マダムから息子の来日についてのメールが届いた。
17歳の息子が、家族と一緒に旅行に来たことはあっても一人旅である。
彼女から彼の滞在についての相談であった。
東京は以前家族で泊まったところに一週間すでに予約済みで、「関西で出来れば一週間、ホームステイで、できれば同年代の若者と交流をしたい」と言うことであった。謙虚にも「彼が寝るためのほんの小さなスペースだけ、提供していただけるとありがたい」と添えられていた。
知り合いも当たってはみたが、結局狭い我が家に滞在してもらうことしにした。
奈良滞在の後は、有難いことに横浜在住で同年代の男の子を持つ友人が快くホームステイを引き受けてくれた。
また奈良在住の高校生の女の子が一日奈良の案内を申し出てくれた。
それを伝えると、「何と感謝していいかわからないわ。横浜は旅行した時とても素敵な街だと印象に残っている。同年代の日本の女の子と会う機会があるなんて息子はとても喜ぶでしょう」
そして彼はやってきた。京都駅での再会だった。
もうすでに一週間東京で滞在し、不安な様子は全く感じられない。
とんかつ弁当を新幹線の中で食べたと言っていたが、軽く食事をした。
いろんな話をする中、彼の話からお母さんのことがほんとに大好きで尊敬していることが感じられた。
日本語で話してくれた会話が印象に残っている。
たとえば「お母さんはすごいです。歴史を勉強していました。博識で敵いません。」
「兄はいつもお母さんに似ていると言われますが、僕は小さい時からお父さんに似ていると言われています」とちょっと残念そうに笑った。
でも「両親は日本料理が好きではないので、作ってくれません。それがとても残念です」
しかし政治の話になるとちょうどサルコジ大統領が就任して間もないころで、ご両親はサルコジ派。そのせいもあるのだろう。「サルコジはいい大統領だと思います」と言っていた。
今も同じなのか、違う意見になったかまた聞いてみたいところである。
姫路城に行った時、昼食を取ったのはお城の近くの神社の中のレストランだった。
照り焼き丼ぶりのような簡単なものだったが、味も良く、「静かな雰囲気でここはほんとにいいレストランです。」といった。フランス人は「静かなレストラン」が好きなのであるが、17歳にしてそういう評価をしたのが印象に残った。
また女子高生に奈良を案内してもらい、駅に迎えに行ったところ、ちょうど折り鶴を教えてもらっていて、彼女とのひとときを名残惜しむように、「もうちょっといいですか?」という。
実はパリにはガールフレンドがいるのだが、そこはフランス人、女の子との楽しい時間はなかなか別れづらいらしい。
もちろんそんな気持ちに水を差すような野暮なことはしないで、待った。
彼はカラオケでも日本語でアニメの主題歌なども歌うそうだが、彼の家族はみなクラシック音楽を好むと言う。
すぐ上のお兄さんもそうだ。
しかし彼はエディット・ピアフも好きで、「水に流して」は特にお気に入りだと言っていた。
お母さんからしてみれば、いわばちょっと「異端児」と言えるかもしれないが、両親に愛情豊かに育てられたことは間違いない。
奈良を旅立つ日、京都まで送って行った。
そのときも少し寂しさを覚えたが、帰宅後彼の使っていた部屋を片付けようとしたら、何やら忘れ物?
来たときにも小さなお土産をいただいたのだが、そこにはひとつ、また小さなお土産とともに「ありがとうございました」と書かれたメモが残されていた。
フランスの17歳の男の子でもこんなことができるのか。
私の涙腺は緩み、いつまでも心に残っている。
ご両親のしつけの良さを感じる出来ことであった。
これに教えられ、私も向こうに行ったとき置手紙をするようにしている。
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