自制不可、繰り返す性犯罪「私を刑務所から出さないで下さい」
平成21年12月、強姦(ごうかん)罪で服役していた男(43)が青森刑務所(青森市)を出所した。懲役7年の獄中生活から晴れて自由の身になり、あふれる高揚感。「絶対に更生してみせる」。そう心に誓い、再スタートを切ったはずだった。
男にとって4度目の誓いだ。21歳で面識のない女性の下着を脱がせて以降、全国各地で性犯罪を重ね、関東や東北の刑務所に4回服役していた。その期間は計10年に上る。
だが、今回も結果は同じだった。出所からわずか2日後、東北地方で強姦未遂事件を起こし、その後流れ着いた大阪で女性を襲い続け、24年6月に大阪府警に 逮捕された。送検された事件は27件。起訴罪名は強姦致傷、強盗強姦、わいせつ目的略取、強制わいせつ、窃盗と多岐にわたる。うち性犯罪の被害者の年齢は 小学生から50代まで、まさに見境のない犯行だった。
大阪府警に男が大阪へ移ってきたことを知る術(すべ)はなく、逮捕のきっかけはひったくりだったという。
「酒を飲むと善悪の判断ができなくなる」。7月下旬、大阪拘置所(大阪市都島区)で取材に応じた男は淡々と再犯を重ねた原因を説明し、「被害者には申し訳ない」と心がこもっているとは言い難い口調で謝罪の言葉を口にした。
そして、性犯罪に走る背景もこのように語った。
「1歳のときに生みの母親と生き別れになり、成人してからも強烈に母性を求めるようになった…」
「一生刑務所に」と懇願
出所後に行き場を失い、縁もゆかりもない大阪に流れ着き、性犯罪を繰り返す男はほかにもいる。
今年7月、小学校の女児を連れ去った容疑で府警に逮捕された男(60)の犯歴もすさまじいものだった。昭和50年に福岡で強姦未遂事件を起こした のをはじめ、61年に京都、平成4年に東京都江戸川区で女児を誘拐して逮捕されるなど、40年近くの間に全国で性犯罪を繰り返した。
男の女児に対する執着は激しく、東京で起こした事件では、誘拐した女児の殺害も決意したが、寸前で警察官に発見され、間一髪のところで逮捕されたケースもあった。そんないわく付きの男だったが、もちろん警察に居場所を把握する術はなかった。
結局、男は大阪で女児2人を誘拐し逮捕された。府警の調べに「刑務所に入るたびに反省したが、我慢できなかった。大きな事件を起こす前に、私を一生、刑務所に入れておいてほしい」と懇願したという。
いたちごっこ
性犯罪を繰り返す常習犯からどうやって身を守るか。過去には、宮城県が前歴者に衛星利用測位システム(GPS)を常時携帯させ、行動監視する条例案を検討したが、条例化は見送られたままだ。
一方、大阪府は昨年10月、18歳未満の子供への性犯罪の前歴者が府内に住む場合、住所などの届け出を義務づけた「子どもを性犯罪から守る条例」を施行した。罰則もあるが、実際は届け出ない出所者も多く、効果は限定的だ。
関西国際大の桐生正幸教授(犯罪心理学)は「人間関係や経済的な要因が絡む殺人や窃盗と異なり、生い立ちや考え方が強く影響する性犯罪を懲役や監視だけで 防止していくことは困難」と指摘する。米国では前歴者の情報を一般公開するミーガン法が施行されているが、「前歴者の社会復帰の妨げにもなっている」と話す。
青森刑務所を出所し、大阪府警に逮捕された男は「GPSやミーガン法のような監視はいいことかもしれないけど、自分がされたら嫌」と身勝手に言い 放った。また、前回逮捕された事件で実名が報道され、インターネット上にいつまでも名前が残っているため、「生活がしにくく、大阪では別名で生活してい た」とも。
桐生教授はいう。「再犯防止のためのプログラムを受講させたり、場合によってはホルモン剤を投与して性的な衝動を抑える薬物療法も視野に入れたり、根本的な対策が必要。そうしなければ出所しては罪を繰り返すいたちごっこが続くだけだ」。
「生きるため演じた」自己嫌悪に苦しみ、自分を責め傷つけた被害女性…加害者に「罪悪感希薄」の不条理と不正義
世界が一変したのは、短大生だった20歳の11月のことだ。大阪府の山本郁恵さん(34)はその日、友人の紹介で初めて知り合った男3人に強姦(ごうかん)された。
男女10人で廃虚の病院での肝試しを楽しんでいた途中に友人とはぐれ、だまされて連れて行かれたのが加害者の家。「騒いだら山に捨てるぞ!」と脅され、翌日の昼に解放されるまで半日以上、3人の男に何度も何度も強姦された。
抵抗して相手の機嫌を損ねたら、殴られるか刺されるかもしれない。「一番軽い被害で帰りたい」。その一心で、楽しんでいるふりを必死で演じた。心配した友 人から加害者の携帯電話に連絡があったが、男は山本さんの体の上で、「山本さんは家に帰った」と平然と嘘をついた。自分を壊していく男たちを見ながら、 「生きて帰る。そして絶対にこいつらを許さない」と、それだけを念じ続けていたことを覚えている。
心と体への自傷行為
事件後、山本さんを最も苦しめたのが、自分へのどうしようもない嫌悪感だった。被害に遭ったのは山口県光市の母子殺害事件と同じころ。加害者からの暴行に抵抗して殺害された被害者のニュースを見る度に「格好いい」と感じた。
「私は生きるために抵抗しなかった。私は汚い」
被害を受けたとき、ぼろぼろに傷つけられた心とは裏腹に身体的な反応があったことも自己嫌悪に拍車をかけた。自分を責め、自分の体を嫌い、ホームセンター で買ってきたブロックを体に打ちつけ、ガラスを割って手を血まみれにした。心と体への自傷行為は、25歳のときに自殺未遂をしたことがきっかけで、自分の 中の「生きたい」という思いに気付くまで、続いた。
苦悩の末、被害と向き合い、乗り越えた。回復できるということをほかの被害者にも知ってほしいと感じ、実名を公表している。
無抵抗は恐怖のせい
恐怖から無抵抗になる被害者の心理を、加害者は曲解する。山本さんを脅して集団強姦したにもかかわらず、加害者は解放するときに「また遊ぼうな」といって、連絡先を教えてきたという。山本さんは「彼らに罪の意識はなかったと思う」と振り返る。
事件から3カ月後、加害者の3人は大阪府警に集団強姦容疑で逮捕された。全員19歳で少年院送致になったが、入所期間は主犯格が半年、他の2人は2週間と いう短さ。謝罪どころか、弁護人が逮捕直後に「反省しているから被害届を取り下げてほしい」と言ってきたという。「逮捕されても『ついてなかったな』という感じだったのではないか」と思えてならない。
性障害専門医療センター(東京都)代表理事の福井裕輝医師(44)は「加害者の多くは女性が恐怖で無抵抗でいることがわからず、同意しているものだと思い込む。それが性暴力が発生する原因の一つだろう」と指摘する。
常習者の倒錯
強姦などの性犯罪の刑事裁判でも、被害女性と「合意があった」と主張する被告は少なくない。実際、完全に倒錯した考えを持つ常習犯もいる。
大阪府警に強姦や強制わいせつなど27件の事件で送検された男は「自分は合意のつもりだった。相手も許してくれていると思っていた」と話し、カッターナイフで女性を脅したことをこう弁解する。「刃物を見せると相手は冷静になってくれ、僕の話を聞いてくれる。突きつけないとギャーギャー騒いでしまう」。
福井医師は性犯罪者について「罪の意識以前に、女性の感情を理解する能力が劣っている。専門の治療をしない限り、再犯の可能性がでてくる」と警鐘を鳴らす。
山本さんは訴える。「多くの男性は『自分は性暴力なんてしない』と思っている。でも、本当にそうでしょうか。女性が乗り気にみえたとしても、心の中はわからない。わからないということを、自覚してください」。
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