世界の自動車業界で「向かうところ敵なし」の成長を続けたトヨタにも、ついに“潮目”が訪れた。円高、原材料高、米景気減速の「三重苦」が王者の行く手を阻み、営業利益の3割減を予想するなど、先行きはなかなか見通せない。最大の稼ぎ場である米国市場で減産や値上げに踏み切る一方で、「乾いたぞうきんを搾る」といわれた原価低減活動をさらに徹底させ、難局を打開する考えだ。
■死角
8年連続で過去最高の収益を記録した20年3月期は、中国やインドなど新興国中心に販売が拡大した。売上高は26兆円を超え、死角など見当たらないほど絶好調にみえたトヨタ。
だが、8日の決算発表会見で渡辺捷昭社長は、「為替と材料高の克服が大きな課題。これを吸収できるかで、(トヨタの)真価が問われている」と語った。
今後1年の為替レートが対ドルで14円、対ユーロでも7円の円高を想定した。巨大企業のトヨタだけに、円高による収益への影響はホンダの2倍以上に上る。また、自動車を構成する鋼材や内装材の樹脂などは、資源高騰の影響を受ける。例えば、鉄鋼メーカーからは、3~4割もの値上げを要請される厳しい交渉の最中にある。
さらに深刻なのは、最大市場の米国での販売不振だ。低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題や原油高の影響で個人消費は低迷し、3月 の販売実績も10・3%減の足踏みとなった。今年の米国販売目標の264万台も「見直しに入った」(鈴木武専務)という。
■お家芸
トヨタは三重苦をどう克服するのか。渡辺社長は「質の向上なくして成長なし」に回答を見いだす。
米国で今月からインディアナ工場で不振のピックアップトラックや多目的スポーツ車(SUV)を減産し、ほぼ全車種で平均0・7%の値上げに踏み切る。
それ以上に力を入れるのが、“お家芸”の原価低減活動だ。鋼板の種類の削減や工法の見直しなどでコストを削減し、鋼材価格などの値上げ分を吸収したい考え。さらに、強さの源泉とされた設備投資や研究開発もそれぞれ800億円、400億円減らすという。
メーカーとしては事実上、世界最大の企業となったトヨタ。それでも、創業以来の遺伝子である「ムリ、ムダを省く地道な努力」(渡辺社長)の原点に返り、危機の克服に挑む。
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