リオでのオリンピック・パラリンピックが終了しました。私の専門は陸上競技ですから、その競技の状況について述べてみたいと思います。今回のオリンピックに関して、男子の4×100mリレーと50km競歩でそれぞれ銀・銅メダルを取りました。喜ばしい限りですが、果たして陸上競技は手放しで喜んでいて良いのでしょうか?それ以外の種目では、ベスト8に入ることがかなり厳しい状況でした。パラリンピックでは、メダルの数は増えたようですが、肝心の金メダルは一つもありませんでした。陸上競技では、決勝には残るのですが、本人として今一つの結果しか出せなかった選手が多かったのではないでしょうか?
多くの選手を指導するうちに、日本の陸上競技指導は、「小学校ー中学校-高等学校ー大学ー社会人」と進むにつれて、指導者が変わり、指導法もそれぞれ変わってしまっていることに気付きました。しかも、小学校時代に強かった選手が、「社会人になっても強い」という状況が非常に少ないということにも気付きました。私はこの原因は、小学校時代に、指導法として当たり前のように現在でも行なわれている「もも上げ・地面を蹴る指導」にあるのではないかと考えています。知っていましたか、スポーツ科学は前期の指導法は間違えであると報告していることを。
小学校・中学校・高校時代に優秀な成績を残した選手が、先に行って伸び悩む。このような時に指導者は、①もともと選手に才能(将来性)があまり無かったのに、選手が早熟であったため前段階では勝てた ②前段階で鍛えすぎたために、先での伸びしろが無かったため といったことをよく理由として挙げます。私は、前にも述べましたが、前段階に強かった選手が先に行って伸びない大きな理由は、前段階で身に付けた疾走技術・体力トレーニングの指導法が間違っているために、初心者の頃に色濃く身に付けた運動技術・体力が邪魔をして、先での記録の伸びを妨げ、ひいては怪我との戦いにしてしまい、過去に栄光に輝いていた選手たちはその状況に耐えられなくなり、競技を諦めていってしまっているからではないかと考えるようになって来ました。
それでは、どうしたら良いのでしょうか?陸上競技種目は、体力を向上させるだけで、ジュニアの選手は伸びていきます。つまり、技術練習はそっちのけでも、体力を向上させることを練習の中心に添えて指導して行けば、高校段階までは記録を伸ばすこと、大会で勝つことは充分可能です。高校以上ですと、才能のある選手を呼んできて一つの学校に集めて指導することが可能です。そしてそういった学校が今まで体力中心にやって、良い成績をおさめてきた傾向があります。当然、指導書等もそのような学校の指導者が記述することになりますので、全国に体力中心のトレーニング法が流行しているのが今である、と私は考えています。しかし「体力の向上は、無尽蔵に成績の向上に正比例的には結びつかない」ということに気付きました。このような現状に対して、私は「技術練習中心主義」を唱えたいと思います。詳しい方法は、後に記述していきます。