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立正大学 vs 日本大学(関東大学ラグビーリーグ戦G-2014.11.15)の感想

2014-11-16 22:35:42 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


開幕から2ヶ月を経てリーグ戦もいよいよ大詰め。快晴で絶好のラグビー日和に恵まれた江戸川区陸上競技場では、「入替戦回避」と「優勝争い」という意味は違うが「サバイバルマッチ」が2試合組まれている。ここは陸上トラックがあるもののバックスタンドは球技専門の競技場並に観やすいし、芝生の状態もよさそう。第1試合を戦う立正、日大ともに前節は後味の悪い試合をしているだけに気持ちを切り替えて試合に臨みたいところ。競技場に入ってからスコアボードのある側を歩いてバックスタンドに向かったが、立正大が気合の入った練習を行っている様子が目に留まりひとまず安心した。



◆キックオフ前の雑感

前節山梨学院に敗れ、後がなくなった日大は必勝態勢で臨むはず。と思ったが、メンバー表を見る限りはまだまだ試行錯誤が続いているように見える。前節No.8で出場した高橋優は再びベンチに下がり、キテがNo.8に座った。また、終了間際の出場で秒殺トライ(+ドロップキック)で気を吐いた有久の先発起用もなくベンチスタートになっている。全般的に大人しい選手が多い日大にもっとも必要なのは(勝利への)気持ちが強い選手のはずなのだが、首脳陣はどう考えているのだろうか。また、試合ごとに背番号が変わるエースのマイケル・バー・トロケも本日は12番で登場。本日こそは迷走状態を脱しないと日大は崖っぷちに立たされることになる。

立正大は前節の法政戦でレッドカードをもらい退場処分となったフィララ・レイモンドが出場せず、代わりに出場が予想されたブライス・テビタ・エドウィンはベンチスタート。春シーズンはレイモンドと強力なタッグを組んでいた印象が強いので、よほどフィットしていないのだろうか。また、終盤の大切な試合でエース早川の名前がリザーブにもないのが痛い。FBの新人アライアサ・ローランド・ファアウィラはキック力よりもランニング能力を期待されているはずなのだが、現状ではそうなっていないのも気になる。と不安材料はいろいろとあるが、過去のチームに比べても地力が上がっていることは確か。メンタル面の進化とつまらない反則などの凡ミスを減らすことができれば、もっと上に行けるはずだ。



◆前半の戦い/戦術は明快ながらもお互いにミスが多く決め手を欠く展開

バックスタンド側から見て左から右にやや強い風が吹くコンディションの中、風下に立つ日大のキックオフで試合が始まった。立正大がボール確保に失敗したところから日大のアタックが始まる。本日はFWに近いインサイドCTBの位置に立つマイケルを活かす形で日大はオープン展開主体で攻める。順目から逆目とボールを散らすことで日大の目指す戦術はポッドと分かる。ボールが右に左にと大きく動く中、立正大が自陣22m手前で反則を犯し、日大はSO市川が正面30mのPGを狙うが外れる。この位置ならマイケルがしっかり決めていたはずと思うとちょっと複雑な心境だ。

日大はリスタートのドロップアウトからのカウンターアタックも攻めきれずに反則を犯し、立正大は風上に立っていることにも助けられ自陣からの脱出に成功する。5分、日大陣10m/22mの位置からのラインアウトで日大がノックオン。立正大スクラムからのアタックはブレイクダウンでのターンオーバー合戦を経て、立正大がエリア獲得のキックに成功。日大のポッドに対し、立正大はFWのシェイプを主体として手堅く攻める。アタックが拡散気味の様相を見せる日大に対し、FWのまとまりのよさで立正大のアタックの方に迫力を感じるのだが、いかんせんミスが多いのが残念。

8分、今度は立正大が正面22mの位置でPGのチャンスを得るが、日大にお付き合いする形でSO原嶋が外してしまう。立正大もFBアライアサがプレースキッカーを務めているはずだが、(彼が蹴らないのは)ロングキックでないためなのだろうか。両チームとも決めなければならないキックを外してしまったことに対し、キッカーの選択に疑問が残った。しかし、日大はボールを動かし続けることでペースを握る。14分の立正大ゴール前ラインアウトからのチャンスはモールを形成して前進。FWがサイドを攻めるものの、ノックオンでチャンスを潰す。

立正大はスクラムからのタッチキックでピンチを脱したかに見えた。しかしながら、日大は立正大陣10m/22mでのラインアウトからBKのラインアタックで前進を図り、最後はエースのマイケルゴールラインを駆け抜ける。GKも成功し、日大が7点を先制する。マイケルは当然立正もマークしており、日大がオープンに展開するごとに「トロケ(警報の)」コールが立正大側から連呼される。しかし、マークが集中してもマイケルはFWに近い位置に立った方が機能するようだ。あとは決められる選手がもうひとり欲しいところ。

このまま日大がペースを掴むかと思われたのも束の間、立正大は直後のキックオフの蹴り返しに対するカウンターアタックからボールを前に運ぶことに成功し、日大陣に入って左WTBがタッチライン際をゴールに向かってひた走る。フォロワーも居るからパスワークで思ったら、裏へのチップキックが飛び出し、一瞬「あ~あ、蹴ってしまったか」とガッカリモードに陥る。しかし、フォロワーが複数いたこともあり、ラッキーバウンドを拾ったFL籾山がインゴールでグラウンディングに成功する。結果オーライだが、陸上競技場でインゴールが狭い中、リスキーなプレーは避けて欲しいところ。GKは失敗するが立正大が5点を返す。

試合は、積極的に攻める日大のペースで進む。21分には立正大のゴール前でのスクラムのチャンスを掴むがフェイズを重ねてオーバー・ザ・トップ。この日の日大は攻め込んではオーバー・ザ・トップの反則が多く、修正できずにチャンスを潰すシーンが散見されたのが残念。22分には立正大がHWL付近のラインアウトを起点としてモールからSHのボックスキックで前進を図るがダイレクトタッチ。しかし、日大も同じくラインアウト起点のSOのキックがダイレクトタッチと仲良くミスまでお付き合いでは試合も盛り上がらない。「流石はサバイバルマッチ!」などと笑っているわけには行かないのだ。

しばらくゲームは膠着状態となるが、27分に日大は立正大陣でのラインアウトを起点としたアタックからゴール前まで攻め上がる。立正大の粘り強いディフェンスに遭うものの、最後はNo.8キテがようやく強さを発揮してボールをインゴールにねじ込む。GKはまたしても外れるが12-5と日大がリードを7点に拡げる。しかし、立正大もFWのシェイプを主体としたアタックで攻め上がり、日大ゴール前で反則を誘う。ここはアライアサがPGを確実に決めて12-8と日大のリードは4点に縮まる。終盤は日大陣で押し気味に試合を進めた立正大だったが、肝心なところでミスが多かったこともあり決めきれずに前半が終了した。



◆後半の戦い/決め手を欠く日大に対し優勢に試合を進めた立正大だったが...

前半はポッドでワイドにボールを動かした日大。マイケルも(ターゲットにはなっても)WTBやFBよりもFWに近いインサイドCTBに位置した方がボールを持つチャンスも多く強さが活かせることがわかった。しかし、きれいにボールが動くアタックであることに間違いはないが、突破役が少ないことはさておき、何かが足りない。結果として有効な突破が少ないからそう言える訳だが、その理由は後半も14分を過ぎたあたりではっきりと分かることになる。

一方の立正大は、得点こそ日大を下回っているが、チームのまとまりの点では日大を上回っている。FWのシェイプで確実にボールを前に運ぶラグビーができている。しかしながら、立正大の場合はミスが多い、それも「もったいない系」の避けられるものが多い。緒戦の中央大戦を落としたのは致命的なミスを重ねたことに原因があったわけだし、東海大戦での1点差負けもある意味プレーの選択ミスが原因。後半は風下に立つとは言え、丁寧に確実に攻めれば日大の得点を上回り勝利を掴むことは十分に可能なはずだ。

立正大のキックオフで始まった後半戦、日大の自陣奥深くからのタッチキックがダイレクトとなり、ここで立正大が日大陣22mでのラインアウトという絶好にチャンスを掴む。立正大はモールを形成して前進を図るが、ここで日大FWが一瞬エアポケットに落ちたような状態となる。塊から抜け出した立正大のNo.8千葉が本人もびっくりと言った感じで一気にゴールラインまでボールを運んだ。GKも成功して15-12と立正大が逆転に成功する。一気に盛り上がりを見せる立正大応援席だったが、またしても痛過ぎるミスが出てしまう。

リスタートのキックオフで立正大の選手がノックオン。これは普通にあるプレーだが、何と前に居た味方選手がそのボールに触ってしまうと言う画に描いたようなノックオンオフサイド。それも相手がゴールキックを狙える位置(左中間22m)ということで、日大は労せずして3点を返し試合を振り出しに戻す。ノックオンは仕方ないとして、後ろにも選手が居たわけだし、ピンチではあっても一気にボールをインゴールに運ばれるような状況でもない。毎試合こんなプレーが出てしまうのは本当に残念。ミーティングで指導するようなことでもなく、コーチは頭を抱えるしかないだろう。

立正大の手痛いミスが劣勢に陥りかけていた日大を救う。7分に立正大陣10m付近のラインアウトからBK展開でフェイズを重ねゴールラインを脅かすが惜しくもオブストラクション。立正大は命拾いした格好。さらに10分、日大は立正大陣10m/22mのラインアウトからFWで前進を図るもノックオンでチャンスを逃す。ここから立正大がFW主体でフェイズを重ねて日大陣22m手前まで前進し、日大がまたしてもオーバー・ザ・トップ。立正大はゴール前でのラインアウトを起点としてFWで攻め、No.8千葉がトライを奪う。GKも成功し22-15と立正大が再逆転に成功。立正大のアタックに日大の対応も遅れがちとなり、このままの勢いで行けば立正が勝利が掴めそうな流れとなる。

しかし、ラグビーは分からない。一人の選手がピッチに入ることでチームのムードが一気に変わることはままあるが、果たして本日の日大にも救世主が現れた。14分にSH谷口に替わって起用された有久(3年生)がその人。ここまでの日大のアタックに欠けていたのはアタックのリズム感。ホンの僅かのことなのだが、SHからの球出しのテンポがよくなるだけで、それまで半ば死んでいたようなBKラインに生命が吹き込まれた様になるから不思議。上で書いたこと(日大には何かが足りない)はこのことだったのだ。時間が経つにつれてそのことは明確になっていく。

ちょっと古い話になるが、かつての日大で強く印象に残っている選手としてトップリーグのヤマハやトヨタで活躍し日本代表にも上り詰めた松下のことを思い出した。アレレ?のプレーも多かった選手ではあるが、歴代の(といっても1997年以降だが)日大のSOでもラインを動かすことにかけてはピカイチだった記憶がある。口で説明するのは難しいが、前に出る間合いが絶妙だったことを思い出す。ポジションは違うが有久も同様で、身振りや手振りに声を駆使してワンテンポ早くボールをSOに供給するだけでBK全体のアタックが活性化されるように感じられた。日大がリードされている状況だが、逆転は時間の問題と思わせるある種ワクワク感すら抱かせたことは事実だ。

さて、形勢が逆転しつつある中、依然として立正大ペースで時計は進む。16分にはラックでのターンオーバーから逆襲に転じて日大ゴールまでボールを運びドロップゴールで追加点を狙うも失敗。う~ん、ここは積極的にFW主体で攻めるべきではなかったか。そうでなくても、潮目が変わりつつあることに気づいて欲しかった。崖っぷちに立たされている日大からすれば、FWでゴリゴリやられる方がダメージが大きいはずだから、余裕で?ドロップゴールを狙ってくれた方が助かったはず。立正大は21分にPGで3点を加点しリードを10点に拡げるものの、ここから有久投入による日大アタックの活性化が顕著になってくる。

日大アタックの起爆剤となった感がある21番を付けた有久がペナルティからも速攻でチームを引っ張る。立正は日大の怒涛のアタックの前に防戦一方となり、29分にはPGを決められてリードを再び7点に縮められる。日大はさらにリスタートのキックオフから連続攻撃で16分にFL山田に替わって登場したばかりの佐々木がトライを奪いGKも成功。日大は遂に25-25の同点に追い付いてしまった。残り時間は負傷者対応のロスタイムがあった関係で10分あまり。事の重大性(形勢逆転)にようやく気づいた立正大が反撃に転じる。入替戦回避のためにも同点ではダメで勝たなければならない。

時計が44分を示したところで日大が自陣で反則を犯し、立正大はタップキックからゴールを目指す。そしてFWのラックからボールが出たところでドロップゴールを狙うが外れる。やっぱりここは攻め続けるべきではなかったのだろうか。日大が反則を犯せばPGでの3点は約束されたような位置なのだ。日大はドロップアウトからマイボール確保に成功して攻めるもノックオン。立正大はスクラムから左オープンにボールを展開し左サイドのWTBにボールが渡る。フォロワーも居るので「ココは勝負!」と思ったらまたしてもウラに蹴ってしまった。繰り返しになるが、ここは陸上競技場。今回はラッキーバウンドもなく無情にもボールはデッドボールラインを越える。

残り時間がどんどんなくなっていく中で、日大はドロップアウトから最後の反撃を試みる。ここでも光ったのが21番を付けた途中出場の選手。ボール確保に成功した有久がボールを前に持ちだして大きく前進しフォローした14番の選手(4年生の南波)にすべてを託す。南波は渾身の力を振り絞ってゴールラインに迫っていき最後のディフェンダーを振り切ったところで日大の選手達が大きなガッツポーズ。劇的な逆転勝利がここで決まった。おそらく今シーズンの日大でももっとも関係者が熱くなったシーンではなかっただろうか。そして、それはチーム全体が待ち望んでいた場面でもある。もし、有久がベンチに居なかったり、居たとしても投入が遅れていたらどうなっていたのだろうか。劇的だが、それと同時に何とも複雑な心境を抱かせた幕切れだった。



◆勝っても喜べない日大/茨の道が続くが一筋の光明も

結果は逆(敗戦と勝利)になったが、前節の山梨学院戦と印象はまったく変わらない。「なぜ(勝利を掴む上で)最初からベストの陣容で試合に臨まないのか?」ということ。僅か1分あまりの出場でもトライを奪うという結果を出した有久が、この日は勝利を掴む上での立役者となったことは間違いない。短い時間でもしっかり結果を出せる選手が居ることを思うと、昨シーズン、ルーキー同士でSHの正位置を競わせたのは何だったのだろうかと思わざるを得ない。本日の勝利で最下位からは脱することができたが、依然として入替戦に限りなく近い位置にいることは間違いない。この日の喜びとそこに至った原因がはっきりしたことは最良の薬になると信じたい。最終戦だけでもベストの布陣で悔いのない戦いを見せてくれることを切に願う。

◆立正大の課題/簡単そうで実は克服が難しい

この試合は勝たなければならない試合だし、勝つ可能性は十分あった。過去の2戦の感想(中央大戦と山梨学院戦)でも書いたとおり、この試合も防げるはずのミスが命取りになってしまった形。消極的に見えてしまうプレーの選択といい、何度も同じことが繰り返されるということは偶然ではなく、構造的な要因があると考えざるを得ない。十分に練習を積んでいることはよく分かる。でも何かが足りない。簡単に克服できそうな課題ほど、実は克服が難しいと言えなくはないだろうか。残念すぎる敗戦を2つも続けてみてしまうと、そんなことを考えざるを得ない。

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