
台湾でもDPP前政権の〝置き土産〟である「ガソリン価格の上昇という地雷」(15人 台湾体当たり生活記様)が遂に炸裂したようですが、今後公共料金等生活品目の値上げが続くでしょうから、CPIがどう推移するか興味深いところです。やれマヨネーズがまた値上げだと言われても私にはピンとこないのですが、自身にとっての「生活必需品」であるベルリンやウィーンのオーケストラのチケットが共に4千円値上げというのは痛い。先行で当たってしまいましたが、ベルリン・フィルの公演2回で8万というのはさすがに高いだろ・・・
◆New Taiwan leader reportedly cautious with China(AP)
◆台湾の国際活動に柔軟姿勢 胡総書記「理解している」(産経)
◆王毅前駐日大使を台湾担当に起用 中国“異例”人事 日本の接近牽制(産経)
<Ma took office last week. But in an interview with The Associated Press at his Taipei home, Lee said Ma had the ability to withstand pressure from Nationalist hard-liners and would hew to his promise not to discuss unification during his presidency. "When Ma sees people in the Nationalists pursuing cross-strait ties overzealously, he will take China ties slowly and deal with them step by step in the best interests of Taiwan," Lee said.>
(馬氏は先週就任したばかりだが、李氏は台北の自宅で行われたAP通信とのインタビューで、馬氏には国民党内の強硬派からの圧力に耐え得る資質があり、在任中に統一問題を協議しないとする公約を遵守するだろうという考えを示した。「党員が両岸関係の強化を過度に要求してきたと見たら、馬氏は対中傾斜を緩め、台湾の国益が最適となるよう慎重な対中政策を採るでしょう)
外国という場、および外国メディアを効果的に活用して自己のメッセージを発信するのは李登輝元総統の常套手段といった感があります。(総統選前は日本の月刊誌が相手でしたが)馬氏が実際にどう出るかというより李氏の「希望的観測」という色彩が強く(以前「馬氏はプレッシャーに弱い」と言っていなかったか?)、このAP通信との単独会見は当然馬氏本人にも向けられたものでしょう。
李氏はROC総統時代に「国家統一綱領」を制定しましたが、同綱領では大陸地区における「自由・民主・均富」の実現を終極統一の条件とする高いハードルが設けられていました。それと同様の〝設計思想〟で、0か1かの踏み絵を踏まされないような「時間稼ぎ」的な動きを馬氏に求めているのではないかという気がします。台湾海峡の両岸に並存する異なる統治実態が不即不離の現状を維持し、安定的に推移するのは日米両国が求めるところでもありますが・・・・
<Lee's influence has already affected Ma's administration, with the new president choosing a Lee protege to take the key post of coordinator for government China policy. Nationalist conservatives panned the appointment of Lai Shin-yuan as chairwoman of the Mainland Affairs Council, charging that her outspoken support for Taiwanese sovereignty could undermine warming ties between Taiwan and China. Lee said Ma discussed the appointment with him beforehand, and insisted that Lai's role would be to slow the pace of China ties when that was deemed necessary. "Lai should be able to serve as a brake," Lee said.>
(新総統が李氏の子飼いを対中政策を取り持つ鍵となるポストに指名するなど、李氏の影響力は既に馬政権にも及んでいる。国民党保守派は、台湾の主権を公然と主張する頼幸媛氏を大陸委員会の主任に指名するのは台中間の雪解けムードに水を差しかねないと酷評した。李氏は馬氏から根回しがあったことを明らかにするとともに、頼氏には必要に応じて対中傾斜の手綱を引く役割が求められると指摘する。「頼氏はブレーキの役目を果たすべきなのです」)
AP電では退任後も健在な李氏のプレゼンスにも言及していましたが、馬氏との事前折衝の裏側を漏らしているあたりは「したたかな隣人」の面目躍如たるところと言うべきか。実務交渉そのものは海峡交流基金会ルートで行われるのでしょうが、行政院大陸委員会は、DPP政権時と同様それを「論評」するような立場になるのでしょうかね。
〝大陸同胞〟への台湾観光解禁でそこそこ台湾に金は落ちる(不法滞在者も落ちそうですが)とは思いますし、「両岸三通」が本格化すれば物流コストの削減等の効果が期待できるでしょう。ただ、後者は明日からでもというわけにはいきませんし、その間の世界的な景気減速懸念や原油高等に抗し得るだけのパフォーマンスが見込めるのかどうか。誰が舵を取っても難しい時代だとは思いますが、中国人観光客を当て込んで観光関連業界が値上げラッシュに走ると、CPI上昇という形で自国民のささやかな週末にも影響が出るかもしれません。サプライサイドの価格の上方硬直性は日本の感覚とはだいぶ違いますからねぇ・・・・
<Discussing Wednesday's meeting in Beijing between Hu and Wu, Lee said real progress between Taiwan and China could only come when they employ a "one-track platform." That appeared to be a call for the sides to hold government-to-government contacts, rather than meetings between representatives of their ruling parties. China has resisted government-to-government contacts in the past, fearing they might confer legitimacy on Taiwan as a separate political entity.>
(水曜日に北京で行われた胡・呉両主席の会談について、李氏は「単線プラットホーム」の採択なしに台中関係の真の発展は望めないという考えを示した。これは与党代表同士の会談ではなく、政府間交渉を求める意向をにじませる発言であるが、独立した統治実態としての台湾の存在を正当化しかねないとする中国は、これまで政府間交渉に難色を示している)
先日のKMT-CCP両主席会談後に、中国の胡主席は台湾の国際活動に一定の理解を示す発言をしたようですが、ウクライナ方式での台湾の国連加盟(これはこれで「有難迷惑」でしょう)はさておき、WHOへのオブザーバー参加といった人道面でも「一つの中国」の原則を譲らなかった連中ですからねぇ。馬氏もこの会談を「セカンドトラック」と称していましたが、党国体制の時代ではないにせよ、今後「特殊な国と国」同士の政府間交渉までこぎつけるのは難しいと思います。海基会ルートでの実務折衝が進展すればそれでよしという向きもあるでしょうが、台湾内でもこの辺の捉え方には温度差がありそうですね。
台湾の中国傾斜もさることながら、日本国内では(産経系言論人あたりで)李登輝氏の馬英九氏傾斜に困惑する向きもありそうです。毀誉褒貶と申しますか、「したたかな隣人」ぶりを体現してきた点において、すこぶる台湾的な人物ではないかと私自身は思いますけどね・・・・
中国はジャーナリストにとって世界最大の監獄 国境なき記者団