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第52回大学選手権@熊谷(2015年12月20日)大東vs慶應&帝京vs関大の雑感

2015-12-22 01:55:58 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


大学選手権のセカンドステージが始まって今日が第2日。2週続けての熊谷ラグビー場通いだが、先週は雨模様の中での関東リーグ戦Gの1-2部入替戦の観戦だった。何だか周(週)回遅れのような感じもするが私的大学選手権の開幕戦。快晴の天候に恵まれ熊谷名物の赤城おろしの冷たい風との戦いもないとあって、最高のラグビー日和になった。同じ日に関東地区では3会場に分かれての選手権開催となったが、埼玉県民だから熊谷をセレクトした。

という理由ももちろんあるが、リーグ戦Gファンとしては大東大の魅力的なパスラグビー開花を見届けたい気持ちが75%くらい。そして、帝京に挑む関西大学のラグビーも観てみたい気持ちも25%くらい。生まれてから大学までを関西で生活した人間だが、関西大学のユニフォームを観るのは実は初めてである。同志社は初Vの少し前から観ているし、立命館が同志社を初めて破った試合も京都で観た。関西学院も1部昇格で存在感を示す中で、「関関同立」では最後に1部に上がってきた関西大学はどんなラグビーをするのだろうか。

それはさておき、本日はいつものメインスタンドではなくバックスタンドでの観戦。しかし、本格的に関東リーグ戦グループの観戦を始めた1997シーズンの頃は、リーグ戦の殆どの試合が熊谷で行われていた。そして、その頃はバックスタンドからメインを拝むような形で試合を観ていた。だから、何だかホームに戻ってきたような気持ちになるから不思議。バックスタンドの魅力はなんと言ってもすぐ目の前にピッチがあること。座席の最後列でもちょうどメインの最前列くらいの高さだから「全体」を観るのには適さないかも知れないが、ここで味わえる臨場感は格別だ。それと、メインの応援席から隔絶されることでラグビーに集中できるのもいい。

そんな思い出に浸っていると、メインスタンド側から第1試合を戦う大東大と慶應大の両チームの選手達が入場。つい1週間前とはまったく違って華やいだムードになるのは、天候のせいだけではない。大学ラガーたるもの、どこの会場でもいいから一度は立ってみたい憬れの舞台だから。流石に地元の大東大ファンが多く、各選手への期待を込めた熱い声援があちらこちらから飛ぶ。いよいよ熊谷での熱戦がキックオフ!

■大東文化大学vs慶應義塾大学



第1試合は、緒戦で筑波大を破り勢いに乗る大東大と同志社に敗れて後がなくなった慶應大の対戦。そんな両チームのメンタル面の違いは別にして、この試合に対する私的見どころは慶應が着実に進化を遂げている大東大のアタックにうまく対応出来るかどうかだった。慶應は春季大会で2年続けて大東大と対戦している。1年目は予想外の大敗を喫したものの2年目(今季)は先行逃げ切りに成功して勝利。しかし、現在進行形の大東大のアタックは去年とも、そして今年の春とも違っている。サウマキが戦線離脱を余儀なくされる中、WTB戸室のCTBへのコンバートが功を奏しモデルチェンジに成功。去年なら小山を徹底マークすればよかったし、今年も本来ならサウマキがターゲットになったはず。それが現在の大東大は、小山が起点ではあるものの、どこからでもアタックが仕掛けられる「全員がアタッカー」のような対戦相手にとっては厄介な相手になっている。

果たしてキックオフからそんな大東大のアタックがピタリと填まる。30分経たないうちに4連続トライと慶應が為す術のない状況に陥ってしまった。慶應は正攻法で来るチームに対してはしっかり対応できるチームというイメージがある。しかし、大東大のような変則アタックのチームは対抗戦Gにも見当たらず、かなり手こずるのではと予想した訳だが、それが当たってしまった格好。No.8とWTBの二刀流がフィットしてきたアマト・ファカヴァタの調子が上がっていることも不運だったと言える。後半も3分に大東大が先にトライを奪ったことで早々と試合が決まってしまった印象。

リーグ戦では殆どメンバーを替えなかった青柳監督だが、この日は後半18分から少しずつメンバーを入れ替えてリザーブ全員をピッチに立たせる余裕も見せた。大東大の持ち味は1人1人が個性的でもチームとしてはバラバラにならない一体感があるところだと思う。でも、さすがにメンバーがどんどん変わっていくと、ベンチを温め続けた選手はどうしても精彩を欠いた動きになりがち。また、後半は追いタックルで慶應の攻撃を何とか止める形が増えていき、2トライを許すなどすっきりしない終わり方だった。ここは次戦のベスト4がかかった同志社戦に臨むにあたっての不安材料だが、青柳監督がしっかり手綱を引き締めるくれることと思う。



■帝京大学vs関西大学



第二試合は王者帝京に明治か?と錯覚してしまうようなジャージーを身に纏った関西大学(関大)が挑む。どうしても「関大がどんなラグビーを見せてくれるか」の前に「果たしてどこまでディフェンスが保つか」が第一の関心事になってしまう。果たして、キックオフから帝京の容赦ないアタックが続き、1分、7分、11分、14分に連続してトライを奪って26-0。ちなみに第一試合では大東大の4トライ目が26分だったから、その倍に近いハイペースで得点板が動いた形になる。おそらく、関大にとっては未体験ゾーンに迷い込んだような形で為す術もない状態になっていたことと思われる。

しかし、18分に関大がPGで3点を返してから少しずつ流れが変わってきた。もっとも、キックオフから防戦一方とは言え、ひたむきにタックルを決めていたから最初から意気込みは違っていたことと思う。ただ、わかっていても止められない強力な攻撃に晒されたら大抵のチームは腰が引けてしまうだろう。しかし、この試合はそうならなかった。それは、ピッチに立つ選手達を応援で力強くサポートした控え部員達の力によるところが大きい。このまま行けば100点ゲームは確実の状況でも、応援のボルテージはいっこうに下がることがない。ここでふと気がついた。いまだかつてこんな元気いっぱい(もちろん空元気ではない)の部員達による応援に遭遇したことがなかったと言うことに。

何だか応援団に乗せられる形で元祖関西人の血が騒ぐような状態になってしまった。もちろん、応援で失点が止まるわけでもなく、帝京側の得点板の数字は確実に増えていく。だが、関大のディフェンスがひるむことはなく、また、少ないチャンスでも徐々にアタックができる状態になっていく。これは感動ものである。まだまだゴールラインどころか22mラインも遠い状況だが、何とか1トライでも取って欲しいと願いながら応援を続けた。

果たして後半も開始早々の1分にも満たない時間帯で帝京があっさりとトライを奪う。しかし、やっぱりダメかと思ったのも束の間だった。関大の初トライは意外な形であっさりと生まれる。帝京が自陣からオープンに展開したところで関大のCTB三谷がインターセプトに成功しゴールラインに到達する。関大の応援団のボルテージが最高潮に達したことは対岸に居る観客にもはっきり伝わった。たとえアクシデントのような得点でもトライはトライだ。こうなったら、流れの中でひとつ取って欲しいとさらに贅沢な望みを抱いてしまう。

その後、帝京が4トライを連続して奪って得点は80点に到達する。しかし、関大サイドのスタンドからの応援もピッチ上の選手達のタックルの勢いも衰えない中で33分、再びスタンドから大歓声が起こる瞬間がやってきた。帝京が関大陣で攻め続ける中での密集から、ボールを持って反対方向に走る選手が飛び出してきたのだった。はっきりは見えなかったのだが、これもインターセプトだったようだ。FL中野が追いすがる帝京の選手を振り切って自陣から気迫のランで走りきり2トライ目。

こうなったら是が非でも流れの中での3トライ目を見たい。そういった注文に応えてくれるのが関西人なのだ。というのは冗談だが、37分にこれも実現する。関大のいいところは、帝京を相手にしても接点でボールを失わず、BK展開でパスを繋いで前に行けること。素速い弾捌きと思い切った展開は帝京と戦うときに武器になり得ることが分かる。ロングパスは交えながらシンプルに確実にフェイズを重ね、遂にゴールまであと一歩のところに迫る。そして、ラックからFWでボールを押し込んだかに見えた。判定のためしばらく間が開いた後、レフリーの右手が挙がる。やった~!だった。

その後のもスタンドとピッチが一体化した関大の勢いは止まらず、最後のアタックを仕掛ける。しかし、22m付近まで前進したところで無念のターンオーバー。そして、タイムオーバーを告げるホーンが鳴った。普通ならここでボールを蹴りだして試合終了だと思うところ。だが、帝京はここから反撃態勢を一気に整えてアタックに転じる。このままトライを返さないでは終われないという気持ちがピッチに立ち選手達の共通認識だと分かる。関大の執拗なディフェンスも実らず、帝京は遂にゴールラインまでボールを持ち込んだ。流石と思わせるシーンではあったが、ノーサイドの瞬間に帝京の選手達の表情に笑顔はなかった。むしろ、関大の選手達を讃えるような雰囲気も見て取れた。勝ち負けだけでラグビーの中身を判断してはいけないということが身にしみた感動的な幕切れだった。



■最高のラグビー場で観た感動的なラグビーと最高の応援団

なぜだか理由は分からないのだが、熊谷ラグビー場は選手達のいいところを引き出すと言う意味で最高のラグビー場ではないだろうか。もし、秩父宮で同じカードが組まれたとして、関大の選手達がここまで頑張れただろうかと思ったりもする。交通アクセスがよくないと散々叩かれては居るが、ここでいいラグビーは観たら「(アクセスはよくなくても)ラグビーを観るには最高の場所」と言ってくれる人が居ないのをいつも残念に思っている。

それな私感は別にしても、この日一番の感動シーンは80分以上にわたってピッチに立つ選手達にガッツを注入し続けた関大の熱い応援。他のチームだと大人しく観ている控え部員はいい方で、「T・R・Yコール」のように自分達で盛り上がることしか考えていないような印象を受ける部員達の応援に接する機会がとみに増えているからよけいにそう思う。対岸から眺めていても、関大の部員達は自分達がピッチに立ってプレーしている気持ちになって仲間に元気を与えていたように感じられた。点数だけの評価なら「結果は分かっていたから観るに値しない試合」になってしまうだろう。しかし、ラグビーに一番大切なことを再認識させてくれたと言う意味では「観る価値があった試合」だった。

関東在住だと関大の試合を観るチャンスが殆どないことを本当に残念に思う。ぜひとも来シーズンも大学選手権で関西から「元気」を届けて欲しい。だから、という訳でもないのだが日本協会で検討しているとされる「出場チーム数削減」に強く反対したい。

エディー・ジョーンズの日本ラグビー改造戦記―ジャパン進化へのハードワーク
大友 信彦
東邦出版

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1 コメント

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関西大学いっぱん人応援部 (どんちゃん)
2015-12-23 21:37:08
昨日、ブログを読みました。
メイン観戦でなかった関西大学ラグビーに、熱い記事を書いていただきありがとうございます。
花園をテレビ観戦、4年に1回RWCの時のみ応援するぐらいのラグビーファンですが贔屓目からか(関大の応援で観戦しに行ってたので)
凄く選手が頑張っていてラスト15分くらいから感動でウルウルしてました。
玄人の方も同じように感じて?くださっていたなんてすごく嬉しく、記事を読んでまたウルウルしました。
ありがとうございます。
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