新着情報/県内各九条の会の催しのお知らせ

あいち九条の会ホームページに県内九条の会活動を紹介するコーナー

「憲法九条を守ろう!2016 愛知県民のつどい」が2000名の参加で成功

2016年12月12日 | Weblog
 憲法公布70周年を迎えた11月3日、あいち九条の会主催の「憲法九条を守ろう愛知県民のつどい」が名古屋市公会堂で行われました。今年はホールの収容人数を超える約2000名の参加をいただき、一部の参加者は4階ホールでモニター視聴していただく盛況ぶりでした。



 最初にあいち九条の会を代表して、今年97歳を迎えた水田洋代表世話人が開会のあいさつを述べました。しっかりした足取りで壇上に立った水田さんは、現天皇が「生前退位」の意向を表明したことについて、「象徴天皇という制度について天皇の側からの国民に対する問題提起。彼らは天皇家に生まれたというだけで特別な扱いを受ける。これは彼らにとっても気の毒であるし、国民にとっては非合理で迷惑な話」「象徴天皇とは何なのかという問題は、憲法の大事な問題であり、国民の側もしっかり考えていく必要がある」と私たちが主権者として主体的に議論すべき問題だと強調しました。

 水田さんは「九条の会」の活動についても、「物事の基本的な考え方として合理主義とヒューマニズムを生き方の基本とすること。憲法も近代人が合理的に生きていくためのルール。そういう立場から亡友加藤周一らと同志を募って九条の会をつくり、憲法を守る活動を続けてきた。天皇制の問題もこの精神で考えてほしい」と述べ、「私はこの歳になっても元気。これからも皆さんと一緒に憲法を守る活動を続けて行きたい」と決意を語ると、会場は大きな拍車に包まれました。

 第一部では知立市を拠点に活躍する男女二人組の和太鼓ユニット「光」による和太鼓と笛の演奏が行われました。
 「光」の演奏はさまざまなジャンルの音楽や舞台とのコラボレーションを重ねて来ただけに、伝統と革新が融合したオリジナリティあふれる斬新なもので、力強い和太鼓のリズムと繊細な笛の音で参加者は熱気に包まれ、会場は大いに盛り上がりました。



 第二部は毎日新聞特別編集委員でTBS「サンデーモーニング」のコメンテーターとして知られるジャーナリストの岸井成格さんが「安倍政権とメディア-私の決意」と題して講演しました。



<絶対的権力は、絶対的に腐敗し、暴走する>
 岸井さんは冒頭に「政治権力は必ず腐敗し時に暴走する。そして絶対的権力は絶対的に腐敗し、絶対的に暴走する」との格言を紹介し、これを許さないために人類が長い時間をかけて築いてきたのが憲法であり、立憲主義の理念であると強調しました。

 そのうえで“一強他弱”と言われる日本の政治状況について「最近は三権分立で権力をチェックすべき国会も司法も暴走を止める役割が果たせていない。そうした状況で最も大事な役目を果たすのがメディアである。日本のジャーナリズムは戦争に荷担したことの反省に立ってこの格言を原点に再出発したが、戦争の記憶が薄れるとともにジャーナリズムの世界でもこの原点が忘れられつつあるのではないか」と述べました。

<特定秘密保護法、盗聴法が取材の制約に>
 こうした状況を招いた原因として、岸井さんは安倍政権の暴走とともにメディアに対する「執拗かつ巧妙な介入と圧力」があるとして、まず特定秘密保護法の問題を挙げました。

 1972年の沖縄返還にあたって密約(何らの根拠もなしに日本政府が米国に800万ドルを支払った)の存在を暴いた毎日新聞の記者が「秘密漏洩」の教唆犯として逮捕・起訴された「西山事件」を例に挙げ、事件から30年を経て米公文書館が密約の文書を公開しているにもかかわらず、政府はいまだに存在すら認めず嘘をつき通すという驚くべき現実があると述べました。

 そのうえで、「特定秘密保護法は明らかにメディアの取材を非常に制約します。“何が秘密か?それが秘密だ”と我々は言いましたが、先般国会で報告書を見たら全部真っ黒!まさに何が秘密か?それが秘密。あれでよく国会は黙っていますね」と国会のチェック機能も働いていない現状に愕然とすると語りました。

 そして、盗聴法が改悪され共謀罪まで画策されていることについて「テロ対策という名目で拡大解釈すれば、新聞記者が取材源と接触しただけで犯罪とされる畏れがある」「メディアとしてよほど慎重に考え、徹底的に国会議論を見つめ、可否を判断しなければならない」と述べました。

<高市大臣の発言で日本メディアの評価は独裁国家並み?!>
 つづいて、岸井さんは安倍政権とメディアの関係では今年見過ごすことができない事件が起きているとして、高市総務大臣が今年2月に国会答弁で行った「電波停止発言」を取り上げました。

 岸井さんは「たった一つの番組でも、放送法4条の公平公正、政治的中立に反して偏向であると判断された場合、その局全体の電波を止めると。偏向であるかどうかは誰が判断するのかという質問に『それは政府です』、電波を止める権限は『総務大臣です』とはっきり答弁してる。信じがたい暴言です」と批判しました。

 この発言に対して、岸井さんはテレビのコメンテーターやキャスター仲間たちと共に記者会見で抗議の声を上げたことを紹介しました。その中で、「先進国ではまずありえない発言で、外国特派員の記者からは『あんな発言をどうして許しているのか』『大臣を続けているのが信じられない』『何故メディアが一丸となって闘わないのか』と問質問攻めにあった。私もまったく同感で、これは暴言どころじゃない、大臣の発言は憲法違反であり放送法違反だから(同法4条は表現の自由を守り政治権力の介入を許さないための自主的な倫理規定にすぎない)大臣の資格はない。ここで黙っていてはダメだ。大臣のクビをとるまで頑張ると誓った」と決意を込めて語りました。

 一方、「日本の記者と外国の記者たちとの温度差がものすごく違うのを感じた」として、日本の記者からは「偏向報道やってるなら電波停止もあっていい」という信じがたい意見が出る有様で、「新聞もテレビも親政権か反政権か、批判的かどうかでメディアがはっきり分断されている。とても一丸となって戦える状況にはない」と、日本のメディアの深刻な現状が語られました。

 また、こうした現状を反映して、民主党政権下で10位前後に留まっていた日本メディアの「報道の自由度ランキング」(「国境なき記者団」が各国のメディアを定点観測して報告)が、安倍政権の下で「特定秘密保護法→安保法制→電波停止発言」と続いたことにより、世界180カ国中72位という「後進国か独裁国家並のレベル」に急落するという異常事態を招いていることも指摘されました。

 さらに、国連人権理事会が日本の異常な言論状況を憂慮して調査に乗り出し、調査員として日本に派遣されたデビッド・ケイ氏から人権侵害の当事者として岸井さん自身が調査を受けたことも紹介されました。

 岸井さんは、デビッド・ケイさんから指摘された日本のメディアの問題点として、「権力の介入や圧力の証拠や証言がなく、メディア側の自主的判断(実態としては、忖度、自粛、自制あるいは萎縮)という形で許してしまっている」、また、自主的倫理規定に過ぎない「放送法4条が介入の口実として利用されている」と述べ、「必ずしも全てのメディアが屈服しているとは言えないが、今後も報道への圧力が続くなら、放送法4条の見直し(削除)も真剣に考える必要があるのではないか」と問題提起しました。

<安倍政権の圧力で報道現場に萎縮効果が…>
 岸井さんはご自身が経験された「圧力」についても率直に語ってくれました。

 最初のきっかけとなったのは、2014年の総選挙の際に「ニュース23」で安倍総理が番組に出演した際のこと。アベノミクスについて「街の声」の映像を流したところ、5~6人全員が否定的な意見だったことに、安倍総理は「みんな反対なんておかしい」「これは局が選んでいるね」と決めつけ、2日後には自民党からNHKを含む放送キー局5社に「要望書」が送りつけられるという事件でした。

 岸井さんはこの要望書について「公正・公平・政治的中立といった一般論に止まらず、ゲストの選び方や議員の持ち時間、党派別に至るまで具体的に要望してきた」と指摘したうえで「すると街の声が各局から消えました。何故か、現場としては面倒くさくなる。文句言われたら嫌だから。5人アベノミクス反対だったら、5人賛成の人を探さなきゃならない。これでは現場はやってられないんですよ」とテレビの現場の実情を述べ、実際にその後選挙に関する街頭インタビューが各局から消えたこと、今年7月の参院選挙でNHKが選挙の争点に全く触れない報道ぶりであったことなどを挙げ、圧力の効果が確実に現れていると指摘しました。



<安保法制の廃止を求めるのはジャーナリストとして当然>
 そして、2015年11月に「放送法遵守を求める視聴者の会」なる団体が読売、産経の二紙に出した全面広告のきっかけとなり、その後の高市発言にも繋がった安保関連法案についての「メディアとして廃案を求め声をあげ続けるべきだ」との発言について。

 岸井さんは「ちょっと考えてみただけで戦後の憲法体制と安保防衛体制の大転換になるかも知れない。それほど重要なテーマだから、これは徹底的にやらなきゃいけないなという認識で特集を40回もやった」と述べ、「日米安保のドン」と呼ばれるアーミテージ元国務副長官とのインタビューで「安保法制で憲法9条というバリケードが全部取り払われた」「戦後はじめて自衛隊が米軍のために命をかけると約束した法律」との発言を引き出したことなど、自らの取材経験から「安倍内閣は超えてはならない一線を越えた。安保法制は日本を守るためでも何でもない。アメリカのために自衛隊が血を流すことを約束したのが安保法制の実態。だから、多数で押し切って強行採決なんてことは絶対にあってはならない」との確信を持ち番組上でそのような発言に至ったと語りました。

 そして、「私も長年新聞社で編集の責任者をやってきたから政治的公平とか公正の意味は常に考えてまいすよ。それでも、政治権力がいくらなんでもやり過ぎだという時には敢然として反対する。毎日新聞もそういうスタンスを堅持してきた」「そういう意味では、安保法制についてはジャーナリストとして一点の曇りもなく反対するのが当たり前。これを言わなかったらメディアが役割を放棄したとしか言いようがない」と岸井さんが力を込めて語り、会場から共感と激励の大きな拍手が湧き起こりました。

<良識あるメディアを市民の声で支えよう>
 岸井さんは最後に「いま安倍総理や周辺を固める保守・右派勢力が狙っているのが<戦後レジュームからの脱却>。その柱が憲法改正であり教育改革、そしてメディア規制です」と述べ、「戦争できる国になれば(米軍のために世界中に出て行く)自衛隊が命をかけて戦っているときに、日本国内でそれを批判する勢力がいると権力にとって都合が悪い。だから“みんな一緒になって頑張ろう!”という社会でないと困るから、教育で愛国心を植え付けようとする」と、安倍首相や周辺の右派勢力が夢見る<戦後レジュームからの脱却>後の日本の社会像について解明しました。

 そのうえで、岸井さんは「こうした動きはできる限り早い段階で芽を摘み、ブレーキをかけることが大事。しかし、今は一強多弱で国会に期待できない。だからこそ、国民世論をバックにしてメディアがとにかく声を上げ続けるしかありませんが、日本のメディア自体が分断されている。そういう時代だからこそ、まともな社説やコメンテーターが出演するメディアには、投書でも電話でも読者や視聴者からの応援が欲しい」と述べ「私自身も28000件ものメッセージを頂いて、応援してくれている視聴者の皆さんがこんなにもいると大いに励まされた」と良心的メディアを支えるには、市民が声を届けることが最も効果的で重要と強調しました。
 そして、岸井さんが「これからも皆さんの期待に応えられるよう頑張りますので、是非応援してください」と講演を締めくくると、会場は鳴り止まないほどの熱烈な激励の拍手と声援に包まれました。



 最後に、あいち九条の会世話人の長峯信彦さんが集会のまとめの挨拶に立ち、「本日の来場者は2000人」と発表すると、会場は大きな拍手に包まれました。長峯さんは「これも安倍政権への怒りと憲法を守ろうとする市民の熱意の現れ。これだけ多くの市民を相手に安倍政権が憲法9条の改悪を実現できるかといえば、私は絶対にできないと思います」と述べたうえ、「今はできなくても、これから20年後、30年後はどうか、といえば予断を許さない。岸井さんの講演にもあったとおり、揺さぶりと分断が進行しており、岸井さんのような素晴らしい言論人をメディアから閉め出そうとしている」として、こうした動きに対してはメディア自身に頑張ってもらわなければならないが、私たち市民が一丸となって声を上げ、くいとめていく必要があると訴えました。


最新の画像もっと見る