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山梨学院大学 vs 日本大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.11.03)の感想

2014-11-09 22:00:19 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


いよいよ後半戦に入ったリーグ戦。毎シーズン、混戦模様となるが当たり前のような状況になっているが、今年は上下位が入り乱れた乱戦状態と言った方が正しいのかも知れない。そんな中、第5節を迎えて1勝3敗の日大と4戦全敗の山梨学院の戦いは入替戦回避に向けたサバイバルマッチであることは間違いない。しかし、日大は東海大に大敗したあと中央大に勝利したのに対し、前節に必勝を期して中央大に挑んだはずの山梨学院は返り討ちにあうような形で大敗を喫した。常識的に見れば、日大が優位のはずだし、そもそも1部リーグで未勝利のチームなら与しやすいはず。上位チームに食い下がってきた山梨学院とはいえ、ここは日大が貫禄を見せてくれるはずと誰もが思う。劣勢が予想される中で山梨学院の悲願達成なるか?がこの試合の見どころだった。



◆キックオフ前の雑感

日大は戦列復帰を果たした4年生のNo.8高橋優一やWTB南波らをふくむメンバーでこれが3試合目となる。東海大に昨年の悪夢を思い出させるような大敗を喫した1年生を多く含むメンバー構成には疑問を感じずにはいられないが、中央大に勝利し、流経大ともスコアの上ではそこそこ戦えていたようなので結果オーライといったところか。マイケルは結局FBに落ち着いたが、頼みのキテのポジションがなかなか決まらない。また、SHもスタメンは谷口だが、柏原と併用の形が去年から続いていた。そしてSHの控えには3年生の有久が入っており、この試合で3試合目となる。チーム状態が安定しないのはそんなところに原因がありそう。ここは上級生が纏めるしかないのだろうか。

翻って、山梨学院はほぼ不動のメンバーで5戦目を迎える。ただ、SHに起用された前原(2年生)は初スタメン。トコキオや大石主将を軸としてFW戦主体で戦う山梨学院にとって、SHはキーポジションと言えるだけに負傷が癒えたためなのか抜擢なのかが気になるところ。アタックではどうしてもトキオコにマークが集中するため、BKに展開する形も増えてくるはず。中央の覚醒もあって過去4試合は厳しい戦いとなったが、今度こそ1部復帰にあたっての悲願となっている1勝を果たしたいところ。



◆前半の戦い/戦術不変で臨んだ山梨学院に対し、意図不明でちぐはぐな日大

無風でやや気温が高めのコンディションの中、山梨学院のキックオフで試合開始。開始早々から山梨学院がプレッシャーをかけて日大陣10m/22mの位置で日大の反則を誘う。立ち上がりと言うこともありここは慎重にショットかと思われたが、山梨学院は日大陣ゴール前からのラインアウトを選択。しかし、山梨学院はモールを形成して押し込み、開始2分にしてあっさり先制点(GKも成功して7点)を奪う。相手が得意としているプレーとは言え、日大FWのディフェンスに粘りが見られないことが気になった。

リスタートのキックオフから山梨学院はハイパント攻撃。これも今まで通りの形だが、確保を狙ったWTBの選手が惜しくもノックオン。日大はHWL付近のスクラムからオープンに展開するものの、ラックでのミスから逆襲を許しオフサイドの反則。山梨学院は再び22m付近でラインアウトのチャンスを掴むが日大に反則が続く。しかし、山梨学院はいつもに比べてラインアウトが安定しない。ゴール前でのラインアウトのチャンスもオーバースローになってしまい日大がボールをタッチに蹴りだす。10m付近のラインアウトからのアタックもミスで日大のボールを渡す形となり、日大は(蹴らずに)オープン展開で攻めるがパスミスでチャンスを潰しなかなか敵陣に入ることができない。

ここで山梨学院はスクラムからオープン展開で攻めるが、パスミスを拾われてカウンターアタックを許す。しかし、日大は山梨学院のディフェンスに捕まってノットリリースの反則。ゴール正面やや左25mのPGを小川が慎重に決めて山梨学院が開始10分でリードを10点に拡げた。ミスが多い中にも手堅さを見せる山梨学院に対し、日大は自陣から積極的に攻めるものの反則を重ねて波にの乗れない。去年は2部で戦っていたとは思えないくらいに山梨学院の落ち着いた試合運びが印象に残る序盤戦の戦いだった。

敵陣にまったく行けなかった日大だが、12分、山梨学院陣10m/22mでのラインアウトを起点としてオープン展開で攻める。しかし、ラックでターンオーバーされて山梨学院の逆襲を許しを、ボールを一気に自陣22m付近まで運ばれる。ここは山梨学院のオフサイドに救われたものの、ブレイクダウンの攻防でも劣勢に立たされる日大に対し、ファンは不安を抱かざるを得ない。しかし、日大は19分にようやく一矢報いる。山梨学院10m付近のラインアウトからオープン順目にボールを展開して山梨学院ゴール前までボールを運びラック。ここからHO庵奥が抜け出してゴールラインを越えた。マイケルのGKも決まり、日大が7点を返してビハインドを3点に縮める。

ここで日大に落ち着きが出たと思ったのも束の間、24分に再び自陣での反則からPGを決められてリードを6点に拡げられる。日大は自陣からも蹴らずにオープン展開で攻撃するのに対し、山梨学院はキックでエリア獲得を目指す慎重なゲーム運び。日大のFBはマイケルなので、カウンターアタックのことを考えるとキックは控えめにしたいところ。しかし、山梨学院はむしろマイケルにボールを持たせることを狙っていた感がある。というのも、マイケルが常に2~3人にマークされており、タックルに遭った時点でボールが止まってしまっていた場面が多かったから。マイケルにスペースを走らせるなど日大には工夫が欲しかったところ。No.8の高橋がその辺りを意識した動きを見せていたが、セットプレーからだと限界がある。オープン展開でもライン参加して奮闘する8番の姿があっただけに、彼が春から本シーズンの2戦目までAチームから離れていたことに疑問符を付けざるを得ない。

日大のアタックにキレが見られない中で、山梨学院も完璧なはずのラインアウトでミスが目立つなど過去4試合と比べると精彩を欠く内容。32分には、日大が山梨学院ゴール前のラインアウトからモールを形成して前進し、ゴールに迫るものの危険なプレーの反則を取られて山梨学院が命拾いする。得点板が13-7(山梨学院リード)でなかなか動かない膠着状態の中、前半終了間際の39分に日大に得点が生まれる。山梨学院陣22m付近のラインアウトからのオープン展開により中央付近でラックとなったところからLO小川が抜け出してトライ。GKも成功して14-13と日大が1点差ながら逆転に成功する。

このまま1点リードで前半を終えたかった日大だが、山梨学院が粘りを見せる。日大陣10m付近でのラインアウトからFWでサイドを攻めたところで日大にオフサイド。山梨学院の小川が右中間32mのPGを決めて16-14と再逆転に成功した。日大に勢いが出かけた直後だっただけに、後半に向けて山梨学院にとっては貴重な得点、逆に日大にとっては不必要な失点だったと言える。



◆後半の戦い/確実にエリアを取り加点する山梨学院に対し、終了間際までチグハグだった日大

点差から見れば拮抗した展開になったものの、山梨学院のミスに助けられた感のある日大だった。後半こそは地力を発揮したいところだが、前半のアタックを観る限りはマイケルの突破意外に決め手に欠ける内容。そのマイケルも徹底マークに遭って持ち味を発揮出来ているとは言い難い。翻って山梨学院は調子が出ない中でも過去のラグビーで通している。シーズン当初はスペシャルプレーを用意していることも考えられたが、最後までこのまま(FW主体の手堅いラグビー)で行くようだ。また、そのことにより、ゲームが崩れない。やや不調の中でも山梨学院ファンは安心して試合を観ることができている。

日大のキックオフで始まった後半だが、山梨学院の蹴り返しに対するかカウンターアタックの局面でマイケルがチョークに遭いモールアンプレアブルで攻撃権は山梨学院に。意図があったかどうかは分からないが、マイケルにボールを持たせることで逆にを孤立化させることに成功しているように見えてしまう。やっぱり日大には策がないと考えざるを得ない展開。後半は日大が山梨学院陣に殆ど入ることができない一方的な展開となる。山梨学院に得点力があれば、そのことが得点差という形ではっきり現れたと思う。

5分、山梨学院は日大陣10m/22m(右サイド)で得たPKのチャンスで狙わずに日大G前へタッチキック。そして、ラインアウトからモールを形成し、FWで攻めて大石主将がゴールラインを越えた。GKも成功して23-14とリードを拡げる。山梨学院はFWで行けるという感触を得ていたと思うが、FWが踏ん張りきれない日大ファンはもどかしかったはず。しかし、後半16分、山梨学院にピンチが訪れる。FWの中心で得点源のトコキオが負傷によりピッチを去る。が、ここからの山梨学院の危機感をバネにしたような結束力が見事だった。日大は自陣22m内からもなかなか脱出できないピンチの連続となる。

23分、小川のドロップゴールは外れるが、27分にはPGを決めて26-14と山梨学院はリードをさらに拡げる。エース退場をものともせず、エリアを支配し、着実に加点して試合を進める当たり、昨年2部に居たのはどちらなのかと言いたくなるくらいに山梨学院は手堅い試合運びを見せる。そして33分、日大が自陣22m内のラインアウトからオープン展開で反撃を試みたところで山梨学院がボールをもぎ取って逆襲。モールを形成して大石主将がゴールラインを越えてグラウンディングに成功し33-14(GK成功)となる。チームの勢いから見ても、ここで勝敗は決した。

残り時間が僅かとなる中で、このまま試合終了になれば大石主将を中心として山梨学院の選手達による歓喜の輪が築かれるはずだった。しかしながら、38分に大石主将が危険なプレー(ノーバインドタックル)によりシンビンを適用されて一時退場となる。ここから日大が怒涛のアタックを見せて途中出場のCTB金とSH有久が2連続トライで気を吐く。有久に至っては39分にピッチに出場したばかりで、GKは二人ともドロップキック。皮肉にも途中出場の選手達が意地を見せた形で日大はあっと言う間(僅か2分あまりの間)に14点を返す。スコアは28-33と拮抗するものの、いかんせん遅かった。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に大石主将がピッチの中に居ないというやや盛り上がりを欠く状態ではあったが、山梨学院サイドから1部初勝利の喜びの声が上がった。最初に1部昇格した時からこのチームを観ているが、入替戦も含めてとにかく勝利が遠かっただけに、喜びもひとしおだろうと思った。



◆祝1部初勝利/本調子ではなかったものの「継続は力なり」を感じさせた山梨学院

ここまで山梨学院の戦いはすべて観ている。そんな中で、実は今日の出来が一番よくなかったように思う。前節で初勝利を目指したはずの中央大戦、相手の出来が予想以上によく返り討ちに遭ってしまったような形でダメージが大きかったのかも知れない。また、上位校との戦いを重ねていく上で疲労が蓄積していったとしても不思議はない。さらにこの日は頼みのトコキオもピッチを去る形になってしまった。そんな中でも初勝利を掴めた要因として、「継続は力なり」が最適な言葉のように思う。

BKに決め手となる選手が居ない中で、緒戦の流経大戦から山梨学院はFW中心の手堅いラグビーに徹してきた感がある。FWで2ユニットを組んでジグサグで前進した後判で押したようにハイパント。徐々にBKへ展開する形は増えてきたものの、5戦目のこの日も基本的には同じ戦い方だ。当初は後半戦に向けた秘密のオプションがあるのではとも思っていたが、バランスを少しずつBKにシフトしつつも同じ形で通してきている。考えてみれば、普段やっていること以上のことはなかなかできないのはどのスポーツにも共通する。むしろ「普段着」の戦いを続けることがチームに安心感をもたらすことになる。だから、FWでのボールキープも含めて「継続は力なり」と感じた。

1勝を挙げたとは言え、山梨学院の前途は茨の道であることに変わりはない。法政が難敵であることはもちろんのこと、立正大も東海大を苦しめる力を持っている。また、今シーズンの入替戦は例年にもまして厳しいものとなるだろう。仮に2部に戻ることになってしまったら、今シーズンの努力は水泡に帰してしまいかねない。この1勝に満足することなく頑張って欲しい。

◆どうした!日大

試合を観ながらずっと感じていた。日大は「どうしてしまったのか」、そして「どうしたいのか」ということを。山梨学院は前にも書いたようにずっと同じラグビーで通してきているし、戦力も殆ど変わらない。だから対策は立てやすいはず。しかし、日大に「自陣からでもキックは使わずに継続」以上の意図は見えなかった。また、カウンターアタックでマイケルがボールを持つ機会も多かったが、それをうまく活かせず、反則などで逆に山梨学院にチャンスを与える結果となっていたように思う。

しかし、それ以上に気になることは、日大はそもそもどんなラグビーがやりたくて、そのためにどのようにチームを作っているのかが見えてこないこと。ここが最大の問題点のように感じる。首脳陣の選手選びは「同じ力を持つなら下級生を使う」という方針とも伝え聞くが、チーム作りを考えるなら「同じ力を持つなら経験のある上級生を使う」べきではないのだろうか。そうでなければ、いつまで経ってもチームの骨格が出来上がらず、(ファンや選手達が期待する)勝利という結果もなかなか出せないように思う。

今シーズンで6シーズン目を迎えた加藤HC体制だが、一番印象に残っていることは初年度の緒戦直前での一コマ。試合会場の最寄り駅である西葛西駅に着いたときに、身体の大きな選手達の集団があった。見覚えのある留学生の選手が居たのですぐに日大の選手達と分かったのだが、とてもシーズンの1試合目を戦う集団のようには見えなかった。普通の感覚なら、「いよいよシーズンが始まる」といった緊張感はあってもどこか浮ついた状態になっているはずと思う。しかし、日大の選手達が醸し出す雰囲気は、これからあたかも苦行難行が待ち受けているかのようだった。

しかし、流経大が相手の試合では健闘し15-17の惜敗。勝てるチャンスも十分にあった試合で、パス回しの巧みさなど、過去の日大にはなかった要素が加わり「新体制」に期待を抱かせる内容だった。ここで勝っていればその後の展開は違っていたかも知れない。ちなみに流経大は4位でシーズンを終えている。

第2戦の中央大戦は内容的には勝ち試合だったが、インゴールノックオンなどの凡ミスの連発が響き12-18で敗戦。中央大の宇野選手のキック力が光った試合でもあった。

そして第3戦(前橋)。ここでSOとしてデビューしたのがルーキーの小川だった。(小川は緒戦でも後半の途中から出場しているがWTBの選手との交代)。相手は大東大で強力な向かい風の影響もあり僅か15分余りで5トライを奪われ35失点を喫するという悪夢のような試合となる。小川は非凡なプレーを見せたものの、ここからチームの方針ががらりと変わる。

第4戦からは、キックを封印された無謀とも言える継続ラグビーが始まった。FW、BKともパワー不足でこのラグビーをやったらどうなるか。せっかく継続してもボールをどんどん後ろに下げられ、ターンオーバーでトライを献上。失点ばかりが増えていく、今まで観た中でももっとも悲壮感が漂うラグビーがシーズン終了まで続行された。

しかし新体制2年目で日大は飛躍を遂げる。SO小川の個人能力頼みの部分があったとは言え、得点力が大幅にアップし前年度の悲惨な状態から脱した。さらに3年目は小川がSHに転向して攻撃力はさらに向上。単独でも他の選手を使っても取れるラグビーで日大のラグビーに華が出てくる。そして4年目。小川が主将としてチームをさらに飛躍させる。主将になると選手としての持ち味が薄くなってしまう選手が多いが、小川は逆に自身の突出を抑えて選手を使いチーム全体を活性化させるような役割に徹していた感があった。4年間で自身のプレーだけでなくチームをここまで変えた選手は記憶にない。

そんな流れで見ると、5シーズン目は(小川は抜けても遺産としての)チームとしての熟成があるはずだった。が、そんな期待も東海大戦や流経大戦などの大敗で消えてしまう。6シーズン目の今シーズンもしかり。東海大戦を見る限りは、昨シーズンからの上澄みがまったく感じられない。選手起用法がすべてではないのかも知れないが、下級生がスタメンで、リザーブ登録の上級生が途中出場で試合を落ち着かせたような状況を観ると、選手起用の順番に疑問を呈さざるをえなかった。

チーム作りに関して迷走状態が続いているように見える日大は何処に行ってしまうのだろうか。

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