わり日常のペースに戻りつつあるが、どうも仕事を辞めるとなかなか日々のペースが作れない。このまま毎日が日曜日の生活を過ごすわけにはいかないなと思っていたら、昨日、高齢者の定義を75歳からに変えるというニュースが流れていた。

高齢者かどうかの自覚は個人差が大きいとは思うが、まずは健康であることが何にも増して大事な事であろう。自分はこれまで大きな病気知らず、怪我知らずで、幸い医者とはあまり付き合わずに過ごせてきた。今後は、少しは健康に留意しなければと思うのだが、それにはまずは規則正しい生活(食生活を含めて)のリズムを作ることが先決だろう。一年の計は元旦にありと言われるように、ちょうど1月は一年の節目、今月中に何とかしたいものだ。

初詣に続いて、初打ち、初ライブはとりあえずどちらも済ませたが、初打ちは散々な結果に。新年早々、間違いなく今年のワーストを記録した。この悪いイメージを払拭するためにも、仕切り直しが必要だ。

初ライブはトロンボーンの向井滋春、久々にライブを聴いた。昔はフュージョン系が多かった記憶があるが、今回はメインストリーム。同じ世代だが、プレーぶりも元気だし、チェロを弾いたりチャレンジ慾も衰えていないようだ。
奥様のボーカルありの楽しいライブであったが、この日の大収穫は初めて聴いたアルトの加納奈美。若手の女性サックスは次から次へと登場しているが、彼女の堂々としたプレーはベテラン揃いの他のメンバーに囲まれた中では貫禄さえ感じた。若手だけの演奏はなかなか聴く機会が無いが、このようにベテランの中に混じってくれると出会う機会も増える。今後が楽しみ。

さて、アルバムの方はコンコルドの続きを・・・。
今回の主役はギターのエミリーレムラー。コンコルドはギターのアルバムが多いが、ベテラン勢に混じって新人も多い。その中ではこのレムラーが一歩抜きに出た活躍を残した。

最初は、クレイトンブラザースのアルバムに参加し、すぐにハンクジョーンと初のリーダーアルバム”Firefly”を作る。モンゴメリーの影響を受けたというメインストリームのプレーを。
続いて今度はジェイムスウィリアムスのピアノをバックに若々しさを前面に出した”Take Two”

3作目”Transitions”は自分のグループ
で、コンテンポラリーなサウンドをアピール、といった感じで一作ごとに進化を感じさせるものだった。

そして、この4作目。
今度はどのように変容したかが楽しみだが、前作の録音から9カ月後。メンバーは前作と同じとなると、これまでのように大きな変化があるとは思えなかったが・・・。
彼女の活動の拠点はニューヨーク。ニューヨークではこのメンバーでレコーディングだけなく、日頃のライブ活動も続けてきたレギュラーグループになっていた。

レギュラー活動を続けると4人のコンビネーションは一段と良くなる。トランペットのJohn D'earth。決して有名ではないが、バディーリッチやサドメルといったビッグバンド育ち。ミュートプレーやモジュレーターを使用した多彩なサウンドを屈指した多彩なプレーを聴かせてくれる。
ベースのエディーゴメスはビルエバンスとの共演で鍛えられたコラボ上手。
そしてドラムのボブモーゼズも普通のドラムセット以外のパーカッションも駆使して多様なリズムを刻む。
この4人のコラボレーションが一段と進化したコンテンポラリーなグループサウンドなったということになる。
このアルバムはその成果の発表となった。

そして、この録音はこれまでのようにニューヨークではなく、4人をわざわざ西海岸に呼び寄せカールジェファーソン自ら陣頭指揮での制作となった。
とはいっても中身は、彼女自身がプロデュースした前作同様彼女に全面的に任せたので、期待の新人のオーナーの前でのお披露目の場となった。



1. Mocha Spice      Emily Remler 4:26
2. Catwalk        Emily Remler 7:19
3. Gwendolyn       Emily Remler 4:35
4. Antonio        Emily Remler 4:25
5. Pedals         Emily Remler 6:54
6. Five Years       Emily Remler 5:48
7. Mozambique      Emily Remler 7:44

Emily Remler (g)
John D'earth (tp)
Eddie Gomez (b)
Bob Moses (ds,per)

Produced By Carl Jefferson
Engineer : Phil Edwards
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, California. August 1984
Originally released on Concord CJ-265

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期待の新人であったが、3枚目のアルバムで早くも大きくステップアップして新境地に・・・

2015-04-12 | CONCORD
Transitions / Emily Remler

4月は学校でも会社でも新人が目立つ季節。右も左も分からない新人が先輩の後について新しい環境で生活を始める。何の世界でもそうだとは思うが、見よう見まねで始めてしばらくして慣れた所で次のステップに引っ張り上げるのは先輩達の役目。結果的に新人が育つかどうかは最初についた先輩の良し悪しに因るところが大きいものだ。

コンコルドにデビューした女性ギタリスト、エミリーレムラーは2枚のアルバムを出して着実に成長していた。最初のアルバム"Firefly"では大ベテランハンクジョーンズのピアノトリオをバックに、ウェスモンゴメリーが大好きだという彼女のオーソドックスな男勝りのプレーが聴けた。未知数である新人のまずは実力の一端を披露といったところだ。

そして、2枚目の"Take Two"ではピアノが当時売り出し中のジェイムスウイリアムスに替わる。よりメンバー全員の若々しさを前面に出した演奏になった。ここでは、新人達の明日に向けてのやる気を感じる事が出来た。
そして3枚目のこのアルバムは、まさにホップ・ステップ・ジャンプ。新人を卒業して独り立ちできるかどうかの見極めとなった。結果は彼女が熟考を重ね、自らメンバーを選び、そして編成したグループでの演奏となり期待通り大きく飛躍することができた。

この頃のコンコルドではアルバム作りにミュージシャンの意向を大きく取り入れ、場合によってはミュージシャン自身にプロデュースを任せるアルバムも多くなっていた。ここでもジェファーソン自らのプロデュースであったが、中身に関しては全面的にレムラーに任せた。ジェファーソンの大英断が、レムラーの飛躍を手助けする事になった。

ギター好きのジェファーソンは、ベテラン達には自由に演奏させていたが、これはミュージシャンの個性あふれるプレーの良さを引き出すため。しかし、若手となると、レムラーはコンコルドの秘蔵っ子でもありあれこれ注文を出したい所であったと思う。しかし、自由にさせたということは、これを機に一気に彼女のやりたい方向に進むことを後押しし、独り立ちさせようとした親心が勝ったのであろう。

このアルバム作りのすべてを任されたレムラーはまずは6か月間ニューオリンズやニューヨークでの仕事がある時以外はバージニアに引き籠ってこのアルバムの構想をあれこれ練り直した。そして、今までのスタイルやメンバーもすべてリセットして再スタートすることにした。

まず始めにやったことはグループの編成からピアノを外したこと。というのも、自分のギターでコード進行を考える時にピアノはかえって邪魔になったという。当然コードワークは自分のソロのためというよりも他のソロのバックのためだが、ソロのバッキングも彼女は好きだったそうだ。そして、グループのソロ楽器として選んだのがトランペット。結果的に、このワンホーンとギタートリオが彼女の望む編成であった。

トランペットには、バディーリッチやライオネルハンプトンのオーケストラのメンバーにも加わり、サドメルにも参加した事のある若手のジョンディアースを選んだ。そしてベースにはビルエバンストリオで活躍したエディーゴメツ。ドラムのボブモーセズもゲイリーバートンやラリーコリエルと演奏をしていた新感覚のドラマーだ。

丁度このアルバムが録音された80年代の初めは、メインストリームからフュージョン、そして新主流派といわれたモダンなサウンドが入り乱れていた時代。どんなスタイルでも受け入れられた時代であったが、彼女は自分の演奏の軸足をモダンなサウンドにリニューアルしたことになる。この頃、レコーディン以外では、彼女はアストラッドジルベルトのグループに加わる事が多かった。そしてプライベートでは、ピアノのモンティーアレキサンダーと此の頃結婚していた時期である。



アルバムの一曲目のこの”Nunca Maisd”でいきなり聴けるように、演奏スタイルや曲作りにはその影響が大いに感じられる。オリジナル曲以外にはキースジャレットの曲をやったかと思えば、サムジョーンズがキャノンボールアダレイのグループで演奏したファンキーな曲も取り上げている。
彼女はどちらもオリジナルを聴いた事が無かったという、どちらも素材としての良さから選曲しただけで、演奏はオリジナルに影響されることなく、自分のスタイルに自信を持っていたということに他ならない。

モダンスイング系のイメージが強かったコンコルドだが、新人達がこんな新しい感覚のアルバムを作ることができたのは、オーナー&プロデューサーであるジェファーソンの度量の広さだろう。
コンコルドのアルバムに名盤といわれるものは少ないが、駄作が少ないのも頷ける。

1. Nunca Mais                 Emily Remler 4:56
2. Searchin' Steve            Allen / Duke Ellington 6:08
3. Transitions                  Emily Remler 7:56
4. Del Sasser             Sam Jones / Donald Wolf 6:44
5. Coral                     Keith Jarrett 6:07
6. Ode to Mali                  Emily Remler 4:41

Emily Remler (g)
John D'earth (tp)
Eddie Gomez (b9
Bob Moses (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Ed Trabanco
Recorded at Mastermind Studio, New York, October 1983
Originally released on Concord CJ-236

Transitions
クリエーター情報なし
Concord Jazz
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ジャズの世界も女性陣の活躍が目立つが、ギターとなると・・・・

2014-02-19 | CONCORD
Take Two / The Emiley Remler Quartet

いやいや凄い雪でした。
好きなゴルフもしばらくお預けですが、これだけ雪の休業が続くと、除雪の費用が掛かる一方で、収入は日銭に頼っているゴルフ場は経営的にも厳しい所が出てくるのではないかと案じてしまう今日この頃です。

それにしても、今回の大雪対応では色々な事が起こっているようです。
政府の初動が遅れたとか、山梨県では大雪警報では災害対策本部の設置はしない決まりになっていたとか、秩父市が要請した自衛隊派遣を県が断ったとか、NHKがオリンピックの放送を優先し災害報道をしなかったとか・・・・・。
一方で、配送用のパンを被災者に配ったヤマザキパンが賞賛され、石和ではボランティアチームが市内の道路に閉じ込められていた車の誘導、情報提供に大活躍し、その模様をツキャスでライブ中継して話題になっていました。雪に閉じ込められていた車は、山道や高速だけでなく、市内にも見捨てられてたくさんあったということです。

これらの事象は一言でいえば、想定外の事が起こった時に、本来やるべきことに対して組織は何も機能しなかったということです。もちろん、現場にいる人は歯がゆい思いをしたと思いますが、ルールがすべてに優先、指示がなければ動けない、勝手に動けば処罰されるという今の時代の象徴的な事象です。

今や、どの業界でも配送業務などはすべて外部委託の時代、ヤマザキパンのような配送車はたくさんあったと思いますが、積み荷はすべてお客さんから預かった大切な物。ドライバーの勝手は判断で配ることなど絶対にできないのが現実だと思います。ヤマザキパンの行為が誰の判断でされたか興味があるところですが。いざという時は現場の裁量に任されていたのであれば素晴らしいことです。

一方で、ボランティアの勝手連の連携は素晴らしかった。現場で実際に作業をしているメンバーに対して、必要な的確な情報はツイッターで読者から適宜提供されるという姿は緊急時のSNSの使われ方としてはまた新たなモデルができたような気がします。

これを支えたのは現場の裁量と事実情報の正確な把握と提供。今回のように「現場で困っている人を助ける」という単一目的に対しては、大組織を動かさなくとも対応できる人がネットワークを組めば実現できるということを立証したような気がします。

お役所がよく防災や地域コミュニティー活動におけるICT利用の施策をやっていますが、なかなか成果に結びつきません。ツールありきで、それに人の動きを合わせようとしても大体うまくいきません。運用にも複雑なルールが伴うもの原因の一つです。一方で、やるべきことが明確で、やるべき人が居さえすれば仕組みは複雑な必要がなく、現場の裁量で物事が進むということになるのは自明の理なのですが。現場の責任感も自然に昔の時代に戻ります。

という訳で、前段が長くなったので、本題に戻ることにする。コンコルドのニューヨーク録音が続く。

最近ジャズの世界も女性陣の活躍が目覚しい。昔は女性のジャズプレーヤーといってもボーカルかピアノが通り相場であったが、最近は管楽器が目立つ。ビッグバンドでもベテラン男性に混じって女性の姿を見受けるのが当たり前になってきている。ライブではむさくるしい男性よりも女性の演奏する姿はビジュアル的にも楽しさが倍増するので嬉しいが。

このように、女性プレーヤーが当たり前になってきても、不思議と女性のギタリストにはなかなか巡りあえない。最近の若いグループは良く知らないが、これまでお目にかかったことはないし、思い出すことはできない。
最近のブラスバンドは女性陣の活躍が目覚しいらしいので、ブラス陣の女性進出は理解できるが、ギターとなるとやはりロック系からの流れになるからなのか?

こう思っているのは自分だけかと思い、ネットを見たら同じような疑問を持っている方がいるようで、やはり認識は正しかったかのと一安心。


ギターが充実しているConcordであるが、ここではうら若き女性ギタリストがデビューしていた。もちろん女性のギタリストが少ないのは日本だけでなくアメリカでも同じなので、今思えばこのエミリー・レムラーのデビューは衝撃的だったかもしれない。

ファーストアルバム”Firefly”でも新人とは思えない演奏をしていたが、早速第2作が続いて出た。今回は、彼女の本拠地ニューヨーク録音、メンバーも新進気鋭の若手との共演だ。彼女が選んだのかもしれない。

ピアノは、自己の素晴らしいアルバム”Arioso Touch”を制作したジェームス・ウィリアムス。前作がハンクジョーンズだったので、これだけで両方のアルバムの違いに興味が湧く。
ベースは、ドン・トンプソン、ドラムはテリー・クラークというと、これは当時のジムホールトリオの面々。バックは完璧だ。

実はレムラーと、トンプソン、クラークはレムラーがトロントに行ったときに、連日gigを行ったプレー仲間だったそうだ。それ故、演奏に一体感を感じるのはそのような布石があったからなので不思議はない。

いきなり、キャノンボールの曲からスタートするが、選曲もA面はブルーベック、ゴードン、タイナーの曲と、すべて有名ジャズメンのオリジナル。このような選曲も珍しいが、演奏は素晴らしい。ある時は流れるように、そしてある時は煽る様なバックは、否が応でもレムラーのプレーは高揚してくる。ウェス・モンゴメリーに影響を受けただけあって、時にはオクターブ奏法も交えて縦横無尽、男勝りの演奏だ。弱冠24歳の女性のプレーとは思えない。B面では自分のオリジナル曲を2曲、そしてモンゴサンタリアにモンティーアレキサンダーと少し曲想を替えた側面も見せてくれる。

久々に聴いたが、これも良いアルバムだ。彼女が今生きていたら大ギタリストになっていたと思う。彼女のようなお手本がいると、女性のギタリストももっと増えていたかもしれない。



1. Cannonball          Cannonball Adderley 4:48
2. In Your Own Sweet Way    Dave Brubeck 4:52
3. For Regulars Only      Dexter Gordon 6:43
4. Search for Peace       McCoy Tyner 5:17
5. Pocket Wes          Emily Remler 6:45
6. Waltz for My Grandfather   Emily Remler 6:35
7. Afro Blue        John Coltrane / Mongo Santamaria 2:24
8. Eleuthra           Monty Alexander 6:20

Emily Remler (g)
James Williams (p)
Don Thompson (b)
Terry Clarke (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Ed Trabanco
Recorded at Soundmixers, New York June 1982
Originally released on Concord CJ-195

Take Two
Emily Remler
Concord Records
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今では女性のジャズプレーヤーも多く見受けるが、当時はまだまだ珍しかったのでは?・・

2012-04-13 | CONCORD
Firefly / Emily Remler 

81年4月またまたConcordに新しいギタリストが登場した。ただしこれまでのベテランではなく若者。それもジャケットを見ての通り初々しさの残る女性。女性のギタリストというのも珍しかった。
Concordはテナーのスコットハミルトンを誕生させたが、彼の場合は初々しさというよりも若くして老練さを感じさせるものであった。ギターではグラントガイスマンのアルバムがあったが、久々の新人ギタリストの登場だ。
このアルバムが彼女の初リーダーアルバムということもあり、今回聴き直すにあたって、彼女のキャリアをじっくりと読み返してみた。

彼女はバークレーの出身。10歳でギターを始めた早熟な彼女は18歳でバークレーに入り’76年には年上の男性同級生を差し置いて早々に卒業したそうだ。そして彼女が仕事の場所として選んだのはニューオリンズ。地元で活躍を始めた彼女をニューヨークに紹介したのはナンシーウィルソン。彼女のカーネギーホールでのコンサートに彼女を招いたことで、彼女の名前が世に知られるようになった。そして、ハーブエリスがニューオリンズを訪れた時、彼女がエリスにレッスンを頼み、その3週間後にはエリスと一緒に’78年のConcord Jazz Festivalの舞台に立っていたという「シンデレラ」振りであった。

このアルバムでも聴けるように、彼女は、デビュー当時はウェスモンゴメリーの影響を受けたストレートアヘッドな演奏スタイル。ベテラン達の中に入っても全く違和感が無かった。ニューヨークに出た彼女は、クレイトンブラザースのアルバム制作にも招かれ、エディゴメツなどとプレーをする一方で、アストラッドジルベルトのバンドにも加わっていたというのがこのアルバムまでの経歴。

そして、彼女の初アルバムとなるわけだが、Concordで彼女を迎えたのは大ベテランピアノのハンクジョーンズ、番頭格のドラムのジェイクハナ、それにボブメイズのベースというお歴々。彼女のメインストリームな演奏を支えるには最高のメンバーだ。
演奏する曲も師としていたモンゴメリーの曲以外にも、スタンダードあり、オリジナルあり、ホレスシルバーやマッコイタイナーの曲に、ボサノバありで、初アルバムで彼女の実力を遺憾なく発揮している。ベテラン達に囲まれて、81年の録音とは思えない、20年前にタイムスリップしたような演奏は、やはりConcordならではのアルバム作りだ。そのジェファーソンの想いに、彼女も100%応えている。

順風満帆のスタート切った彼女であったが、バップスタイルの演奏をConcordで続けた後、コンテンポラリーな演奏に変身していく。そして麻薬にも手を染め32歳の若さで亡くなってしまう。今生きていれば、きっと大ベテランのオールマイティーな女性ギタリストであったと思う。残念。




彼女の語るスイングするギターの秘訣は・・・



1. Strollin'             Silver 5:29
2. Look to the Sky          Jobim 5:23
3. Perk's Blues            Remler 4:06
4. The Firefly             Remler 4:05
5. Movin' Along            Montgomery 5:30
6. A Taste of Honey          Marlow, Scott 2:09
7. Inception              Tyner 5:09
8. In a Sentimental Mood        Ellington, Kurtz, Mills 7:48

Emily Remler (g)
Hank Jones (p)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)

Carl Jefferson Producer
Phil Edwards Engineer, Remixing
Recorded at The Coast Recorders, San Francisco, California April 1981

Originally Released on Concord CJ-162



Firefly
Emily Remler
Concord Records
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今ではBIG BANDを率いる2人だが・・・・

2011-12-21 | CONCORD
It’s All In The Family / The Clayton Brothers




Concordのアルバムのたな卸しも丁度「クレイトンブラザース」のアルバムの順番になったら、奇しくもこの2人はビッグバンドを率いて只今来日中。自分も今晩のブルーノートのライブに行く予定をしている。このアルバムの録音時にはまだ20代だった2人だが、月日の経つのは早いもの。今では兄のジョンクレイトンは60歳の還暦目前だ。円熟のプレーを聴かせてくれるであろう。



今年は、ビッグバンドは当たり年。ベイシー、エリントンに加えて、マシューズ、ゴードングッドウィン、VJOに加えて、このクレイトンのオーケストラで締めるとは嬉しい限りだ。日本のビッグバンドも定期的に結構多くのバンドが活動している。まだ聴けていないバンドも多く、これは来年に持ち越しだ。いずれにしても、これだけ多くのビッグバンドを聴ける環境にある東京は最高だ。田舎暮らしにも憧れるが、こればかりは東京にいないと楽しめない。

丁度このアルバムを最初に聴いていた頃は80年代に入ってすぐ。いわゆるコルトレーンの影響を受けたプレヤーが多く出てきて、一方でフュージョンも流行に。若手の図太い音を出すよくスイングするサックス奏者にはなかなか巡りあえず、最初のアルバムは印象に残る一枚であった。全体のサウンドはいわゆるコンコルドサウンドと較べると多少荒っぽく泥臭い感じがしたが、これもクレイトン兄弟の若気の至りといった印象であった。しかし、今聴き返してみるとなかなか緻密な演奏だ。特に、べースのジョンのプレーは、クラシックの演奏もしていたこともあり、アルコプレーも見事だ。ファーストアルバムではピアノはパトリースラッシェンであったが、このアルバムではロジャーキャラウェイに。彼のピアノも煌びやかなプレーを得意としているのでこのアルバムには花を添えている。そして、早死にした女性ギタリストのエミリーレムラがConcordに初登場している。弟のジェフも、テナーとアルトに加えてジャズには珍しいオーボエのプレーを披露して多芸振りをみせてくれる。前作に続いてプロデューサーは御大のカールフェファーソンではなくフランクドリティー。そのせいもあって、いつものコンコルドサウンドとは多少毛色の違うサウンドに磨きが掛かってきた。でも、よくスイングする演奏であることには違いがない。

今日のビッグバンドの演奏も、きっと基本はこの頃の路線の延長上。よくスイングする演奏が楽しめるだろう。



1. Broadway
2. Emily
3. Cannon
4. I’m afraid the masquerade is over
5. Remembering you (From “All in the family)
6. Estate
7. Things ain’t what they used to be
8. If were a rich man (From “fiddler on the Roof)

John Clayton (Double Bass)
Jeff Clayton (ts,as,oboe)
Jeff Hamilton (ds)
Roger Kellaway (p)
Emily Remler (g)

Produced by Frank Dorritie
Recorded at Spectrum Studios, Venice, California ,June, 1980

Originally released on Concord CJ-138


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