アルバニトハルネ紀年図書館は、漫画を無限に所蔵できる夢の図書館です。司書のWrlzは切手収集が趣味です。
アルバニトハルネ紀年図書館
『ビッグコミック』2012年4号

『ゴルゴ13』第519話「1万キロの狙撃」前編/さいとう・たかを
中東、リビアの地方都市から遠く離れたニューメキシコ州。無人機部隊が、狡猾に確実に独裁者を追い詰める。その二日後、独裁者の三男を追っていた無人機が、あの男が乗っていた車を誤爆してしまう。無人機攻撃部隊を創設した少佐は、「アメリカの利益を考えれば」と言い、管理不能な男の排除を決意する。
題名の「1万キロ」というのは、アメリカからリビアまでの距離という単純な物ではなく、読者には予想できないような場所と場所との距離のことかもしれない。そうだと嬉しい。
『憂国のラスプーチン』第34話/伊藤潤二・佐藤優・長嶋尚志
ソ連邦崩壊の過渡期、「ビクトル」「マモル」と呼び合う仲だった、憂木と「黒い大佐」。そして今、取調室の憂木は、彼を「愛国者」であり「恐るべき敵」と呼び日本を絶賛した黒い大佐のことを話し、壊れかけている日本にどういう神話が必要になるかを考えさせられるだろうと、逆に検事に問いかける。
この漫画を読むと「佐藤優って実は立派な人なんだなあ」と思わされるけれど、原作者である佐藤優が、漫画の中で、自分で自分を褒めているようにも取れてしまう。
以下、面白かった作品を羅列します。
『築地魚河岸三代目』Fish282/はしもとみつお・九和かずと
三代目、奥さんに頼まれてノリ(海苔)を買いに行き、自分と同じように「三代目」である、ノリの専門店の三代目と知り合う。『雉(きじ)屋』の先代の質問に、大手の銀行を辞めて築地に来たことに後悔は全くないと即答する旬太郎だが、『雉屋』の先代は、会社を辞めた息子は本当は後悔しているのではないかと気にしている。
そして旬太郎は、悩んでいる『雉屋』の先代を、「ノリの遠足」に誘う。
海苔をあぶるという漢字、「焙る」と「炙る」では意味が微妙に異なるようで興味深い。ホイロが「焙る炉」でホイロ。辞書を引いてみたら「焙」は焙(ほう)じるとも読む。炙は肉+火。
『総務部総務課山口六平太』第617話/林律雄・高井研一郎
「もったいない」からと、第五事業所を存続させた六平太。異物には、こんなに存在価値がある。
『どらコーボク』CASE.6/石川サブロウ・小路谷純平
今回から、貴島自身の労働環境のあれこれも、本編に絡み始める気配。小学校以来の友人なども出てきて、内容は更に深みを増しそうだ。
『兵馬の旗』第二十四陣/かわぐちかいじ
勝の出した条件を飲んだ西郷に対し、これでよいのかと詰め寄る村田。新政府の、当時「万国公法」と呼ばれていた国際法の精神を尊重する姿勢もまた、頼もしい。こういう背景もあって、大政奉還後の日本は国際社会の仲間入りをできたのだろう。
『ゲゲゲの家計簿』第19話/水木しげる
お墓めぐりというのは、水木しげる先生に言わせると…こんなに奥が深い物なのか(笑)
『そばもん』第80話/山本おさむ
とにかく鴨が美味そう。読んでいて何の支障もなく「美味そうだな」と感じたけど、よく考えたら絵とセリフだけで「美味そう」と感じさせる作者の技術は素晴らしい。芝居がかった稜もいい味出している。
『華中華(ハナ・チャイナ)』第132話/西ゆうじ・ひきの真二
寒風のせいで帰ってしまうお客さん、食べてもらえず捨てられてしまうチャーハン。それでも、マダムはイベントを打ち切らず、楊貴妃も、敢えて手伝わずアドバイスもしない。この逆境の中で頑張る姿が好きだ。
『S-最後の警官-』episode.061/小森陽一・藤堂裕
丸腰で出撃しようとする神御蔵を一度は呼び止める横川さん。それでも丸腰で出撃する神御蔵。
横川さんの中で再生される、「憎むな 殺すな 赦しましょう」に、今回もじーんと来た。
『獣医ドリトル』カルテ103/夏緑・ちくやまきよし
動物病院に、人間の患者が迷いこんでしまう。コメディのようなお話になるのかと思ったら、脳出血の後遺症はかなり深刻。老犬と「ゆっくり」した散歩を楽しむその後の姿に心暖まる。
『上京花日』第59話/いわしげ孝
貫太郎と篠原泉、作家の娘の花の機転でようやく和解できる。変装して隠れたまま、失恋に泣く花の姿が切ない。
『星を継ぐもの』第24話/星野之宣・J.P.ホーガン
月が移動した時、太陽系にいなかったシャピアロン号の乗組員は、そこに人為的な物を感じる。ハントら科学者達はガニメアンの信頼を得ているが、地球世界その物が信用されているわけではない。地球を一周し、その惑星の文明に「抗争に明け暮れてきたとはとても思えない」とガニメアンは感嘆する。宇宙船はジュネーブ郊外に着陸し、歓迎の握手を求める各国の要人の最後尾にいたのは、平和委員会の面々。異文化の衝撃(カルチャー・ショック)。この先の展開が待ち遠しくてたまらない。
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【検索用】ビッグコミック 小学館 201204
『花とゆめプラチナ』

この本をすごく気に入っている。読み返すにつれて宝物のような一冊に思えてきた。『人形芝居』と『桜の花の紅茶王子』があまりにも素晴らしいので、その二作を読み終えた余韻で、熱に浮かされたような状態で自分が「一冊の本」としての魅力を過大視しているような気がして、ブログを書く前に少し日にちを置いてみたけれど、やはり「一冊の本」としての魅力はとても大きい。どういう意図で刊行された本なのかは憶測しかできないけれど、私はこの本の存在が嬉しい。こういう本が刊行され続ける限り、私は「漫画を読むこと」をきっと永遠にやめない。
私がこの本から強く感じるのは、「花とゆめ」というブランドの持つ偉大な力だ。私も含めてこの本を買った人の多くは、「花とゆめ」の名を持つ漫画雑誌や単行本が好きな人たちだと思う。それ故、書名に「花とゆめ」の四文字を含む出版物には、「やはり"花とゆめ"と名乗っている本は面白い」と読者を引き付ける、相応の魅力が求められる。そしてこの本は、特定の作家や作品が好きな人のみならず、極論すれば「初めて花とゆめ作品を読む人」にも大きな満足感を与えるだろう内容に仕上がっている。それは「人気のある作家」を集めただけで簡単に成り立つような物ではなく、多くの人の手と長い年月をかけてようやく醸成(じょうせい)される魅力だ。そういう魅力を、ここで私は敬愛を込めて「ブランドの持つ力」と呼んでいる。
「高尾滋のファンだから」「山田南平のファンだから」という、私がこの本を買った動機は、巡り巡って「そもそも自分は漫画が大好きなのだ」という、根本の部分にまで立ち帰ってそれを再認識させてくれる。ある本を買わなければ読んでいなかったかもしれない作品との出会いは、常にかけがえのない物だ。
「あなたが知らなかっただけで、世の中には面白い漫画がこんなにあるんだよ」と、示してもらったような嬉しさには、いつも心が躍る。本屋や通販サイトを巡りながら、「この作品が好きだから」「この作家のファンだから」という理由で読む漫画を選んでいると、知らず知らず視野が狭まっていることがある。だから、出版社を問わず、こういう本が刊行されることに、私は大きな喜びと意味を感じる。
「自分にとって面白い漫画」という存在は、ほぼ例外なく二つの側面を持つ。自分で見付けたという面と、自力では見付けていないという面で、多くの場合、後者のほうが面積が大きい。「自分はどういう漫画が好きなのか」という問いへの答えは、自分の内にしかないので、自分が読みたい漫画は自分で探しているというのが前者の一面。その存在を知らなかったか読む機会を逸していただけで、読んでみたら引き込まれたという偶然が後者だ。ところが、前者と後者は相反する物ではなく、実は後者の「偶然」が前提となって前者の「選択」が成り立っている。
世の中には、数えきれないほど多くの出版社が存在し、無限に近い数の漫画が生み出されている。この世に存在する漫画を全て読むことが物理的に不可能なので、「出会った作品の中でどの漫画を好きになるか」というのはある程度自分で予測できても、「どの漫画といつ出会うか」は予測が不可能で、自分の思い通りにはならないのだ。
そういう意味で、この本は「花とゆめ」というブランドの持つ力を読者が知る、一つの「偶然」をもたらす一冊だ。そして実際には、「漫画その物」の魅力を私たちに提示している、多くの選択肢の集合体だと思う。
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【検索用】花とゆめプラチナ 白泉社
『星になる日』/鈴木ジュリエッタ

ハルは見てたんだ
こうやってるサイテーな私を見てたんだ……
一年間も土に埋められて…
きっと もう腐ってる…!!
そんなの柿原君にっ
今更何て言って返せばいいんだよ!!
(上野桃香)
平成16年から17年にかけての、鈴木ジュリエッタ先生のよみきり6本を採録した短編集(こういう作品を産み出す作家のことは、敬意を表してきちんと「先生」という敬称を付けて呼びたい)。
採録されているのは、完全に異世界が舞台の作品と、少し非日常(ファンタジー)の混ざっている作品。登場人物たちは、寂しく内向的で、どこか「人間の世界」という「現実」から距離を置いている所があるけれど、それはいわゆる「現実逃避」とは違う。むしろ逆に、一旦現実から離れることによって、現実の素晴らしさを知って、それにきちんと向き合おうとする。だから、読み終えると元気に、前向きになれる魅力がある。
この魅力は、例えば小学生の頃に具合が悪いとウソをついて学校をズル休みしたり、中学や高校生時代に授業をサボった時のような、少し後ろめたさのある心地よさに似ている。こういう、一日だけとか期限付きの、やましさを含んだ「休息」というのを、身に覚えがあるので私は否定しないし、それは絶対的に「悪いこと」ではなく時には「必要なこと」だと思う。(そもそも、人生に於いて一度も授業や仕事をズル休みしたことのない人などいないはずだっ)。それどころか、ちょっとだけ「普段とは違うひととき」を味わうことによって、再び現実に向き合うための活力になる。
恋が実ったり、全員が救われるような結末ではないのに、やはりこの世という「現実」は困難であっても素晴らしいと感じさせてくれる。別の表現で言い換えれば、この本は鈴木ジュリエッタ作品の「優しさ」に満ちている。教師や上司や世間という物は、概して私たちに「ちゃんと生きなさい」と命ずる。ところがこの本に採録されている作品は、「24時間365日、常にちゃんとしている必要はないんだよ」と、甘やかすことはせずとも穏やかに肯定してくれている。そういう「優しさ」に満ちている。
お薦め度:★★★★☆
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【検索用】星になる日 鈴木ジュリエッタ 1
『花とゆめ』2012年5号

『暁のヨナ』第50話「解放」/草凪みずほ
本物の賊に捕らえられてしまったヨナ。生きるために殺すのだという、希望のない地に暮らす者たちの言葉に、先王の娘であるヨナは何も言い返すことができない。力を使ってしまうシンアの心の叫びも、悲しい。
ハクの殺気を「哀しい殺気」と呼んだジェハが、今後シンアのことをどう思うようになるのかも気になる。
『信長シックスティーン』/木内たつや
織田信長の霊が現代の少年に憑依するという読み切りだけど、味がある。
信長の霊が言った、「克服するしかなかろう」「道は そうやって築かれるのだ」という力強いセリフが良い。
『リーゼロッテと魔女の森』第11話/高屋奈月
「人間じゃない」という、核心に触れる展開を見せてくれて、また期待が高まってきた。生物学上の意味だったり精神的な意味であったり、「人間か否か」というテーマを追求する高屋奈月作品が読めるのは楽しみだ。
「知る行為」を始めると言いながら、肝心なことを知ろうとしていなかったリーゼの怒りや葛藤も、物語の軸になっていくのかもしれない。
『LOVE SO LIFE』第56話/こうち楓
松永さんを好きだと自覚した詩春。詩春と梨生との、恋に対する考え方の違いが対照的で、「どっちも頑張れ」と微笑ましい気持ちになれる。
双子に「じゅんばんこ」を教えるシーンも好きだ。
『ろっぱん!!』Trick.10/トビナトウヤ・ハラダカケル
班替えが行われることになり、うろたえる6班の面々。
この漫画は、小学生の頃に抱いた色んな感情を思い出させてくれる所があって面白い。席替えやクラス替えという物には、小学生の頃はドキドキさせられた。時として、こういう「大事件」のように思えてしまうこともあった。そもそも小学生の頃は、世の中の仕組みなんかに関しても知識が限られていたので、自分が生きている世界がある種の、メルヘンやファンタジーの世界に思えた部分もある。
童話やお伽話の魅力が何なのか、ふと考えさせられる。
『神様はじめました』第76話/鈴木ジュリエッタ
本物の奈々生を前に、自分のほうが役に立つ神使だとアピールする瑞希。巴衛は巴衛で、何らかの考えがあってニセの主人の言いなりになっている気配。やはり巴衛と瑞希が、自分のほうがご主人様のお役に立てるのだと張り合う展開はすごく楽しい。
『俺様ティーチャー』第78回/椿いづみ
ずっと言えなかった「ごめんなさい」を聞いてもらえた野上。実りある学園生活。それは「後悔しない」ことだ!という、照れ臭い展開を描いても、クサ過ぎない。ウサちゃんマンという、ある意味「一番恥ずかしい存在」(忍より恥ずかしい存在だと思う)がいてくれるおかげで、皆が心置きなく青春を謳歌できている。一番たくさんの恥をかいてくれているウサちゃんマンは、最高のヒーロー(ヒロイン?)だ。
『声優かっ!』voice.52/南マキ
「シロ」として久遠千里と仲良くしていることに対して、瑞希先輩から「自覚しろ」と牽制されてしまう姫。そのシロに、美味しいオムライスを食べさせてやりたいという「自分」を見付けた久遠千里。この三人の関係はこれからどうなってしまうのだろう。
部屋の主の「奇行」に振り回されてしまう、ハウスキーパーの林さんがお気の毒だ(笑)
『女王様の白兎』episode.11/音久無
雪兎が、仲さんが自分に「言いたいこと」があると聞いていても冷静だった理由が分かって爆笑。
ナナ「雪兎気付いてたの!?」
雪兎「まぁ薄々…」
レイシーの、不安な時に雪兎の服を「引っ張る」くせが、今回もツボだ。そして鳩村マリコは、宇宙語よりも不可解な、仲梨愛が話す謎の言語を解してくれる。
ヨナ、神様、女王様。

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【検索用】花とゆめ 白泉社 201205
きれい
2012-02-02 / 郵趣

大好きな漫画の複製原画が当たったのが半月前。未だに気持ちが浮ついていて、真面目なことをぜんぜん考えられない。綺麗な物を眺めながら、「なんて綺麗なんだろう」とウットリする以外のことを、する気になれない。
そんなわけで、イエメン王国の切手の整理に取りかかった。王国時代の切手の中でも、特に1950年代までの物が綺麗。
以前落札した物を、発行順に並べ直す所までしかやっていなかったので、きちんとリーフを作ることにした。
第一次大戦後、イエメン王国が独立して最初の切手。
額面1/2Bogachesから1Imadiまでの、色違いも含めた17種。これはすごく綺麗だ。
その先も、枠線を描いてプリントアウトして、
切手を透明マウントで貼り込んでいく。
「フェチ」という言葉の正確な意味を私は知らないけれど、自分は「印刷物フェチ」なんだと思うことがある。だから漫画も、「電子化」された物を読むのが、私にはまだ無理だ。
切手収集 |
耳紙を残す
2012-01-29 / 郵趣

シートの周囲の「耳紙」を残したままにしてある切手が、何種類かコレクションの中にある。小型シートが、20面や50面などの通常シートの切手と同じ物で構成されている場合など、通常シートの切手の耳紙を残しておくと面白い。
これは香港の「岩石」を描いた切手の、単片4種と小型シートを両方収めたリーフ。
通常シートのほうの切手は、4種ともシートの右下部分を買わせてもらえたので、4枚ブロックを別に整理。この2リーフはちょっと迫力があって、気に入っている。
「耳紙に何か描いてある」という理由で残しているけれど、「通常シートの切手と小型シートの切手が一目で区別できる」というメリットもある。
1999年発行の香港の普通切手。左のリーフは通常シートからの単片、右側の2枚はその小型シート。
香港赤十字会。左のリーフは通常シートからの単片、右は小型シート。
香港水道150年。左のリーフは通常シートからのペア、右は4種連刷を4つ収めたフルペーン。
そしてこれは、平成24年のお年玉小型シートがもらえる番号2種類。

切手収集 |
『超人ロック 嗤う男』第4巻(完結)/聖悠紀

いいかガービッツ
世の中は変化していくんだ
エア・バイクレースも
まっとうなスポーツとして生まれ変わるんだよ
(ウーツェイからガービッツへ)
聖悠紀は素晴らしいストーリーテラーだ!と改めて感激させられる一方、題名の「嗤(わら)う」を軸に解釈すると、皮肉と取れる部分は相当きつい。「時代は変わる」とうそぶいて、変革をもたらすふりをする行為の「ウソ」を暴く、痛烈な皮肉になっている。制度に対する失望と呼んでも良いかもしれない。独裁者を倒してもその場しのぎにしかならないし、民主主義は理想のシステムではなく欠陥だらけだ。もしもガービッツが21世紀の現代に生きていたら、中東の「アラブの春」もミャンマーの「民主化」も、全て茶番だと嗤うに違いない。
作中のエア・バイクレースが、支配者と奴隷だけで成る世界の縮図だとしたら、ウーツェイは辺境を統べる君主で、ガービッツが隙あらばその地位を乗っ取ろうとしている。スポンサーのアマダは、疲弊した辺境を弄び蹂躙(じゅうりん)する。
ヴァン・ベイルが星間犯罪を告発したことにより、最初の経営者は起訴され、資産も凍結される。新たな運営者として君臨したガービッツも、惑星の法律ではなく星区(セクター)の法律で捕らえられ、全ての権利がヴァン・ベイルに戻る。
ロックの変身に注目すると、彼がセテ・マイノックとして成したことは、銀河連邦という体制が崩壊することの阻止(=エスパーコントローラーの封印)だけで、それ以外はヴァン・ベイルの姿で成している。破壊に「良い破壊」も「悪い破壊」もないけれど、敢えて分類すれば、セテ・マイノックがやったのは「維持するための破壊」で、ヴァン・ベイルがやったのは「変えるための破壊」になる。
刑の執行前にガービッツが嗤(わら)ったのは、形だけの「変革」を行って、「管理」を「合議」と言い換えたり、「奴隷制度」の表面だけを壊しても、世の中の本質は変わらないという意味だろう。世界は常に、勝者と敗者がいて、富める者と貧しい者で構成されており、中央と辺境との格差をなくすことは不可能だ。それでも、レディGとして再来したミリアムが、ヴァン・ベイルの契約書を破り捨てたように、希望は存在する。
印象的なのは、『アストロレース』に於けるイライザ・シムノン同様、正体を知られたヴァン・ベイルも、「カメラ」に記録されなかった所。この世に希望が存在するという物証(=記録)はないが、それでも希望は存在すると思える箇所だ。
こうなふうに、「嗤う」をキーワードに勝手な解釈も楽しめながら、ヴァン・ベイルがウーツェイやガービッツを相手に、まるで詐欺みたいなことをやらかす終盤の展開が痛快。「人類には絶望したよ」という切り口で物語を進めても、最後に「希望」を描いてくれる。そこが聖悠紀というストーリーテラーの、そして『超人ロック』という大作の、最大の魅力だ。
ロックは最後に、ミリアムと一度だけ「正々堂々」と勝負をしてくれたレーサーとして、彼女の心に刻まれて、消息を絶つ。女神(ディーバ)であるミリアムに、永遠の片想いをさせてしまったかのようなラストは最高だ。
お薦め度:★★★★★
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【検索用】超人ロック嗤う男 聖悠紀 4
『さよならチョコレート』/音久無

だからもう チョコレートはやめて
俺とつき合おう!
(森永チロルから明治青架へ)
『女王様の白兎』第1巻と同時発売だった、音久無さんの短編集。この、儚いような危ういような、切なさに満ちた世界に心を奪われて、何度も読み返したくなる心地よい読後感がある。採録されている5本の短編は、どれもはじめは切なくて、終わり方が暖かい。5作とも、苦しみの中であがいたり、声を殺して泣いたり、痛みをこらえているような子が主人公。そういう主人公が最後に笑ってくれるから、読み終えると暖かな気持ちがわき上がってきて、とても幸せな気持ちになれる。
初出を見ると、発表された順に採録されているので、新作を描く度に味わいが増してきたのが分かる構成にもなっている。巻頭に掲載されている受賞作『ヒトサンマルマル』の二人の不器用さや、『多彩信号』に漂う孤独さから始まって、三番目に掲載されている表題作では、一作の中で悲しみと楽しさの両方を描きながら、見事に調和が取れている。最後の『三島古書店浪漫譚』の、「字が読めない」という切なさの描き方は本当に素晴らしい。作者が自身の作風を確立した瞬間と言っても過言ではないかもしれない。
これほど才能のある人なので、十年後、二十年後には驚くほど上手くなっていると思うけど、この持ち味は、ずっと無くさずにいてほしい。
お薦め度:★★★☆☆
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【検索用】さよならチョコレート 音久無 1
『花とゆめ』2012年4号

『暁のヨナ』第49話「暗黒龍と ゆかいな腹へり達」/草凪みずほ
ヨナ一行、賊を始めてしまう。留守番をしている時の、ヨナとシンアのやりとりに、じーんと来る。
名前をあげたシンアを闇から連れ出したい、けれどシンアを追い詰めたりはしない。そういう、弓や剣とは正反対の「強さ」を、ヨナは持っている。
『天使1/2方程式』13時間目/日高万里
マナくんのことばかり考えているゆい子。「5秒」で済む本の貸し借りを続けている上野くんを、どうやら「男」と認識していない。『有閑倶楽部』をもう一度借りたいという選択も渋い。
『月刊なかとば』/山口舞子
この煎餅の袋は思い出の品!
『モノクロ少年少女』#56/福山リョウコ
「応えたらアカン」理由が、姫菱先輩の口から明らかに。そして今の呉羽も、姫菱先輩が好きだった子と同じ、「最後の審判」を下す立場にいる。「出来る限りの可能性を残しといてほしいんや」という、皆を思いやる言葉が、とても残酷だ。
『声優かっ!』voice.51/南マキ
瑞希先輩と久遠千里が、シロの取り合い(笑)をしている。
シロの正体を知らないくせに、久遠千里のほうが、シロと親密。そこが良いんだ!
『ろっぱん!!』Trick 9/トビナトウヤ・ハラダカケル
六本木さんの「蹴り」は、桃の一言から始まった。こういう、童話のような世界で芽生える友情の描き方が楽しい。
『女王様の白兎』episode.10/音久無
レイシーがどんどん素直になっていく。「文献」で得た知識しか持っていなかった異星人の王女が、地球人と共同生活をしながら「経験」を積んでいる。「病気なのかも知れない」と勘違いした、その気持ちをレイシーがどんなふうに理解するのかも楽しみ。
『俺様ティーチャー』第77回/椿いづみ
夏男が仕掛ける、頭脳戦、七色の声、霊視…は、ことごとく頓挫。それでも野上番長まで辿り着けてしまい、「遅れて ごめんね」の一言で、夏男は歌音の、王子様になれる。ただし、あくまでも「男装」なので、歌音の「王子嫌い」が完全に克服されるまで、夏男=真冬だとバレるわけにはいかない。まふまふは、背負っている重荷を自分で増やしてしまう不器用さんだ。
『それでも世界は美しい』第6話/椎名橙
ニケ姫、なんと威厳のあるお姿、本当にご立派な王妃候補になられて…。と、思ったら、「やっぱり一発殴らせろっ」と、いつもの性格が露呈。それでこそニケ。
第1巻が、ようやく届いた。6号から連載になるようで嬉しい。

『Unknownの魔導書』最終回/師走ゆき
このシリーズは良かった。これまで出てきた、「現実逃避」「残留思念」「自己顕示欲」のどの悪魔も、否定的な意味を持つ言葉なのに、それを題材に心温まるお話を創っている。最終話の悪魔は「疑心暗鬼」で、人が持つ負の感情としては、誰でも抱いたことのある、最も身近な物だと思う。もしかしたら作者は、最後にこれを描こうと、「疑心暗鬼」を最終回のためにとっておいたのかもしれない。
ヨナ、モノクロ、それでも世界は美しい。

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【検索用】花とゆめ 白泉社 201204
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