A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

最終的に音楽の世界で何をやって成功するかは本人の才能次第・・・

2012-05-03 | PEPPER ADAMS
Solo for Seven / A Presentation in Jazz by Bob Keene Septet

音楽に取り組むスタートは大部分の場合楽器の演奏からスタートする。そしてそのまま演奏家として大成する者もいれば、作編曲の世界に活動領域を広げる者もいる。さらにその経験を生かしてステージやアルバム作りのプロデュースに取組む才能に恵まれる者も。
クインシージョーンズはその代表格であり成功者の一人でジャズの発展に寄与した功績は大きい。

ボブキーンというベニーグッドマンを目標にクラリネットを極めようとした人物がいた。クラリネット奏者としてもそれなりの評価を得られた頃に、バップムーブメントに始まるモダンジャズの到来が始まった。何の世界でもそうだが、一部のファンは新しい物に飛びつくが、多くの保守的なファンはそのムーブメントをすぐには受け入れらないのが世の常だ。
ジャズの世界でも、映画「バード」の中のシーンでもあったように、東海岸では認められ始めても西海岸ではバップに対する拒否反応が強かった。その中でウェストコーストの面々も徐々にバップ色の入ったモダンジャズを作り上げていった。

このキーンもその一人。自分のグッドマンスタイルを好む保守的なファンに、モダンジャズを受け入れてもらうためのアルバムを企画した。
モダンジャズの熱狂的なファンも満足させ、保守的なジャズファンの為に魅力的なメロディーやリズムも重視するような演奏ができないかと。当時のウェストコーストのバンドはセプテットやオクテットが多い。この趣旨に合わせたアンサンブルと、モダンジャズの特徴であるソロを重視するようなアレンジが求められ、その大役を務めたのはジャックモントローズ。

その演奏はというと、アルバムの企画どおりコンベンショナルなスイングジャズの延長をベースに、アレンジもあまり凝ったことをせずにメロディーラインを大切に、そしてアルバムタイトルどおり7人のソロを適度にまぶしている。
ちょっと聴いた感じはアメリカのホームドラマのバックでもおかしくないような感じだ。何の予備知識も無くこのアルバムを聴くと、あっと驚くアレンジも無く、際立ったソロもないB級アルバムのような感じだが、制作意図を理解して聴くとなるほどと頷ける点もある。

メンバーは、ウェストコーストのミュージシャン達だが、レッドノーボ、レッドミッチェルやシェリーマンなども参加している。そして、バリトンサックスにはペッパーアダムスが加わっている。イーストコーストから吹いてきた新しいモダンジャズの風を取り込むには最適な人選だったかもしれない。
アダムスが加わった最初の録音の3月11日の前日にはレニーニーハウスのアルバムの録音に参加していた。また2回目はデイブペルのアルバムの録音の翌日21日だった。アダムスは、この月は1日にはクインシージョーンズの名盤“Go West Man”の録音にも参加し、連日のGigや録音で大忙しの状態になっていた。

ところがこの2回目の録音の翌日3月22日に、ファーガソンオーケストラのメンバー3人と一緒にロスを離れてしまう。ファーガソンのオーケストラがしばらく西海岸で活動していたが再び東海岸に戻ることになった。アダムスもやっとロスでの生活に慣れて連日仕事が続く生活と、ファーガソンオーケストラでのプレーを秤にかけて迷ったのではないかと思われるが、この時点ではファーガソンを選択していた。参加したアルバムの録音途中で抜けたのも仕方がない。

このアルバムの制作者のキーンは、しばらくするとクラリネットの演奏から離れてプロデューサー業が本業となる。それもジャズではなくてロックンロールの世界で。このアルバムの翌年にはリッチーヴァレンスを世に出し、ラバンバの大ヒットでいきなりスターの座を得る。
その後のボブキーンはデルファイレコードのオーナーとして有名になり、プロデューサー稼業が本業となって成功を収めている。このアルバムも演奏の中身よりも、アルバムのコンセプト作りに彼の本質があったのかもしれない。
誰でも人生の中で分岐点はいくつもあるが、キーンににとってアダムスにとってもこのアルバムは何かの分岐点であったろう。

1. I Won’t Dance
2. There’ll Never Be Another You
3. Soft Winds
4. Solo
5. Can’t We Be Friends
6. I Hear Music
7. Once In Love with Amy
8. Let’s Fall In Love
9. Anna
10. A Lonesome Cup Of Coffee
11. Faces, Places And Things

Bob Keene (cl) all
Bobby Burgess (tb)  1,2,3,5,6,7,8
Milt Bernhart (tb)  4,9,10,11
Pepper Adams (bs)  1,2,3,5,6,7,8
Bill Hood (bs) 4,9,10,11
Red Norvo (vib) all
Dick Johnson (p) 1,2,3,8
Paul Moer (p) 4,5,6,7,9,10,11
Red Mitchell (b)  4,5,6,7,9,10,11
Ralph Pena (b) 1,2,3,8
Shelly Manne (ds) 4,5,6,7,10,11
Dick Wilson (ds) 1,2,3,8

Produced by Bob Keene
Arranged by Jack Montrose

Recorded in Los Angels on March 11, 21 & ??, 1957





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