伊藤ハムの調査対策委員会が25日、最終報告書を公表した。詳細は、ウェブサイトにある報告書をお読みいただきたいが、私は正直に言って驚いた。極めて悪質なことが行われていた。
調査委員会は中間報告で、シアンが基準を超過した原因として、原水汚染が原因ではなく塩素処理過程で次亜塩素酸ナトリウムの注入量が足りなかった可能性を指摘した。これについては、12月5日付の伊藤ハムのシアン問題2~やっぱり塩素処理不十分が原因?をお読みいただきたい。
今回の最終報告書ではさらに、公定法に問題があった可能性を明らかにした。公定法では、試薬として酒石酸緩衝液を添加することになっている。だが添加して長時間放置することで、酒石酸緩衝液由来の有機物と結合塩素が反応し、シアン化物イオン及び塩化シアンが生成する反応が起きている可能性があるという。検査機関は、酒石酸緩衝液をサンプルが到着した時に添加していた。値が測定された時にはかなりの時間がたっていたと推測される。
調査対策委員会は、酒石酸の添加の有無や放置時間の変更など、条件をいくつも変えて測定した再現試験の結果を解析した。そして、原水由来の有機物の影響と酒石酸由来の有機物の影響の両方に、基準超過の原因があると判断した。酒石酸添加後の正確な放置時間などが不明なため、どちらの影響の割合の方が大きかったかについては分からないという。
このブログのコメント欄で、「委員会が公定法の問題を隠蔽している」などと書き込んでいる人がいるが、最終報告書では、再現試験のデータに基づいて公定法の問題点が明確に指摘されていることを、あえて付け加えておきたい。
さて、今回明らかになった衝撃の事実は、次亜塩素酸ナトリウムの注入量に関するものだった。中間報告段階では、「塩素酸の基準超過を心配するあまり、次亜塩素酸ナトリウムの注入量を絞っていた」と報告され、調査対策委員会は「恒常的に注入量を抑えていた」と受け止めていた。ところが、さらに詳しく調べたところ、伊藤ハムの担当課が9月以降、定期的な水質検査日には、塩素酸の上昇を抑えるために従来の半分程度の次亜塩素酸ナトリウムしか注入していなかったことが分かったという。特に、2号井戸では、採水当日の9時から11時までの2時間のみ、減らしていた。
塩素酸は、今年度から基準値(0.6mg/L)が設けられ、同社は2月から処理水の塩素酸を測定し始めた。ところが、6~9月に三つの井戸で計6回、基準を超過したという。だから、検査の時だけ次亜塩素酸ナトリウムの注入量を減らす“操作”をしたのだ。
結局のところ担当課は、塩素酸が基準を超えた水を食品製造に使うこと自体はまったく問題視していなかった。ひたすら、「検査結果が基準を超えるのはまずいから、その時だけ注入量を減らしてとりつくろう」という態度だったのだ。これでは、何のための検査か分からない。
しかも驚くべきことに、担当課は注入する次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度と塩素酸濃度を日常的に把握しておらず、いわばどんぶり勘定、勘で注入量を決めていた。
その結果、塩素添加量が減り、知らず知らずのうちにシアンを生成しやすい条件を作り出してしまい、そのうえに検査段階での酒石酸添加と放置が重なって基準超過をした、というのが調査対策委員会の「見立て」である。
担当課は、6~9月に塩素酸の基準超過が起きた時も、保健所に相談することなく課内でうやむやに処理し、基準超過の水の使用をストップしなかった。その挙げ句が、都合の良い検査データ作りだ。これほど悪質なことを、組織として自ら見つけ改善する仕組みが、伊藤ハムにはなかった。
同社は22日、担当者や幹部の処分を発表しているが、その時には、この悪質さを公表していない。25日の記者会見でも、幹部からは担当者をかばうような言葉が出た。また、今でも「調査対策委員会により、製品に使う水の安全性が確認されました」というCMをウェブサイトで流し続けている。(このCMの問題点は、12月13日付伊藤ハムのシアン問題4~CMに対する違和感で指摘しているので、お読みいただきたい)
同社の一連の姿勢に怒りを感じる私は、感情的だろうか? これまでの体質が変わっていないのでは、と疑うのは私だけだろうか?
東京工場は現在、水質常時監視体制システムを整えている。調査対策委員会の最終報告書は、この監視システムについて、こう書いている。「ただし、そのシステムを運用するのは人間であり、塩素酸の基準値を遵守している結果を出すために、水試料採取の際だけに、塩素注入量を減少させるようなことを実施するのは、検査のための検査となり、本末転倒な作業である。したがって、水質の常時監視の元となる水試料が、通常の運転条件下で得られたものであるかについて、十分に留意する必要がある」。
調査対策委員会が、今後について釘を刺すこの厳しさが、同社に伝わっているのかどうか、私には疑問に思えた。
繰り返し書く。都合の良い検査結果を操作によって出すことは、データの捏造と同じだ。伊藤ハムは、そんなことをしながら食品を作り続けていた。私はこれは、社長の進退さえ検討しなければならない非常に深刻な事態だと考える。そして、同社ほどの大企業、名門企業がこうした操作を行っていたという事実は、食品業界全体の信頼を揺るがしかねない。
興味深いことに、会見に来た記者たちも、この悪質さにそれほど気付いていなかったように私には思えた。私の判断は厳しすぎるのか? 皆さんはどう思われるだろうか。
調査委員会は中間報告で、シアンが基準を超過した原因として、原水汚染が原因ではなく塩素処理過程で次亜塩素酸ナトリウムの注入量が足りなかった可能性を指摘した。これについては、12月5日付の伊藤ハムのシアン問題2~やっぱり塩素処理不十分が原因?をお読みいただきたい。
今回の最終報告書ではさらに、公定法に問題があった可能性を明らかにした。公定法では、試薬として酒石酸緩衝液を添加することになっている。だが添加して長時間放置することで、酒石酸緩衝液由来の有機物と結合塩素が反応し、シアン化物イオン及び塩化シアンが生成する反応が起きている可能性があるという。検査機関は、酒石酸緩衝液をサンプルが到着した時に添加していた。値が測定された時にはかなりの時間がたっていたと推測される。
調査対策委員会は、酒石酸の添加の有無や放置時間の変更など、条件をいくつも変えて測定した再現試験の結果を解析した。そして、原水由来の有機物の影響と酒石酸由来の有機物の影響の両方に、基準超過の原因があると判断した。酒石酸添加後の正確な放置時間などが不明なため、どちらの影響の割合の方が大きかったかについては分からないという。
このブログのコメント欄で、「委員会が公定法の問題を隠蔽している」などと書き込んでいる人がいるが、最終報告書では、再現試験のデータに基づいて公定法の問題点が明確に指摘されていることを、あえて付け加えておきたい。
さて、今回明らかになった衝撃の事実は、次亜塩素酸ナトリウムの注入量に関するものだった。中間報告段階では、「塩素酸の基準超過を心配するあまり、次亜塩素酸ナトリウムの注入量を絞っていた」と報告され、調査対策委員会は「恒常的に注入量を抑えていた」と受け止めていた。ところが、さらに詳しく調べたところ、伊藤ハムの担当課が9月以降、定期的な水質検査日には、塩素酸の上昇を抑えるために従来の半分程度の次亜塩素酸ナトリウムしか注入していなかったことが分かったという。特に、2号井戸では、採水当日の9時から11時までの2時間のみ、減らしていた。
塩素酸は、今年度から基準値(0.6mg/L)が設けられ、同社は2月から処理水の塩素酸を測定し始めた。ところが、6~9月に三つの井戸で計6回、基準を超過したという。だから、検査の時だけ次亜塩素酸ナトリウムの注入量を減らす“操作”をしたのだ。
結局のところ担当課は、塩素酸が基準を超えた水を食品製造に使うこと自体はまったく問題視していなかった。ひたすら、「検査結果が基準を超えるのはまずいから、その時だけ注入量を減らしてとりつくろう」という態度だったのだ。これでは、何のための検査か分からない。
しかも驚くべきことに、担当課は注入する次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度と塩素酸濃度を日常的に把握しておらず、いわばどんぶり勘定、勘で注入量を決めていた。
その結果、塩素添加量が減り、知らず知らずのうちにシアンを生成しやすい条件を作り出してしまい、そのうえに検査段階での酒石酸添加と放置が重なって基準超過をした、というのが調査対策委員会の「見立て」である。
担当課は、6~9月に塩素酸の基準超過が起きた時も、保健所に相談することなく課内でうやむやに処理し、基準超過の水の使用をストップしなかった。その挙げ句が、都合の良い検査データ作りだ。これほど悪質なことを、組織として自ら見つけ改善する仕組みが、伊藤ハムにはなかった。
同社は22日、担当者や幹部の処分を発表しているが、その時には、この悪質さを公表していない。25日の記者会見でも、幹部からは担当者をかばうような言葉が出た。また、今でも「調査対策委員会により、製品に使う水の安全性が確認されました」というCMをウェブサイトで流し続けている。(このCMの問題点は、12月13日付伊藤ハムのシアン問題4~CMに対する違和感で指摘しているので、お読みいただきたい)
同社の一連の姿勢に怒りを感じる私は、感情的だろうか? これまでの体質が変わっていないのでは、と疑うのは私だけだろうか?
東京工場は現在、水質常時監視体制システムを整えている。調査対策委員会の最終報告書は、この監視システムについて、こう書いている。「ただし、そのシステムを運用するのは人間であり、塩素酸の基準値を遵守している結果を出すために、水試料採取の際だけに、塩素注入量を減少させるようなことを実施するのは、検査のための検査となり、本末転倒な作業である。したがって、水質の常時監視の元となる水試料が、通常の運転条件下で得られたものであるかについて、十分に留意する必要がある」。
調査対策委員会が、今後について釘を刺すこの厳しさが、同社に伝わっているのかどうか、私には疑問に思えた。
繰り返し書く。都合の良い検査結果を操作によって出すことは、データの捏造と同じだ。伊藤ハムは、そんなことをしながら食品を作り続けていた。私はこれは、社長の進退さえ検討しなければならない非常に深刻な事態だと考える。そして、同社ほどの大企業、名門企業がこうした操作を行っていたという事実は、食品業界全体の信頼を揺るがしかねない。
興味深いことに、会見に来た記者たちも、この悪質さにそれほど気付いていなかったように私には思えた。私の判断は厳しすぎるのか? 皆さんはどう思われるだろうか。
他の大きな食品会社では独自に研究所を持ち、工場や製品の管理を行なっており、信頼性の確保に努めています。そのような努力が見られませんね。いつから安全が確認されたのでしょうかね?
不安な会社ですね。
調査対策委員会も、科学的根拠があるのに「追求しない」とか、「その時の水がないから再現できない」と言っておきながら、今回はその再現をしたり、推論で原水の逆流説を示したりしてました。
今回の報告書でも、不可解な点があります。
次回はもっとすっきりと報告できるのでしょうか。
また、マスコミは大きなスポンサー企業のことはなぜかほとんど報道しない傾向があるように感じます。例えば、死体の入った、雨水の混入し続けた貯水槽の水を飲料水として長期間使用し、わかってからも数日飲料水として使っていたケースなど・・・・
ただ大企業としての責任の所在が曖昧で社員へのモラル教育の徹底をどうするのかが重要ですよね。
私は国の基準値がおかしければそれに従う必要はないと考えています。こんなバカらしい基準値を誤魔化した伊藤ハムさんに拍手を送ります。
余談ですが、土壌汚染でよく基準値の数万倍検出とか報道されてますが、誰か健康被害にあったとは聞かないし、それなら何も問題ないのに何で騒ぐのでしょうね。
>誰か健康被害にあったとは聞かないし
誰かの健康被害が明らかになった場合は、隠れた被害者は相当いることになります。
健康被害は、足し算によってもたらされます。
たとえば有毒な重金属などは、水、食品、土(粉塵を吸い込んだり、手の汚れを介して、食品を介して)等、様々な経路から吸収されます。
足し算ですから、減らせるものは、減らすのが当然でしょう。