松永和紀blog

科学情報の提供、時々私事

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2012-05-30 21:31:30 | Weblog

 一般社団法人Food Communication Compassを設立し、Foocom.netを2011年春から運営しています。私は、代表兼編集長で、主にコラム「編集長の視点」特集記事を執筆しています。お読みください。

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適切に怖がりつつ安心して食べるために〜自分で計算しよう!

2011-03-24 03:41:39 | Weblog

 予想した通り、暫定基準値(暫定規制値)を超える農作物が次々に見つかっている。国が「今、出回っているものは安全です」と言ったそばから出荷規制、さらに摂取の制限まで求めるという混乱した事態である。水道水でも、高い数値が検出された。もはや、一般市民は何を信頼してよいか分からなくなってしまっている。だから、もぐらたたき規制は最悪なのだ。

 適切に怖がりつつ安心して食べるために、基本的な事項をていねいに説明したい。

…………………………………………………………………………………………

適切に怖がりつつ安心して食べるために〜自分で計算しよう!

 まず、農作物の放射能汚染とはどういうことか? ということをきちんと知っておきましょう。

 農産物が放射線を浴びて変なことになってしまっている、とイメージしている人もいるようですが、それは違います。農作物に付着したり、中に吸収されたりしている放射性物質を体の中に取り込むことが問題なのです。

 福島第一原発から、放射線を発している放射性物質が大気中に出てしまいました。それが漂い、風にも乗って、周辺の農作物の表面に落ち、付着しています。あるいは、土壌に落ち、水にも溶け、農作物の根から吸収されて農作物の中に入ります。

 現在(3月24日)は、放射性物質が大気中に出てからまだ短く、後者の根から吸収されている分はごくわずか、と考えられ、前者の農作物の表面に付く分を考えればよいでしょう。

 この表面に付いた放射性物質を食べるとどうなるか? 体の中で放射線を発することになります。これが「内部被ばく」です。体に放射性物質が付いた場合、払い落としたり水で流し落としたりすれば、それで放射線の影響はなくなります。ところが、体の中に入った放射性物質は、多くは短期間で代謝されて尿などに混じり排出されますが、一定量は体の中に留まって放射線を発します。したがって、放射性物質を体の中に取り込む内部被ばくはなるべく避けた方がよいのです。

 しかし、放射性物質は自然界にも存在し、普通の農作物、水産物など食品すべてにごく微量ながら含まれており、私たちは常に食べています。放射性物質の体の中への取り込みを完全にゼロにして生き物が生存することは不可能です。私たちは常に、放射性物質と共存しているのです。

 しかも、放射線も微量であれば、私たち人類はその影響をはねのけて健康にまったく問題なく生きられることが分かっています。生き物の細胞は、放射線を受けた時に修復し回復する力を持っています。なので、放射線を浴びても少しの量であれば細胞が頑張ってくれるのです。

 繰り返しますが、自然界にも放射性物質はあり、被ばくする放射線量をゼロにすることはできません。したがって、細胞が頑張ってくれる程度の量に、浴びる放射線を抑えることがとても大事です。放射性物質がほんの少しだけ付いた農作物を食べても、発する放射線量はわずかなので大丈夫です。放射性物質が多く付いた農作物も、1回食べる程度なら人の細胞はまだまだ戦って回復してくれるでしょう。しかし毎日たくさん食べると、体の中に放射性物質がたまり、細胞の戦いは追いつかなくなる恐れがあります。だから、放射性物質が多く付いた農作物は、食べ続けてはダメ、です。

 

 では、どの程度の農作物であれば食べても大丈夫なのか?

 ここで、少し計算をしてもらわなければなりません。

 今、国や自治体の発表、マスメディアの報道では、Bq/kgという単位が使われています。「福島県産のホウレンソウからも4万ベクレル(1kgあたり)を検出した」という具合です。

 このベクレル(Bq)という単位は、おおまかに説明すると放射線を出す能力、つまり放射能を表しています。Bqの数値が大きくなると、放射線を多く出している、ということを意味します。

 しかし、Bqの数値だけでは人体への影響の程度はよく分かりません。放射性物質といっても、ヨウ素やセシウムなどいくつもの種類があり、またそれが発している放射線もα線、β線、中性子線などいろいろと種類があり、それぞれに人体への影響の程度は異ります。そこで、それらをまとめて評価するための指標としてあるのがシーベルト(Sv)です。シーベルトに換算してまとめると、私たちがトータルで放射性物質からどの程度の影響を受けるのか、ということを検討することができます。

 

 Bqの値をSvにするには「実効線量係数」という数字をかけて算出する必要があります。この数字をかけると、放射性物質を体の中に取り入れて50年間にあびる放射線量が算出されます。

 

 成人の場合、次のようなかけ算をしてください。なお、1シーベルト(Sv)=1000ミリシーベルト(mSv)=100万マイクロシーベルト(μSv)です。

 

【放射性ヨウ素131の場合】

 Bq/kg × 0.022 = μSv

 

例えば、放射性ヨウ素が50,000Bq/kgのホウレンソウを1日に200g食べた時の計算をしてみます。

1日分は

50,000×0.022×【200g/1000g】=220μSv=0.22mSv

10日続ければ、2.2mSvの被ばくです。

 

【放射性セシウム134の場合】

 Bq/kg × 0.019 = μSv

例えば、放射性セシウム134が10,000Bq/kg含まれているクキタチナを1日に100g食べた時の計算をしてみます。

10,000×0.019×【100g/1000g】=19μSv=0.019mSv

1週間(7日間)続けて100gずつ食べれば、0.133mSvの被ばくです。

 

【放射性セシウム137の場合】

 Bq/kg × 0.013 = μSV

例えば、放射性セシウム137が5,000Bq/kg含まれているブロッコリーを1日に200g食べた時の計算をしてみます。

5,000×0.013×【200/1000g】=13μSv=0.013mSv

3日間続けて200gずつ食べれば、0.039mSvの被ばくです。

 

 こうして算出できた放射線量(mSv)で、体にどのような影響が出るのかを考えてみましょう。

 まず、1年間に何シーベルトを被ばくすると、どんな影響が体に出てくるのか、これまでの調査研究結果を見てください。

 

4000mSv以上 60日以内に半数の人が死亡

3000mSv以上 脱毛

1000mSv以上 吐き気 がん死亡が生涯で5%増加

500mSv以上 白血球が一時減少 がん死亡が生涯で2.5%増加

250mSv以上 緊急作業従事者の被ばく限度

100mSv 以上 発がんリスクがごくわずか(0.5%程度)増加

10mSv/年 ブラジル・ガラバリ海岸の一部で自然に受ける放射線

2.4mSv/年 一人当たりが自然に受ける放射線の世界平均

 

6.9mSv/1回 CTスキャンを1回受けた時の放射線量

0.6mSv/1回 胃のX線集団検診を1回受けた時の放射線量

 

 近藤宗平さんという有名な科学者は、「年間に50mSvの被ばくは、リスクゼロ。人体は少しの放射線にはびくともしない」と言っています。国は、より安全側に立った判断として、「一般市民が、自然界からの放射線や医療行為(X線撮影やCTスキャンなど)を除いて、受けてもよい限度量」として「1mSv/年」という数字を決めています。

 

 1mSvという数字と比較すると、放射性ヨウ素50,000Bq/kgのホウレンソウを200g食べた時の0.22mSvという数字は約5分の1。したがって、1回食べたからどうかなる、ということはありませんが、結構高いかな、という印象です。これを食べ続けると1mSvは簡単に突破します。でも、50mSvにはほど遠いです。

 

 国は、こうしたことを考慮して、食品に規制値を設けました(急いでいたので、暫定規制値ですが、食品安全委員会が今、大急ぎで評価を行っています)。

 放射性ヨウ素の暫定規制値は、飲料水と牛乳・乳製品が300Bq/kg、野菜類は2000Bq/kgです。放射性セシウムは、飲料水と牛乳・乳製品が200Bq/kg、野菜類や穀類、肉・卵・魚・その他は500Bq/kgです。

 

 これらの規制値は、先ほど計算した50,000Bq/kgとか10,000Bq/kgなどの数値と比較すると、非常に低くなっています。放射性ヨウ素50,000Bq/kgのホウレンソウを200gというかなりの大量食べても1mSvには至らなかったことを思い出してください。

 こうした厳しい規制値で食品を管理することによって、日々の食事で取り込む放射性物質を、細胞が戦って回復できる量にとどめようとしているのです。

 

 基準を超えた食品が見つかったら、それは警告の印。「この食品は要注意だよ」と数値が教えてくれています。その食品を注意していくつも測定してみて、高い傾向であれば国は、出荷停止の措置をとったり、「食べないように」という指示を出したりしています。

 

 もう一つ、付け加えたいことは、放射性物質それぞれの性質です。放射性ヨウ素は、放射線を出すとキセノンという安定した物質に変わってしまいます。放射性ヨウ素の量が半分になるのにかかる日数は約8日間です。したがって、16日間で4分の1、24日間で8分の1になり、日を追うごとにどんどん減って行きます。

 このまま、原発事故が終息に向かえば、放射性ヨウ素については、もう少ししたら、心配しなくてもよくなるでしょう。

 一方、放射性セシウム134が半分になる期間は2年、放射線セシウム137が半分になる期間は30年です。したがって、放射性セシウムが農作物にどれくらい含まれているかについては、今後もしばらくは厳重な注意が必要です。

 

 以上の計算は、農作物を成人が食べる場合について行いましたが、水も同じ計算をします。

 東京都の金町浄水場で22日、210Bq/lの放射性ヨウ素が検出されました。つまり、水道水1リットルを飲むと、210×0.022=4.62μSv=0.00462mSvの被ばく量です。

 

 重要なことは、水道水や農作物に放射性物質があるかないか、ということではなくて、「どのくらいの量を摂取したか」という「量」です。量が少なければ、人の体自身が戦ってくれて、勝利してくれます。心配するまえに、「私は今日、どれくらいの量を食べたかな?」と考えて計算をしてみてください。そうすれば、体の中に取り込んでしまった量は、多くの科学者が「体に影響が出ない」と考えている50mSvにほど遠いことが、自分自身で実感できるはずです。

 

 子どもについては、もっと厳しめに判断した方がよいとされています。ただ、子どもは食べる量も少なく、ホウレンソウを200g食べる、というようなことはありません。

 乳児を粉ミルクで育てている場合は、水道水を1日に500〜1000mlくらいは飲ませます。摂取量が多いこともあって、国は非常に用心したスタンスで、水道水の放射性ヨウ素が100Bq/kgを超える場合には、乳児には与えないように通知を出しています。

 

 ただし、乳児でも自然界から浴びている放射線量は世界の平均で年間2.4mSvです。先ほど計算した210Bq/lの水道水を1l飲んだ時の放射線量は、0.00462mSvで、2.4mSvに比べると非常に小さな値であることを知っていただきたいのです。

 

 私たちはもともと、放射性物質と共存してきました。不幸な事故が起こり、今は大気中に少し多めの放射性物質があります。でも、この状態にも理性的に対処しなければならないのです。パニックに陥らず計算して、適切に怖がり安心して食べて行きましょう。

 

参考文献

緊急被ばく医療研修のホームページ

原子力施設等の防災対策について

原子力百科事典

安全安心科学アカデミー

食品安全委員会・東北地方太平洋沖地震の原子力発電所への影響と食品の安全性について

福島原発の放射能を理解する

厚生労働省「福島第一・第二原子力発電所の事故に伴う水道の対応について」

原子力資料情報室

 

 

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もぐらたたき規制は最悪

2011-03-22 11:52:29 | Weblog

 福島、茨城、栃木、群馬4県のほうれん草、かき菜に福島産の原乳……。国は、県単位での出荷停止を決めた。これまでの検査で、暫定基準を超える検体が見つかっているからだ。さらに、枝野官房長官は「今後、各地でモニタリングし、結果を分析したうえで必要があれば追加の指示をする」と会見で述べた。

 これでは、「ほかの農産物も危ないよ」というシグナルを送ってしまったようなものだ。検査で超過の結果が出たものをたたき、さらに今後の検査結果で追加も……。まるで、もぐらたたきである。4県のほかの農産物も一気に売れなくなるのではないか、と心配だ。

 リンガーハットは既に、「茨城県産の使用を当面見合わせる」と決めたという。ギョーザの原材料に茨城県産キャベツが使われていたとして、リンガーハットが20日、ギョーザ販売を中止したとデイリースポーツは写真付きで伝えている。

 ホウレンソウは、葉を広げて植わっているので葉面に放射性物質がつきやすい。一方、キャベツは丸く葉を巻いて結球しているから、外側の葉にはついていても内側には放射性物質はつかない。外葉をとれば放射性物質は取り除けるし、実際に暫定基準を超過したものも見つかっていない。なのに、使用見合わせである。リンガーハットには「風評被害を引き起こしてはならない」という倫理観はないのだろうか。

 基準超過で私が思い出したのは、農薬の残留基準に関して日本農薬学会の幹部が言っていた言葉だ。「基準は、転ばぬ先の杖だ」とその人は言う。基準を超過したところで、その食品が危険、というわけではない。しかし、基準超過は「要注意」の合図となり、農薬であれば「使い方の誤り」などを教えてくれる。転ばぬ前に、「気をつけてしばらくウォッチングしようね」と警告し、杖のように支えてくれる、というわけだ。

 放射能汚染の暫定基準値も転ばぬ先の杖であろう。極めて安全寄りで設定されており、その基準値を超過した食品を少々食べた程度では、健康に影響はない。しかし、警告の役割を果たす。

 その杖を振り回し、該当しない農産物までめった切りで廃棄、ということにしてはいけない。 

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森田満樹さんの「AERAの『放射能がくる』はひどすぎる」

2011-03-22 10:18:07 | Weblog

 消費生活コンサルタントの森田満樹さんが、話題のAERA最新号について論評する原稿を書いてくれた。AERAは、ホームページで表紙や広告について「編集部に恐怖心を煽る意図はなかった」と謝罪している。だが、記事の内容もかなり悪質のようだ。紹介します。

 

以下、森田満樹さんのコメント

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AERAの「放射能がくる」はひどすぎる

 原発関連の様々なデマが、媒体を選ばず飛び交っている。この10日間、テレビ、新聞、紙媒体を中心にメディアウォッチングをしているが、中でも、週刊AERAの最新号(2011.3.18号)「放射能がくる」は、ひどい。表紙の、このキャプションもさることながら、防護マスクに防護服を着用した男性のアップ写真は大迫力。目次には「原発が爆発した」「最悪なら『チェルノブイリ』」、「放射能疎開が始まった」と読者の不安感をしっかり煽るタイトルが並ぶ。いつもは週刊誌を購読しない層にも大いにアピールするらしく、近所の本屋、コンビニでは店頭に並んだ翌日には売り切れてしまった。幸いにも(?)入手できたので、その中身を紹介したい。

 巻頭「東京に放射能がくる」では、東大のある研究室が「換気扇を止めてエアコンを停止し、窓を開けないように」と他の研究室にメールを出したことを紹介している。『都内では通常の約20倍の放射線量を観測した場所もあり、その影響に日本の「権威」も脅えている』という。うーん、のっけから怖い。ちなみにここでは、約20倍の放射線量がどのような意味を持つのかという数字の説明はない。

 続いてAERAは、長崎大学教授とのエピソードを書く。東京電力の担当者が「臨界が福島原発で起きている可能性もゼロではない」と認め、そのことを教授に電話で知らせた時、教授が「なにー」と声を上げたことを描写するのだ。

 教授にとって、「最悪の事態」は、炉心溶融が起きて格納容器が爆発し、炉内の放射性物質が大量に飛び散る場合である。「炉心溶融が起きたとしても、さすがに臨界だけは起きない」とみている。だが、AERAは教授の意見を紹介しつつも、混乱の極みにある東電の会見を基に「しかし、その臨界の可能性までも現実のものとなった」と書く。えっ、どっちなの? 読者を混乱させる。

 その後は、原子炉事故のシミュレーション事例を基に「急性死者540人想定」と書き、浜岡原発2号機が炉心溶融を起こした想定の話、チェルノブイリの事故の話と、読者の不安を煽る記述が続く。チェルノブイリの被害の詳細を紹介することで、目次タイトルのとおり「最悪はチェルノブイリ」を読者に想起させる内容になっている。

 この記事だけを読んでいると「チェルノブイリと福島原発は炉の状況も構造も全く違うので、最悪の事態でもチェルノブイリと同じような状態にはなりません」とは、思えなくなってきてしまう。一応、原子力安全委員会の元委員長の言葉として「チェルノブイリは運転中に起きた事故だったから、燃料からなにからすべてを吹き飛ばした。それと比べれば、いまの福島は最悪の事態でもなんでもない」という意見を紹介しているが、「責任放棄」と切り捨てている。

 続く特集も同じ調子で、住民の怒りを紹介し、東京電力のバカヤローと揶揄し、情報を隠ぺいする国を攻め立て、AERA節全開である。そして最後には「東京から避難する必要があるのか」として、「避難の判断については不確定な情報に惑わされず、国の指示に従うべきという専門家も多い」としながら、ある学者のことばを借りて「現在の東京の数値を聞くと家族を住まわせておきたいとは思えないレベル」とまとめているのである。さらに「放射能疎開が始まった」として外国人が国外退避や国内でも西の地域に移動していることも見開きで紹介している。煽った不安の解決策は、疎開の勧めですか。さすがに、お金持ちの朝日新聞関係者の“上から目線”の発想だ。

 これらの記事が書かれたのは、おそらく14,15日でかなり切迫している状況であっただろう。その点は差し引くにしても、せめて取材がどの時点だったかという時系列をしっかりと刻んで伝えるべきではなかったか。AERAの記事は、いつの時点だったかということはほとんど触れていない。いつ言ったかわからない学者の発言を繋げて、最悪の場合の話、想定の話を付け加えれば、読者を不安に陥れるには十分である。

 刻々と変わる状況を適切に把握している読者であれば、紙媒体の時間差を含んで理解することもできる。しかし、多くの場合、紙媒体の記事はそのまま読者の記憶に刻みつけられるのである。センセーショナルであるほど、それだけ深く。

 メディアからの情報がこんなものばかりだと消費者は救われない。しかし、今回の震災では、多くの科学者がインターネット上で、普通の人にもわかりやすく現状を説明しようと様々な試みをしている。信用できるサイトは、いつの時点の情報であるのか明記しており、それが変わる可能性があることも示唆している。しかも、事実と可能性をきちんと分けて、判断材料として示してくれる。出典も明確である。間違いがあれば、見える形で訂正もする。

 私は、こうしたサイトから学んで、身近な地域のモニタリング値を確認することも覚えた。原発の状況は、決して楽観視はできないし、安心するのはまだ早い。でも、一昔前の消費者のように「危ない」情報に踊らされる消費者ばかりではない。いろいろな情報を取捨選択して、「正しく怖がる」ことを、私たちは学びつつある。今回の震災では、テレビや週刊誌よりももっとリアルタイムに正確な情報を入手することができるインターネットの役割を痛感した人が多かったのではないだろうか。

 私ごとだが明後日は小学校の娘の卒業式である。娘の友達の何人かが、先週から本当に関西に疎開しており、「新幹線が動いているうちに森田さんも」と疎開を勧められた。みんな一緒に卒業式に出られるかな、子供たちの気持ちも揺れている。

 必要以上に不安を煽る報道の被害者が、こんな身近なところにいる。

 

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唐木英明先生のコメント

2011-03-20 23:07:22 | Weblog

 日本学術会議副会長で食品安全委員会のリスクコミュニケーション専門調査会委員も務める唐木英明・東京大学名誉教授から原稿を預かりました。4月1日にオープンするサイトに掲載するため執筆をお願いしており、いただいたのですが、今すぐ公開した方がよい内容なので、唐木先生の了解を得て私のブログで先に公開します。お読みください。

以下、唐木英明先生のコメント

…………………………………………………………………………………………………………

軽率な一言

 311日の福島第1原発の事故発生後、福島県は原発から3キロ圏内を避難地域に指定し、10キロ圏内に屋内退避指示を出した。しかし12日に原発1号機で水素爆発が起きて放射線量が増加すると避難地域を20キロに拡大し、15日には30キロ以内の住民に屋内退避指示を出した。

 一方、米国政府16日に避難地域を80キロとし、救援活動中の米軍の80キロ圏内立ち入りも禁止。駐日米大使は「科学的、技術的な情報と、日本政府による公開情報を検討した結果」と説明した。そして17日に米国大使館職員と家族に国外への避難を勧告した。

 日米の対応の違いは、日本政府と東京電力が重大な事実を隠しているという憶測を呼んだ。東京電力と経済産業省原子力安全・保安院の説明も稚拙で、事実と推測を明確に説明できず、記者の非難を浴びることもあった。

 枝野官房長官は17日の記者会見で米国の措置を「自国民保護の観点」と理解を示しながらも、日本は「データを見ながら国民に被害を与えないよう指示している」として、変更しない考えを示した。ところが産経新聞(3/20)によれば保安院の担当者は「避難地域の設定に明確な根拠はない。混乱が発生しないように、さまざまなことを総合的に考慮した政治判断だ」と発言をしたという。

 避難地域の日米の違いは政治的判断だ。しかし判断の背景には科学的な根拠があるはずだ。米国側の根拠を16日付New York Times紙が報じている。それは、1985年のチェルノブイリ原発事故と同程度の事故の想定だった。このとき原子炉から10トンの放射性物質が放出され、その強さは広島に投下された原爆の数百倍に匹敵し、日本版wikipediaによれば事故当日の死者は3000人とも言われる。このときの避難区域は30キロだった。

 もう一つの大事故が1979年のスリーマイル島原発事故だった。この時には16キロの避難区域の設定により住民の被爆は避けられ、環境への影響も軽微で、現在は残った原発の稼動が続いている。

 福島がチェルノブイリになるのであれば避難地域が80キロでも不思議ではない。しかし、それは科学的な判断とはいえない。実際に17日のWall Street journal紙(電子版)は80キロの避難地域設定の根拠に米国の専門家が疑問を抱いていることを報道し、同じ日に米エネルギー省は日本側の措置に問題はないとの認識を示した。 

 リスク管理の程度で費用と共に政治家の評価が決まる。オバマ政権が80キロの避難区域を設けることで失うものより得るものが大きいのは明らかだ。一方、管政権と日本国民にとってはわずかなリスクの回避のためにさらに多くの避難者を出すわけには行かない。

 避難区域の設定は、原子炉周辺の放射能強度と健康被害の程度に基づいて計算される。保安院は当然それを知っているはずだが、「避難区域の設定に根拠はない」という発言は説明不足だ。国民の不安と政府への不信を拡大しないために、丁寧で分かりやすい説明が求められる。

 

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関澤純先生のコメント

2011-03-20 21:50:32 | Weblog

 食品安全委員会のリスクコミュニケーション専門調査会座長を務められ、現在はNPO法人「食品保健科学情報交流協議会」理事長の関澤純先生から、「同法人のウェブサイトに『緊急事態への情報提供コーナー』を設け、『食品からの放射能検出をどう考えるか』を公開した」とお知らせをいただいた。ご参照ください。

NPO法人食品保健科学情報交流協議会「緊急事態への情報提供コーナー」

 ほかにも、分かりやすいページがいろいろ。今回の災害では、科学者たちがそれぞれに懸命な情報発信を続けている。今までの災害や事故の時の状況とまったく違う。

日本放射線影響学会会員有志グループの「福島原子力発電所の事故に伴う放射線の人体影響に関する質問窓口(Q&A)解説について

毎日新聞「Dr.中川のがんから死生を見つめる」福島原発事故の放射線被害・現状は皆無

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放射線被ばくについては、これらのページの参照を

2011-03-19 01:02:29 | Weblog

 放射線被ばく解説については、とてもよいウェブページがいろいろと作られているので、ぜひご参照を。

 八代さんは、「危機感を煽ることと注意喚起を促すことはまったく異なる。今回の状況下で、あきらかに過剰な事例である東海村の被害者の写真を取り上げた報道姿勢に対しては、大きな怒りを禁じえない」と書きつつ、一方で、「放射線は危なくないキャンペーン」がネットワークメディア上ではじまっていることにも深い懸念を示している。結論は、「甘く見すぎず。怖がりすぎず」。まったく同感。

東京大学医学部附属病院放射線科放射線治療部門「福島原発における放射線被ばくの解説」

NATROMの日記

財団法人原子力安全研究協会「緊急被ばく医療ポケットブック

一般社団法人サイエンス・メディア・センター

シノドスジャーナル・八代嘉美さん『放射線は「甘く見すぎず」「怖がりすぎず」』

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「ヨウ素摂取のため、おにぎりに海苔を巻く」情報の無責任

2011-03-16 14:52:07 | Weblog

 インターネットにさまざまな情報が溢れ、大きな混乱が起きているようだ。

 福島第一原子力発電所の事故による放射線漏れにかんして、「ヨウ素剤が効く。ヨウ素剤がなければ、ヨウ素が入っているうがい薬を飲めばいい。ヨウ素が多く含まれる昆布や海苔を食べるのもいい」などの説が氾濫している。

 ラジオで、チェルノブイリの事故の時に現地支援した医師が、「避難所のおにぎりに海苔を巻いてあげるだけで、子供への放射能被爆被害が軽減される」という趣旨を発言したそうで、生態学関係者のメーリングリストでも「TVに映るおにぎりに海苔が巻かれているか、注目しているところです。もし、避難関係に近い方がこれを読んでおられたら、ぜひ、担当の方にもお伝えしてみてください」という情報が流れている。

 

 とんでもない話だと私は思う。

 

 たしかに、事故で放射性ヨウ素が大量に空中に拡散し体の中に取り込んでしまう恐れがある場合、医師の指示に従ってヨウ素剤を予防的に飲むことに意味はある。放射性ヨウ素は甲状腺に蓄積し甲状腺がんなどのリスクを上げるため、あらかじめ放射線を発しない安定ヨウ素剤を服用し甲状腺に満たしておいて、放射性ヨウ素を取り込む量をできるだけ抑えるのだ。

 だがまず、現在は放射性ヨウ素が大量拡散している、という状況にはないし、そうした事態を招かないように関係者の懸命の努力が続いている。それに、安定ヨウ素剤の効果があるのは放射性ヨウ素に対してのみで、ほかの放射性物質には効かない。さらに、40歳以上については、放射性ヨウ素による甲状腺がん等の発生確率が増加しないため、安定ヨウ素剤を服用する必要はない、逆に言うと40歳以上は安定ヨウ素剤を飲んでも意味はない、とされている。

 ヨウ素剤を服用する場合も、放射性ヨウ素を体に取り込んでしまう直前、または直後に新生児で12.5mg、13歳以上40歳未満で100mgを1回に摂取するとされている。一方、食品中のヨウ素含有量はそれぞれ100gあたり、「あまのり焼きのり」2.1mg、「まこんぶ素干し」240mg、「カットわかめ」8.5mg(食品成分データベースより)。昆布や海苔などを1度に100gも食べるのは不可能であり、消化吸収に時間もかかり効果を期待できない。

 安定ヨウ素剤摂取の意味、食品からの摂取の問題点等については、原子力安全委員会原子力施設等防災専門部会の「原子力災害時における安定ヨウ素剤予防服用の考え方について」でも説明されている。

 

 国や県が万一に備えて安定ヨウ素剤を備えることに意味はある。しかし、おにぎりに海苔を巻いても食べても摂取できる量はごくわずかでしかない。「おにぎりに海苔を巻くだけで、子供への放射能被爆被害が軽減される」という言い方を完全否定はできないが、その効果は限りなくゼロに近い。

 なのに、避難所で懸命に炊き出しをしている人たちが「おにぎりに海苔を巻けない。子どもたちを救えない」などと思ってしまったら、これほど不幸なことはない。海苔を探して回り、貴重なガソリンを消費したり体力を消耗したり、というような事態もあってはならない。

 

 ヨウ素摂取は、過剰摂取を引き起こしやすい元素でもある。実際に、昆布の摂り過ぎによる不調や健康食品、サプリメントによる健康被害も報告されている。現在、ネット上では健康食品販売会社が「放射能を抑えるサプリ」などと宣伝しているが、惑わされるべきではない。

 

 うがい薬については、説明する必要もないだろう。ヨウ素の含有量は少なく、飲んだ場合の安全性など確認されていない。独立行政法人放射線医学総合研究所が「ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけません -インターネット等に流れている根拠のない情報に注意-」を出している。

 なぜ、多くの人たちが無責任に情報を流してしまうのだろう。「一歩立ち止まってゆっくり考えること、調べること」を肝に銘じたい、と改めて思う。巨大地震と大津波で多くの人たちの命が奪われ、何十万人もの人々が避難生活を余儀なくされている。原子力発電所の事故が、社会を大きく揺るがしている。身を切られるような辛さを感じるが、でも、私は生きている。私にできることを粛々と実行するしかない。

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オズの魔法使いとニセ科学の伝道師はいかに聴衆を震え上がらせたか?〜Dr. Oz Showウォッチ1

2011-01-20 16:13:08 | Weblog

遺伝子組換え食品にかんする情報は、日本のマスメディアでは科学でないものに浸食されねじ曲げられることがしばしばだ。だが、アメリカも同様らしい。

The Dr. Oz Showという番組がある。Columbia University College of Physicians & SurgeonsProfessor of SurgeryDr. Mehmet Ozがホストを務める人気番組。Dr.Ozは、かの有名なThe Oprah Winfrey Showに5年間も出演し、晴れて2009年には、Oprahのプロダクションの制作による冠番組に進出した。立派なウェブサイトもあり、番組はエミー賞にもノミネートされている。視聴者も多いだろう。

このDr.Oz Showで昨年12月、遺伝子組換え特集があった。科学者をゲストに招いて科学的な議論を装ったのが、結局はトンデモ番組になってしまった。そして、ここからが面白いのだが、ゲストが番組出演後、どの部分の録画がカットされたのかなどブログで説明し、改めて科学を市民に伝えることの難しさや、どのような方法論をとったらよいか、などについて論じているのだ。

このトンデモ番組は、日本の遺伝子組換えをめぐる状況とも無縁ではない。日本の食品や農業関係者にとっても、極めて多くの示唆に富む番組であり、ブログの内容であるように思うので、紹介したい。

番組は、ネットでも視聴できる。わずか15分ほどの特集だ。そして、出演者した科学者のブログは、なんとも嬉しいことに、日経BPFood Scienceで海外の遺伝子組換え情報を発信し続けた宗谷敏さんが、翻訳してくださった。私に「Dr.Oz Show 面白いよ。ブログも勉強になるよ」と連絡してくださったのも宗谷さんだ。

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オズの魔法使いとニセ科学の伝道師はいかに聴衆を震え上がらせたか?〜Dr. Oz Showウォッチ2

2011-01-20 16:04:46 | Weblog

まずは、Dr. Oz Show遺伝子組換え特集の内容をかいつまんで紹介しよう。

ゲストは、U.C.Davisで遺伝子組換え米を研究しProfessor of Plant Pathologyを務めるPamela Ronald Ph.D.  、Consumer Union所属の科学者、そして遺伝子組換え反対の本を出している作家、Jeffrey M. Smithの3人である。 

ホストが医師、科学者がゲストということで、科学的な議論になるか、と期待させるが、そうはならない。Jeffrey Smithが「The American Academy of Emergency Medicineという団体が、遺伝子組換えは危険だと指摘している」と述べ始め、会場の観覧者を震え上がらせた。この団体は実は、代替医療を推進する極めてマイナーな団体で、遺伝子組換えについても、古くて既に反証されているような研究結果や、いい加減な実験設計による結果を振りかざして反対運動を繰り広げているようなところだ。 

 Pamela Ronaldは、「危ないという主張は、科学ではない。論文だって出ていない。科学に基づいて考えなければ」と主張するのだが、Jeffrey SmithにもMehmet Ozにも通用しない。結局は「怖いですね」「ラベルが必要ですね」「ラベルがあったら避けられますね」というまとめで、観覧者の拍手喝采、ということになってしまった。

科学のステップは、方法が明確で査読を経て論文として公表され、第三者による追試を経て「正しい」と認識されるのが一般的だが、そうした科学の“常識”は、TVショーにとってはどうでもよいものだったようだ。「日本でも、同じだなあ」と思う人も多いのではないか。

 Pamela Ronaldは、自身が遺伝子組換えを研究している一方、夫は有機農業の研究者で実践もしているという異色の人だ。健全な科学に基づく適切な情報を市民に伝えようと本も書いており、ブログでも発信し続けている。

だから、TVショーにも出たのだろうが、終わってみて難しさも感じたようだ。感想を書いたブログには複雑な思いがあふれており、181ものコメントがついている。宗谷さんの訳をお読みいただきたい。ちなみに、日本語に翻訳してウェブに掲載することについては、宗谷さんがPamela Ronaldから直接、了解を得ている。

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