U.C.DavisのProfessor of Plant Pathology、Pamela Ronald Ph.D.のブログより転載(宗谷敏さん訳、日本語に翻訳してウェブに掲載することについて、Ronald氏の了解を得ている)
遺伝子組み換え農作物の話に関しては誰を信頼すべきかとDr. Ozが尋ねます
SOURCE: Tomorrow's Table
DATE: 2010年12月7日
私は、聴衆に科学ベースの視点を提供しようとしました。しかし、それは難航しました、なぜなら他のパネリストの1人(Jeffrey Smith、科学的もしくは農業の職業的訓練を欠く、以前の上院議員選挙へのNatural Law Partyからのアイオワ州立候補者)が遺伝子組み換え農産物を食べることが不妊、臓器障害と内分泌撹乱を引き起こすと確信するからです。もちろん、これらの発言の科学的証拠は、ニンジンを見た人には脳腫瘍が出来ますということと同じぐらい薄弱です。
聴衆はショーで提示された情報からそれを探り出せますか? 残念ながらそうは思えません。
私たちが知っているのは、14年間消費されてきてヒトの健康あるいは環境にたった一つの実害の例すらなかった(そして多くの議論の余地がない利益)ということです。
最悪の「擬似科学の伝道師」に反論するために私は最善を尽くしましたが、それは困難でした。私はプロデューサー(蛇足ながらなかなかイケメンでした)に、ゾッとする画像と箇条書きを取り除くように頼みましたが、成功しませんでした。それらを示すことはOz博士の評判を損ねて、彼の視聴者(今やおそらくは震え上がっている-私の義母がすべての「箇条書き部分」をメモするのを想像することができます)に悪影響を与えるであろうと私は論じました。
私はいくつかの科学ベースの、学研的な、非営利の素晴らしいサイト(bioforitifed,org, ucbiotech.org and academicsreview.org)を紹介するチャンスを持っていました。しかし私のすべての具体例(遺伝子組み換えワタ畑での減少した殺虫剤使用、生物多様性の向上、耐病性パパイヤ、ゴールデンライス)は、テレビの放映ではカットされました。プロデューサーがあまりに多くの科学的証拠を、空想的な要素に混ぜることを望まなかったと私は推測します。ショーは、科学者としてまたもや私たちが遺伝子工学についての全般的な不安と、科学と科学者への一般的な不信を退けることができなかったことを実証します。
それでは、私たちはどのようにして一般人が科学的なプロセスを理解して、時間をかけて証明され大いに頼りになる質の高い科学的研究を、単純な断定あるいは確証がないうわさから区別することを学ぶことを手伝うことができますか? これはRaoul(訳者注:Pamelaのご主人)と私が本(訳者注:Ronald, Pamela and Raoul Adamchak, 2008. Tomorrow's table; Organic farming, genetics and the future of food. Oxford University Press. )を書いた理由の1つです。
私たちは非科学者がどのようにして事実と作り話を区別することができるかという記述に1章(訳者注:第6章 Who Can We Trust?)を割きました。利害関係と誤解だらけの疑似科学の実例として、Smithをひと目見てください。遺伝子工学が危険であることを「立証する」ために、Smithは遺伝子組み換えジャガイモをマウスに食べさせた17歳の学生の実験を引用します。参照されたウェブサイトによれば、「・・・最初から平均より少し体重が重かったから、給餌された遺伝子組み換えジャガイモを多く食べた[マウスたち]が、より少ない体重増加を示しました。」
加えるに、「・・・個体間の行動に著しい相違」が観察されましたが、「これらは『主観的』であり、そして定量的ではありませんでした」と少年が認めました。Smithは、この実験は遺伝子組み換え食品が「ヒトの精神」に悪影響を与えるかもしれないことを立証すると論じて、少年は「科学者を恥じ入らせるほど凌駕した」と結論します。
どうやら一般人は、ピアレビューされた研究ではなく、科学的な研修に束縛されない学生によって実施されたこの実験を信用することができるということのようです。Smithは、ティーンエージャーによって行なわれたこの実験が、科学的なプロセスに付き物の厳密な方法に従っていなかったという事実を無視します。
私が調べたところ、少年のマウスを用いた研究に言及し紹介していたのは、あるウェブサイト(訳者注:http://www.i-sis.org.uk/MicePreferNonGM.php)であり、さらにそのウェブサイトはもう一つの別のウェブサイト(もう、なくなっています)を参照して書いていました。それに、少年の研究に関して証拠となるものは、偶然に会った少年の母だけということも判明しました。つまり、少年の母だけが、少年が行ったという実験に関する科学的情報のソース、「源」なのです。Guusjeママは、息子を非常に誇りに思っています…という具合です。
少年の母親との会話のことを科学であると言う人がいるでしょうか? Smithは、科学的なプロセスの基本的理解に欠けるか、あるいは彼がただ気にしていないだけか、あるいはその両方です(あるいはもっと悪意に満ちた何か...)。しかし、彼は気を遣うべきです;なぜならこの手のいつわりは人々を混乱させて、そして恐ろしがらせるだけですから。ほとんどの人々が、自分の息子について、通常母親が最良だと信じるものだということに同意するでしょう。ですから、母親の推薦は、このような場合には明白な利害関係の得失を表します。このような明らかにされない利害関係の得失によって汚された研究は、遺伝子工学についての討論において重大な懸念です。
もし遺伝子組み換え農作物の利点に関するピアレビューされたデータだけが、その主要な関心が公益ではなく私益にある当事者によって供給されたなら、一般人は研究の整合性に疑問を抱く理由を持っているでしょう(これが、非営利のピアレビューされた研究だけを、私が引用しようとする理由でもあります)。同様に、もし農業への遺伝子組み換え技術の使用に対する強いスタンスを持っている人が営利目的のバイオテクノロジー企業もしくはオーガニック産業の従業員であるなら、利害関係の得失が存在するかもしれませんから、このような雇用関係は明らかにされるべきです。
(全面開示:私の研究室におけるすべての研究は、非営利の関係筋によって資金提供されています。Raoulと私の給与はカリフォルニア大学デイビス校と政府補助金から支払われます。私たちは二人とも、バイオテクノロジー企業あるいはオーガニック産業からの支払いを受けていません)。