跳箱

跳び箱でも飛箱でも飛び箱でもとびばこでもいいけどそこはそれ跳箱なんです。体育日和のお供にどうぞ。

FONの問題 その後のその後

2007-06-16 04:40:15 | メディア
インフラただ乗りや、リスクの利用者への押し付け等々、なにかと問題が多いFONが2007/05/18に利用規約を改定したというので、どれほどまともになったんだろう?と期待(ウソ)しつつチェックしてみることにする。改定されたの一ヶ月近く前ジャン、と指摘される向きもあろうけど、半年も前に書いたエントリにいまだにコメントが付いたりするので、フォローしといたほうがよかろうと。

それに、先日届いた日経コミュニケーション6/15が特集1で"FONはどれだけ使える?"と程度の低い(跳箱主観でありますからこの点突っ込み不要に願います)記事を掲載していたり、日経ビジネスも、さもNTTがFONを応援しているかのような明らかに間違った印象を読者に与えかねない大変程度の低い記事を掲載するなど、このところ日経系媒体は伊藤忠から大口の広告でも貰ったんか?と疑いたくなるような程度の低いFON翼賛記事を書きまくっているので、突っ込まずにはいられないというのも正直なところ。

新しくなったFONの利用規約でも、以前、リスクを利用者に転化していると指摘した、

「Linus」 または「Bill」の カテゴリを選択したユーザーは、本利用規約を承認し、「FONコミュニティー」に登録する前に:
(i) 「FON ソーシャル・ルーター」または「FON ソフトウェア」と互換性のあるルーターを入手し、
(ii) 「Fonero」との帯域のシェアを許可する契約を「ISP」と締結する必要があります。

条項がまるごと残っています。

また、以前から指摘されていた電気通信事業法上のリスクに対応するためと考えられますが、

6.1.「あなた」が「Linus」として登録する場合は、「あなた」はルーターを「FONコミュニティー」に接続し、FONに登録することで、「FONホットスポット」を形成することを理解しています。他の「ユーザー」は、この「FONホットスポット」を通じてインターネットにアクセスできます。これらの本利用規約に従ってこの設備を提供および管理することの対価として、「あなた」にはすべての「FONホットスポット」にアクセスする権利が与えられます。

と書かれていますが、この定義で営利性が完全に否定できるか少々疑問が残ります。

さらに蛇足感の強い、

「あなた」が電気通信事業法に基づく電気通信事業者としてFONホットスポットを提供する行為は認められません。

を記述して、参考事例として、

また、以下のような行為を行った場合には、電気通信事業を営んでいる行為と見なされる可能性があります。
-外形的に他人の需要に供すると認められる複数のルーターの設置
-外形的に他人の需要に供すると認められるステッカーの掲示

を挙げていますが、FONマップだって外形的に他人の需要に供すると認められる標章でありましょう。なにやってんだか...。

さらには、利用者が電気通信事業法に違反するリスクの高いサービスを提供しておきながら、

「あなた」が行う行為が電気通信事業を営む行為に該当するにも関わらず電気通信事業法に基づく登録または届出を行わない場合は、電気通信事業法第177条または第185 条により罰せられる恐れがあります。万一FONが電気通信事業を営む者を発見した場合には、FONは「あなた」に警告をするとともに、すみやかに是正されない場合には契約を解除いたします。

ですと。大変ユーザー思いな会社ですな。(はあと)

さらに繰り返し、エンドユーザーに危険=責任を負担させるべく、

「あなた」が「Linus」である場合には、「ISP」との契約上の義務の適合性について単独で責任を負うため、「あなた」はISP ユーザー規約において帯域のシェアが許可されているかを確認しなければなりません。FONは「あなた」がISP との契約に違反している事実を把握した場合、FONはあなたにその旨を通知し是正するよう警告します。警告が3 回に及んでも是正されない場合には、FONはあなたとの契約を解除することができます。

と記述しています。

もうひとつおまけに、

「Fonero」はいかなる場合も「通信の秘密」を侵してはなりません。「通信の秘密」を侵した場合には、電気通信事業法第179 条の罰則が適用される可能性があります。また、FONがその事実を確認した場合には当該「Fonero」との契約を解除するとともに、監督官庁へすみやかに事実を報告することがあります。

と日本では「Bill」は提供されていないわけですからFONによって「Linus」であり「Fonero」であるところの「あなた」が電気通信事業者としてFONホットスポットを提供する行為は認められていないにも関わらず、電気通信事業法上のリスクは「あなた」が負うことになる、と謎の主張を展開しています。

消費者保護の観点から考えてどうにも問題が多いとしかコメントのしようのない規約です。

以前も指摘したように、日本の大手プロバイダの多く、(日本のISP契約のうち2000万契約以上、個別ISPとしては@Nifty、OCN、Yahoo BB、BIGLOBE、DION、ぷらら)では明示的または黙示的にFONの利用を禁じています(または禁じていると思われます)が、FONの公式サイトでは世界中のISPほとんとが、FONと友達ですと、不当表示の疑いがもたれる記述を平然と行っています。

少なくとも、提携先となっている日本のISPはBB.exciteとisao.net、Interlink、Brastel Internet Provider、i-revoのみ。以前にも書いたが、BB.exiteの利用者数はせいぜい3~5万人(契約数ベース)、isao.netは今やCSKの100%子会社になってしまっているほど凋落していて経営指標が入手できませんが、isao.netのキャンペーン規模が1000人とbb.exciteの1/3にとどまる点から推測すると、1~3万契約あるかないか、といったところでしょう。同様にBrastel Internet Providerも1~3万契約あるかないか、Interlinkとi-revoは特段の記載が無いので1万契約以下と想定します。

とすると、多く見積もっても、日本でFONを明示的に接続可能と表明しているISPは5社、せいぜい13万契約(実際は、6~7万契約)しか無いと思われます。

実際問題、Flet's ISDNなどのナローバンド回線でISPと接続している利用者はFONにとってあまり魅力的な「あなた」ではない(まあ、ナローバンド利用者な「あなた」にとってはただ乗りのチャンスでありますから、結構食いつく(ついてる?)かもしれませんが)でしょうから、ブロードバンド契約数をベースに推論を進めますと、今年3月末時点のブロードバンド契約数は2644万に達していますので、FONが提携しているISPの保有している契約者数は、全体の0.5%程度に過ぎません。

その0.5%のISPシェアのそのまた10%つまり全体の0.05%、つまり1.3万程度がFONを使ってくれたらラッキー、程度のスケール感しかないFONが、

世界中のISPほとんとが、FONと友達です

とは片腹痛いです。というよりほとんど誇大妄想じゃないでしょうか?

ちなみに、冒頭で紹介した日経コミュニケーション6/15号はFONが日本国内で1万5881件のAPを獲得していると報じており、上述の試算と非常に近い値となっています。とはいえ同記事でも接続できたAPは5割と記載されているので実数は7000~8000に過ぎないと思われますが...。

FONは相変わらず問題が多いと指摘せざるを得ません。

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18 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
FON とプロバイダ (mohno)
2007-06-19 00:48:40
おじゃまします。
デバイスを売るためには大手のハードメーカーも乗り出すようになってきましたが、
http://www.happy-wireless-fes.com/
大手 ISP の方はつれないようですね。
http://www.happy-wireless-fes.com/
しかし、このままの状態であれば「マイナーなサービス」として、特に裁判沙汰にもならずに、細々と運営し続けられたりするのかなという気がしないでもありません。 http://wireless.livedoor.com/ のような意気込みを破壊しつつ :-<
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適時削除どうぞ (Typo指摘なので)
2007-06-19 01:01:15
>リスクを利用者に転化していると指摘した
転化→転嫁

以前のエントリ含め、私はISPとのやりとりというより行政の胸先三寸なのかなという感想をもっています。
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そもそも、 (跳箱管理人)
2007-06-19 01:58:38
こんなチープなIPハンドオーバーも実装していないソリューションで携帯電話のフリしたって、普通のユーザーならツカエネー感を強く感じておしまいでしょう。一部想像力のたくましい方々には未来を予感させてくれるかもしれませんが...。

たとえば、無線基地局は置局設計が命であるのに適当に設置された基地局=無線ルータがそう都合よく不感地帯をつぶせるように配置されるわけないですし、たまさか無線基地局の密度が高いエリアが現れたとしても基地局の信号強度やチャネルをいい具合にバランス取る(協調動作)させる技術力がFONごときには無さげであります。

アドホックネットワーク技術なめたらいかん、つうことです。(ま、アドホックネットワークもいつかは安上がりな技術になるはずですが)

ちなみ"行政の胸先三寸"などと言われますが、ネットワーク中立性に関する議論をまじめに追いかけたことありますか?ちゃんと勉強したらそんなチープなもの(行政の胸先三寸)ではないことが理解できるはずです。

あ、この件がなぜネットワーク中立性の議論にディペンドするのか理解できてますか?
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Re: FON とプロバイダ (mohno)
2007-06-19 18:38:45
↑すみません。同じ URL を書いてしまっていました(ISP についてはハンドル名のリンク先)
「米国ではネットワーク中立性で政治問題化している」と“想像力のたくましい方”が書かれていますね(コメント欄)。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/36b7dad02d60b2b4668881c1103e57e5

ところで日経ビジネスの件については、このようなコメントが出ていました。
http://www.fonshop.jp/fonjp_files/release/8_Release_NikkeiArticle.pdf
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あのさ、 (跳箱管理人)
2007-06-19 21:34:05
mohno氏は昨今の学生さんに多いと聞き及ぶサーチエンジンで検索してきた結果をコピペしてレポート提出する手合いのガキと同類ですか?

池田センセがなにを書いているか探してきたとしても、mohno氏がネットワーク中立性の問題構造を理解している証明にはなりません。そもそも池田センセが言及しているのは米国の動向(それも少々古い)ですしね。ここで議論になっているのは日本市場の話ですから引用としても少々場違いです。

また日経ビジネスの記事に対してFONがどのようなリリースを出しているかなど、入り口に過ぎません。重大な事実誤認に基づく誤報であると本当にFONが考えているならきちんと訴訟を起こすのではないか?そもそもまったく言及もされていないことが日経媒体で記事になるのか?等々、もうちょっと頭使って考えてはどうですか?

それから、話は戻りますが、池田センセね。この方は確かに"想像力がたくましい"方の事例として適切ではあります。ちなみに跳箱からもリンクしてますが、跳箱はこのセンセは行く先々で問題を起こす、ある種の達人と考えております。センセ独特の視点(電波行政周辺とか)はひとつの極論(ある設問に対して両極となる論を立てられれば、落ち着きどころはその両極の間のどこかに落ち着くのは自明。ただし、設問が間違っていたり、問題構造把握に問題があれば議論が迷走するのも当然の帰結)として考慮に値すると思いますが、落ち着きどころに落とし込む、という(だらしない)大人な振る舞いができないお方とお見受けしておりますので、あくまで参考意見として拝聴しております。

ついでに、さきほどもちらっと触れましたが米国におけるネットワーク中立性の議論は第一ラウンドがgoogleなどのフリーライダーに不利な形で終結しています。googleなどは第二ラウンドで巻き返したいところでしょうが、あまりうまくいかないでしょう。(理由はめんどくさいから説明しない)

そもそもmohno氏が、FONの将来像は行政の胸先三寸で決まる、と立論しているんですから、自身の立論に基づいて、ネットワーク中立性の問題解決など行政の胸先三寸で決められるということを証明するなり、そもそもネットワーク中立性の問題は関係ないと説明するなりしてくれなければ議論が進みません。

出来の悪い感想文にはあまり興味が無いのでそこんとこよろしく。
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Re: あのさ、 (mohno)
2007-06-19 22:24:51
たぶん、誤解されているのだと思いますが(「胸先三寸」と書いたのは私ではありません)、跳箱さんのご意見には、同意するしかございません。

※池田信夫blogは出入り禁止になりました^_^;
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あれま (跳箱管理人)
2007-06-20 01:30:08
それは失礼!それではお詫びがてらひとつヒントを差し上げとこう。

エキサイトの株価の推移と業績下方修正のタイミングと一連のFONの動きを時系列に並べてみなはれ。
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mohno@mohno.com (mohno)
2007-06-20 02:28:51
あ、いや、そこにはあまり興味が^_^;

2006/3 フォンCEO、Martin Varsavsky氏、来日(その後しばらく音沙汰なし)
2006年 エキサイト株価(以下、株価)下落傾向
2006/12 フォン・ジャパン始動、エキサイトと提携
2007/1 株価ちょっと回復(その後下落)
2007/2 エキサイト業績下方修正
2007/3 フォン・ワイヤレスに(伊藤忠と)エキサイトが出資、日経ビジネス勇み足:-p(株価一時回復、その後下落)
2007/5 エキサイト短信発表、株価回復

こんなものでいいでしょうか。しかし、エキサイトがそこまで入れ込んでいるとは知りませんでした^_^; どう考えても焼け石に水。
もっとも、最初にコメントしたとおり、ソニー本体が FON と共同キャンペーンを実施しているのに、ソニー子会社である so-net が FON を拒否するというのは二枚舌・・・いや、不整合を感じます(so-net にしてみれば迷惑なだけなんでしょうが)。

とはいえ、大手 ISP も FON の利用規約が有効であれば、形式的には自分の顧客を訴えるしかないので、影響が軽微なうちは波風立てず無視したほうが得策と判断しそうです。フォン本体も、大きな投資が必要なビジネスではないので、このまま細々と「Web 2*0」が続いていくのではないかという気もします。あと何年かすれば「あれは何だったんだろう」と思う人が出てくるかもしれません。:-)
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これも適時削除どうぞ (続・Typo指摘なので)
2007-06-20 03:21:25
>あ、この件がなぜネットワーク中立性の議論にディペンドするのか理解できてますか?

お怒りのようでまったく申し訳ありません。私の無理解をお許し下さい。
そのような件については興味がございません。正直なところFONそのものにもあまり興味がありません。
またツカエネー感についてはわたくしもいたく感ずるところでございます。

先に述べました私の感想は「電気通信事業法上のリスク(仮に自分がFONを利用する場合においての)」についてのものであり、今のところお上は(私がネットワークの中立性に興味がないのと同様)FONに興味がないので野放しなのだろうなぁという意味で「胸先三寸」と発言した次第であります。

mohnoさんにもご迷惑おかけしました。お詫びします。
返信する
どちらかというと (跳箱管理人)
2007-06-20 15:40:28
> FONに興味がない

というよりは、

"問題が沸点に達していないのにわざわざ手を突っ込んで沸騰させる必然性が見出せない"

の方が当たっている気がしますが、胸先三寸の意は理解しました。

同一人物と誤認した跳箱にも非はありますのでお気になさらぬよう。
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