断想さまざま

研究者(哲学)の日々の断想

8月6日(ミラノ~フィレンツェ)

2016-09-09 00:24:24 | 2016夏・ヨーロッパの旅
 早朝にホテルを出発。イタリアでの主な観光先はフィレンツェなので、なるべく早く向うへ着いて一日をフル活用する目算である。
 駅へ着き、自販機で列車を検索すると、8時35分のフィレンツェ行きの特急があった。値段は68ユーロ。すぐに買おうと思ったが、念のため窓口へ行って駅員に確かめてもらうことにした。
「午前中の列車はすべて満席ですね。次は12時20分だけど、これは一等車しかないですよ。二等車に乗るんなら16時20分の列車まで待つしかありません。」
「えっ?午前中はチケットがないんですか?」
「ありません。」
「一等車と二等車ではどれくらい値段が違うんですか?」
「一等車は120ユーロ、二等車は54ユーロです。」
「……。」
「今すぐ買わないでもいいですよ。よく考えてから決めてください。」
 私は窓口を後にした。たちまち切符が売り切れたのもショックだったが、一等車が二等車より7千円も高いのもショックである。初日から余分な出費は避けたい。できれば二等車にしたいところである。が、それだと今日一日の観光をふいにしてしまう。
 何かいい案はないか?もう一度自販機へ戻り、再びフィレンツェ行きの列車を検索してみた。すると8時35分のフィレンツェ行きが残っているではないか。「えっ!」と短い叫び声を上げると、そばにいた女性駅員が近づいてきた。これからフィレンツェへ行きたいのだと告げると、彼女は画面の8時35分発の列車を指して「これに乗ればいいですよ」と言った。だが今しがた、午前中の列車はすべて売り切れと言われたばかりではないか。半信半疑のまま窓口でのやり取りを再現すると、
「これは別会社なんです。イタリアには国鉄とは別に私鉄もあって、フィレンツェへはどちらでも行けるんですよ。」
 なるほどと納得して68ユーロを払い、チケットを買った。(あとで調べて分かったことだが、イタリアにはTrenitaliaとNTVという二つの鉄道があるのである。前者は日本でいえばJRのような存在だが、後者は日本の私鉄とは違ってTrenitaliaの軌道を使わせてもらっているらしい。)改札を通ってホームへと急ぎ、フィレンツェ行の列車に乗り込んだ。Primaという名の一等車である。(二等車はすでに売り切れだった。)荷物を網棚に乗せ、ようやく一息ついた。初っ端からとんだトラブルだが、とりあえず結果オーライである。列車が走り出した。なかなか快適である。前方に速度を示すパネルがあるが、ゆうに時速300キロを超えている。途中、車内のドリンクサービスもあった。
 二時間ほどでフィレンツェに到着。ターミナル駅だが、ミラノ中央駅のような広壮な建築ではない。小さな田舎駅といった趣である。
 駅を出てまず思ったのは、空がきれいだなということだった。高く明るい空に真っ白な雲が浮かび、日差しをいっぱいに浴びてまばゆいばかりに輝いている。いい旅ができそうだなと思った。実際にはフィレンツェの3日間はうんざりするようなトラブルの連続だったのだが。この日は寺院や美術館を中心に夕方まで回り、市街地から少し離れているがアルノ川沿いの景観がすばらしいホテルに泊まった。(写真はホテルからの眺め)