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『たかが一内閣の閣議決定ごときで』-亡国の解約改憲と集団的自衛権について小林節と山中光茂が縦横に語る

2014-11-22 21:41:50 | 世の中の状況について
                       【 『たかが一内閣の閣議決定ごときで
                                 -亡国の解釈改憲と集団的自衛権』 2014年10月  皓星社刊 】


 11月16日の日曜日、京都弁護士会主催の『憲法と人権を考える集い-憲法の大原則・立憲主義を考える』に行ってきたが、そこでの討論に飽き足らず、もう少し小林節さんの《心境の変化の過程》を知りたいと思い、書籍を買い求めた。

 それが上の本である。一般の《憲法の解説本》や《改憲の問題点》をひととおり探るだけのものでは面白くないと思い、小林節さんと松坂市長である山中光茂という、あまり知られていない人との対談を収めたものを手に取った。この本、今回の『閣議決定』の持つ意味と、『憲法』と『集団的自衛権』の問題が本質を突いた、しかもわかりやすい発言により、これらに対する理解が深まり、整理できただけでなく、今まで知らなかった人物像を知ることもできて、大きな収穫だった。

 小林節さんの方もさることながら、この山中光茂さんという人、大した人物である。

 【おくづけ】の著者紹介の部分をそのまま引用すると

   山中 光重(やまなか・みつしげ)
     松坂市長。1976年、三重県生まれ。慶応義塾大学法学部卒業。
     その後、群馬大学医学部に学士編入学し、卒業。医師免許取得後、ア
     フリカのケニアを中心に貧困地域におけるエイズ対策などに尽力。
     2009年、松坂市長選挙に当時全国最年少として当選、現在2期目。
     住民参加型市政が評価され、マニフェスト大賞グランプリ。ジュネー
     ブにおける世界市長会議に日本代表として参加。著書に『巻き込み型
     リーダーの改革』がある。

  と、こんな経歴の持ち主である。やってきたことが半端じゃない。全国最年少とか聞くと、はじめは《名声だけを追って中身のない飛び跳ねた若者》を連想したが、なんのなんの本を読み進めると、対話の中でもむしろ「小林節」をリードしているではないか。

 以下、本書から話の内容の重要ポイントを列挙する。

 そもそも今回の【『講演会』の対象内容】、および、この本の【出版の動機】と【主な関心事】は、この直前の2014年7月1日に安倍内閣が「憲法の重大な問題に関し」閣議決定したことにある。それは何かというと、【憲法改正をすることなく、《たかだか一内閣の閣議ごときで》解釈の変更により「日本を戦争する国」に導く決定をした】というところにある。


 【まえがき】(山中光茂)から

  「わたしたち日本人は、第二次世界大戦の敗戦後・・「平和主義の徹底」を明確に掲げ、国民意思として
  70年にわたってそれを守り通してきた実績があります。」
  「・・世界のほとんどの国では決して日常とはいえない「平和」を国家と国民が70年にわたって守り抜
  き、アジア・アフリカ諸国をはじめとする国際社会に対して大いなる平和貢献を徹底してくることができ
  たのです。・・国際社会における評価も戦中・戦後における「侵略国家」というレッテルから、「平和国
  家
」という信頼を得るまでになりました。」

  「・・戦後歴代政権においては平和主義の理念をうたった憲法の根幹を乗り越えることなく、「集団的自
  衛権は憲法上許される物ではない
」という判断を明確に表すことで、世界各地に生じていた東西対立や民
  族対立に対して特定国家の意思による「自衛という名の戦争」に介入を強いられることhがありませんでし
  た。戦後の日本の平和は、決してアメリカとの軍事同盟を通じた「抑止による平和」「核の傘」により守
  られてきたのではありません。」

  「・・世界に誇れる日本のかたちが、安倍内閣という憲法の枠を乗り越えようとする「愚かな為政者」の
  登場によって、今まさに壊されようとしています・」

  「憲法はそもそも「愚かなる為政者」が生まれることを前提としており、だからこそ憲法によって憲法に
  よって歯止めをかけるということに大きな意義があります。・・」

  「失ってからでは取り返しのつかない現実を、国際社会のなかでは「自衛のため」「平和な国家を建設す
  るため
」という戦争を正当化する理屈をつけることで壊し続けているのです。」

  「これまで世界のなかのどの色にも属さない平和貢献国家という信頼を積み重ねてきた日本ですが、この
  国の「特定国家の軍事的意思」と共同することを前提とする集団的自衛権という軍事力の行使には国民意
  思によって歯止めをかけなくてはなりません。」


 ここに書かれていることで、本書で言いたいことはほぼ言い尽くされているのだが、もう少し追ってみよう。


 第1章「亡国の憲法解釈と集団的自衛権」から

  【小林先生と樋口先生のの教え

  (山中さんは慶応大学在学中、恩師である小林教授の全講義を聴く一方、護憲派の樋口陽一教授の講義を
  聴くため上智大にまで出向き(潜り込み)全授業に出席したという話が紹介された後)

  [山中]「・・小林先生からは憲法の本質論を勉強させていただき、樋口先生からは、憲法の歴史的背景
  についておしえていただきました。・・」(p-14)


  【たかが閣議決定、されど閣議決定

  [小林]「憲法を変えていいのは・・国民だけなんですよ。国民投票を経ない憲法改正はありえない。国
  民投票をするには・・衆議院・参議院それぞれの三分の二の発議によらなけらばならない。・・その手続
  きを経ない(で)・・・閣議決定でそれをやった。・・このあと、国会で自衛隊を海外に派兵する・・派
  兵手続きをつく(る)・・これは簡単にできる・・。特別秘密保護法をつくった(から)・・こうして憲
  法改正の手続きを一切経ないで、実質憲法改正をやってのけた。」(p-18)

  [山中]「『たかが閣議決定』なのかもしれませんが、行政府のトップの内閣によってきめられたという
  『されど内閣決定』という側面もあります。」
 

  【集団的自衛権は海外派兵の正当化

  [小林]「集団的自衛権というのは、他国(同盟国)を守るために海外派兵に派兵することを正当化する
  もの。本質は、海外派兵権です。」(p-25)

  [山中]「政府はその本質をごまかすために、『日本を守るためだったら海外の軍隊に協力するのが当然』
  という矛盾した論議を振りかざしている・・」

  [小林]「『集団的自衛権は憲法違反だから反対だ』というと、『えっ!そんなに卑怯でいいですか』っ
  て言われる。ふざけんな、と言いたい。」

  [小林]「基地は沖縄に集中していますが東京にもあります。・・『思いやり予算』は千億単位だし、・・
  ・・ちっとも片務的ではない・・・さらに、日本は世界各国に対して人道的支援を行い、あらゆる国際貢
  献もして。国連の負担金は二番目に多い・・・世界から孤立しないために集団的自衛権を認めるべきだ、
  という暴論は問題外ですね。」

  [小林]「日米安保と駐留米軍がいるから『侵されなかった』んです。だけど、わたしは最近はじめてわ
  かった。九条のおかげでだrも『侵さなかった』わけです。・・・
   この信頼をかなぐり捨てて、世界の警察であるアメリカの二軍になってドンパチドンパチ、自分たちと
  価値観の違う国を武力で張り倒して『言うことを聞け、コノヤロー!!』と。それって『軍国主義』でし
  ょ。何が積極的平和主義なんだ。ごまこしですよ。」(p-27)

  [山中]「・・集団的自衛権の行使は間違いなく、『国際紛争を解決する手段としての』武力の行使になる
  のです。(p-30)

  [小林]「『これまでの枠組みを超えていない』という政府の説明は明白なウソです。」(p-31)


  【政府が使った二枚舌
  【もはや九条を盾に参戦は断れない

  [山中]「私が本当に怖いと思うのが、実際にNOTOやアメリカが本当に支援を求めてきたときに、日
  本がこれまで憲法第九条を盾に断ってきた海外派兵を断れるか、という点なのです。」

  [小林]「NOTOは集団的自衛権の同盟じゃないですか。あれは反共、反ロシアの集団的自衛権同盟で
  すよ。」

  [山中]「集団的自衛権を持つなんて本当にバカバカしい、とわかるはずなんですが。・・・現在、日本
  を侵略国と思っている国はないんです。・・・アメリカや中国の評判はガタガタに悪いです。世界の認識
  で言えば、アメリカは戦争大好きの国と思われています。・・日本に対する信頼感が厚く、戦場に近いと
  ころに行って人道的な支援活動ができるのも、・・平和国家という理由があります。・・。」

  [小林]「『「湾岸戦争」のときはカネ出したけど、今度は払わないぞ』って言わないといけないんですよ。
  それが『あれ?今度はカネだけじゃないんだ、カラダも出さなきゃ』なんて、頭おかしいじゃないですか。」

 
  【憲法のもとでは「たかが一内閣の総理大臣

  [小林]「・・・国会の敷地にはいると議員バッチを付けた人だけが人間で、あとは人間でないようで・・
  ・・非常にムカムカします。・・議員も、国会という大きな組織か見れば、一つの齣にしかすぎない。」

  [山中]「・・必ずしも選挙によって選ばれた為政者に正しい判断ができるとは限らないという点が、立
  憲主義のもとでは大事なのです。」

  [小林]「安倍総理的に言うと、『私は選挙で多数に選ばれた与党の中で選ばれて総理大臣になったんだ』、
  『選ばれた私が決めることに間違いがあるはずないじゃないですか』となる。恐ろしいですよ。・・・暴
  君型国王の発想です。・・茶坊主みたいなイエスマンばかり集まると裸の王様になる。」


  (この辺の話は、大阪の【橋下市長】にも聞かせてやりたい話である。自分勝手に自分の都合だけで議会
   を解散し選挙に打って出るやり方は、今回、衆議院を解散して総選挙をやるという安倍首相となんら変
   わらない。しかも橋下市長とその子分の大阪府知事までその職を放り出し、選挙に出るというから、あ
   きれてしまう。
    それにひかえ、この後の話で、小林さんが山中市長の人柄と裁量にほれ込み、「国会で活躍してほし
   い
」みたいなことをいうが、それに対し山中さんは、
  「(国会に出る話は)確かにたくさんありましたが、全部断ってきました。・・大臣とか・・権力構造の
   中で明確な役割を果たせればいいのですが。・・一国会議員としてできることには今魅力を感じておら
   ず、国会議員になりたいとはみじんも思ったことがない
」(p-58)と、きっぱり。さらなる要請には、「個人
   的な意見として拝聴しました。
」(p-75)と、軽く受け流す。橋下あたりとは器が違うと感じた。)



   すでに、文字数もだいぶ多くなってきてしまった。1度に読むには限界の量を超えている。

  第2章は『9条精神を守る「護憲的改憲派」』となっているが、もう一つの興味-《どうして小林節が、いわゆる『護憲派』とタッグを組むようになったか》そのいきさつ-についてである。

  この章の93ページから『私が改憲派の重鎮というところの謎解きをしておきます。』(p-83)と前置きして、説明している。その引用は省略させていただくことにして、『小林節は改憲派』であるというときの《改憲》の内容に大きな誤解があるということがわかった。

  「自衛力を堂々と持てる憲法に改正し、海外派兵を簡単に許さない憲法をつくり、守るべきだというのが、私の今の結論なんです。」(p-106)

  「九条の価値あり、ですよ。いま安倍自民党のもとでは九条の改正はやめたほうがいい。だから、私は戦術的にこの瞬間だけ、九条護憲論者になった。」(p-148)

 と、こんな具合である。『明治憲法』のような憲法に後戻りさせる《改憲派》と、いまの憲法の不備を発展的に「改正」する《改憲派》を一緒くたに論議することに混乱があったのだ。

 いみじくも、小林節は、自ら今の立場を『護憲的改憲派』と呼んでいる。


 第二章もあとの第三章も、傾聴すべき発言がつづくが、ここいらで止めにしよう。










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