A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

こてこてのブルース歌手のソフトな一面を引き出す秀逸なバック・・・

2014-08-29 | PEPPER ADAMS
Blues for Easy Livers / Jimmy Witherspoon

ここに録音日が不詳の一枚のアルバムがある。プレスティッジのディスコグラフィーを見ても1965-1966だけ書かれていて正確な日付はわからない。ペッパーアダムスのディスコグラフィーには1966年の春のセッションとあり、サドメルの旗揚げの2月7日と、前回紹介した5月録音の2枚のアルバムの間に載せられている。

このアルバムも、ペッパーアダムスを追いかけていなければ手にする事はなかっただろう。ジミーウィザースプーンのアルバムは1959年のモンタレーのライブ以外は持っていない。このアルバムはモンタレーのステージを生々しく伝えてくれる素晴らしいアルバムだが、ブルース歌手というイメージが強すぎるせいかその後はあまり食指が動かなかった。

このアルバムは最近になって初めて聴いてみたがなかなかいいアルバムだ。もっと早く手にしてもしてもよかった。前述のライブ物と比べて、一言でいうと実にスマートな演奏、メローな歌いっぷりとなる。一曲以外はミディアムテンポ以下のスローな曲ばかり、ある種のバラード集といってもいい。ジョニーハートマンとコルトレーンのアルバムを思い浮かべる。

曲もブルースではなくスタンダードが多い。タイトルからして、「ブルースを気楽に聴いてみたい人」向けといった感じだ。要はブルース擬きでウィザースプーンのブルース歌手の魅力を味わって下さいというコンセプトなのか?
他をあまり聴いていないのでこれ以上偉そうなコメントはできないが。

このアルバムの主役はあくまでのウィザースプーンのボーカル。アレンジを担当したピアノのロジャーキャラウェイもこの辺は良くわきまえていて複雑なアレンジは何もない。「あくまでもボーカルをキャンバスの中心にしてスケッチのように誰でもソロができるような構成になっていた」とは、このセッションに参加したビルワトラスのコメントだ。

スローな曲でも、キャラウェイの輝くようなピアノが実に効果的だ。そして、ワトラスとアダムスも特にアンサンブルワークがある訳ではなく、それぞれボーカルに絡むようなバックが実に魅力的だ。ボーカル自体が低音の魅力なので、本来低音を売りにするトロンボーンやバリトンが高めの音域で絡むのも妙に新鮮に感じる。
リチャードデイビスとメルルイスの参加も全体のバックの完成度を高めている。

そういえば、アダムスの参加したアルバムをここまで追いかけてきたが、これまで歌伴に参加したアルバムは記憶が無い。もう一度確かめてみようと思うが、これがお初かも知れない。
アダムスといえば、アップテンポの曲で切れ味の良いソロが魅力だが、このようなスローな曲のフレーズ作りも実にうまい。歌のバックには歌心がないプレーだとしっくりこないが、アダムスにしてもワトラスにしても、これぞボーカルのバックのお手本という感じの好演だ。

その中で唯一のアップテンポの曲がI'll Always Be In Love With You。この曲はバックもジャムセッション風に展開していくが、ここでひとつ不思議なことが。
ライナーノーツでのコメントも、ここでのサックスはアダムス(他にクレジットがないのでアダムス以外は考えられないが)と記されているが、聴こえてくるのはどう聴いてもテナーの音。フレーズ作りもいつものアダムスのバリトンとは少し違うような。アダムスは、演奏するジャンルやグループによってプレースタイルも起用に変えるが、これもバリトンをテナー風に吹く新たな芸風かも。もし、アダムスがテナーを吹いているとすればこれは珍しいが果たして真相はどうなっているのか?
もちろん他の曲はまぎれもないアダムス節だが。



1. Lotus Blossom      Sam Coslow / Arthur Johnston / Billy Strayhorn 3:03
2. Gee Baby, Ain't I Good to You         Andy Razaf / Don Redman 3:11
3. Travelin' Light             Jimmy Mundy / Trummy Young 4:15
4. P.S. I Love You             Gordon Jenkins / Johnny Mercer 3:04
5. I'll Always Be in Love With You Bud Green / Herman Ruby / Sam H. Stept 2:29
6. Don't Worry 'Bout Me             Rube Bloom / Ted Koehler 3:02
7. Easy Living                 Ralph Rainger / Leo Robin 3:24
8. Embraceable You            George Gershwin / Ira Gershwin 3:08
9. Blues in the Night             Harold Arlen / Johnny Mercer 4:04
10. Trouble in Mind      Richard M. Jones / Janis Joplin / Traditional 2:23
11. How Long Will It Take for Me to      Become a Man Traditional 3:16
12. I Got It Bad (And That Ain't Good) Duke Ellington / Paul Francis Webster 3:13

Jimmy Witherspoon (vol)
Bill Watrous (tb)
Pepper Adams (bs)
Roger Kellaway (p)
Richard Davis (b)
Mel Lewis (ds)

Produced by Peter Paul
Arranged by Roger Kellaway

Recorded in New York City, 1965-1966

Blues for Easy Livers
Jimmy Witherspoon
Obc

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