A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

ピアノとベースのデュオといえばこの一枚も・・・・

2015-09-08 | MY FAVORITE ALBUM
This One’s For Blanton / Duke Ellington & Ray Brown

デュークエリントンといえば、ビッグバンド、そして作曲家として有名だが、ピアニストとしてのエリントンも忘れる訳にはいかない。エリントンが素晴らしいのは、そのどれをとってもオンリーワンのエリントンサウンドを持っている事。ジャズ界で実力者といわれても、なかなかエリントンに匹敵するオリジナリティー持ち、すべてにおいてパワーと影響力を持ち合わせたミュージシャンは他には見当たらない。

エリントンのピアノはもちろんビッグバンドでも聴けるが、コンボでの演奏での方かより特徴が分かる。単に古いとか新しいとか、スイングするとかしないとかで表現できない、ある種のジャズの伝統を感じる一方で、ある時は前衛的に感じることもある。ミンガスとかコルトレーンなど意外な組み合わせであっても、誰と一緒にプレーしてもエリントンのこのピアノスタイルは変る事はなかった。

ジミーブラントンは、セントルイスでエリントンの目に留まり、グループに抜擢された1940年代のベーシスト。モダンジャズ時代に入ってのベースの改革者はスコットラファロといわれているが、このブラントンこそが、スイング時代の単調な4ビートを刻むベースを、メロディー楽器としてのベースへ進化させた先駆者だ。その力強さと合わせて、モダンジャズのベースの始祖とも言われているのもそのプレーを聴くと納得できる。

そのブラントンはラファロと同様に若くしてこの世を去っている。ブラントン23歳、ラファロ25歳、そしてジャコも35歳と天才ベーシストは皆早死にだ。
という訳で、ブラントンのプレーはエリントンと一緒の演奏しか残されていないが、その中にはDuoの演奏もある。1940年の録音だがモダンな演奏だ。



その演奏から30年以上経って、エリントンはこのブラントンとのデュオを思い浮かべるアルバムを作った。パートナーに選んだのはレイブラウン。ブラントンとのDuoの演奏を再現するには適役だ。

レイブラウンは最初ピアノを弾いていた。家の近くのバーあるジュークボックスに店の外から耳を傾けることが多かったが、そこでかかるデュークエリントンの「スイングが無ければ意味が無い」の最後のベースの2音を聴くのが楽しみであった。それでベースに魅せられベースを弾くようになったという。この時のレコードのベースがブラントンだったそうだ。とすると、このレコードが、レイブラウンがベーシストになったきっかけであり、恩人はエリントンでありブラントンという訳になる。

ブラントンが早く世を去り、ブラウン自身もガレスピーやピーターソンなどと忙しく演奏をするようになりブラントンを次第に意識する事も無くなっていった。ノーマングランツからこのアルバムへの参加を打診された時、きっとブラウンにとっては初恋の人との再会のような気分であっただろう。

このようなアルバムの企画はブラントンの演奏のカバーになりそうだが、ここでは1曲だけPitter Panther Patterが再演されている。A面の他の曲はお馴染みのエリントンナンバーが中心、そしてB面はブラントンに捧げた組曲風のエリントンとブラウンのオリジナルだ。
レイブラウンのベースもけっしてブラントンのプレーを真似るのではなく、ブラウンの本来の演奏をストレートにぶつけている。ブラントンの切り開いたプレーをさらにここまで進化させたとアピールしたかったのかもしれない。



このアルバムは最初のエリントンのピアノとブラウンのベースを聴いたとたんに、何かが違うと感じる。2人のプレーの気迫を感じるのもあるが、重厚なサウンドは録音のクオリティーも良いからだろう、実にいい音だ。これもこのアルバムの魅力だ。

エリントンが亡くなったのは、このアルバムを残してから半年後。ピアノプレーの遺作ともいえるアルバムだ。

1. Do Nothin' Till You Hear from Me    Duke Ellington / Bob Russell 5:36
2. Pitter Panther Patter                 Duke Ellington3:06
3. Things Ain't What They Used to Be Mercer   Ellington / Ted Persons 4:00
4. Sophisticated Lady    Duke Ellington / Irving Mills / Mitchell Parish 5:30
5. See See Rider                      Traditional 3:07
6. Fragmented Suite for Piano and Bass: 1st Movement Ray Brown / Duke Ellington 4:51
7. Fragmented Suite for Piano and Bass: 2nd Movement Ray Brown / Duke Ellington 5:11
8. Fragmented Suite for Piano and Bass: 3rd Movement Ray Brown / Duke Ellington 3:40
9. Fragmented Suite for Piano and Bass: 4th Movement Ray Brown / Duke Ellington 4:58

Duke Ellington (p)
Ray Brown (b)

Produced by Noman Granz
Recorded at United Recording, Las Vegas, Nevada on December 5 1973

This One's for Blanton
クリエーター情報なし
Ojc

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« デュオの魅力は色々あるが、2... | トップ | オールスタービッグバンドに... »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
はじめまして (ken)
2015-09-13 22:23:35
時折拝見しています。エリントンとブラウンのデュオの存在を知りませんでした(ノーマークの分野)。素晴らしい記事に感謝。youtubeで聴くまでもなくすばらしいだろうな、と思いました。小編成のエリントンの強いピアノタッチは好きで、capitolの古いトリオは愛聴盤。また、pabloなので録音もいいのでは、と猛烈にLPが欲しくなりました。亡父の遺品のPabloの固まりを探すと、なんとありました!
今、聴きましたが、本当に素晴らしい。感謝します。
返信する
コメントありがとうございます (YAN)
2015-09-17 21:49:16
kenさん

はじめまして。
コメントを頂きながら、公開及びレスが遅れて失礼しました。

Pabloは、似たようなジャケットで内容もJATPの二番煎じばかりかと思うと、思わぬ演奏に出くわすことがあります。

お互いジャズフリークの様ですね。
でも、興味の対象が少し違うようでなかなか接点が少ないようですが、必ず何か接点が見つかるものです。

これがジャズの楽しい所だと思います。
父上の残されたライブラリーにも、隠れた名盤がまだありそうですね。

今後ともよろしくお願いします。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。