私が大学を卒業した頃、ソニーのウォークマンのCMで、ヘッドフォンを耳に当て直立不動の姿勢で流れているであろう音楽に陶酔している「ニホンザル」の姿が話題になったことがある。
なんでもこのサルは「反省猿」で一世を風靡した猿回しのサルなのだそうだが(先日死去)、ウォークマンに聞きほれる人間じみたサルの哲学的な表情は忘れられないものがあった。
この映像を思い出すたびに、ことCMではiPodもウォークマンの敵ではないと思うのだが、時代は流れた。
ところで、猿に限らず動物を擬人化して楽しむというのは、鳥獣戯画の時代から人間不変のエンタテイメントでもある。
ウォーパールーパーにしろ、エリマキトカゲにしろ、クリオネにしろ、ナメ猫にしろ、その姿には自然不自然の違いはあるものの、擬人化された面白さがある。
動物も人間と同じ地球上の生物なので、共通点を見いだすのはたやすいが、人間は彼らのその「人間に似た」仕草や、行動を楽しんでしまうという、妙な性格を持っているのだ。
例えば。犬が人間のマネをしていることを人間は「ハハハハ」なんて笑って見ることができるが、人間が犬の物まねをしたところで犬は「ワンワンワン」と喜ばないのだ。
ということで、なんのことを言いたいのかというと、ここミャンマーのヤンゴン動物園には、人間に極めてよく似た仕草をしている熊がいたことを私は言いたいのだ。
熊というのは不思議な動物で、四つ足で歩いているかと思うと、シャケなどを捕まえて食べる時は二本の前足を手のように使って器用にむしゃむしゃとがぶり付くのだ。
その姿ははるか太古から金太郎さんのおとぎ話にもあるように、またアイヌの彫り物などにも見られるように人々に愛されてきている。
私が目撃し、衝撃を受け、しばし見とれてしまったヤンゴン動物園の熊は、金太郎さんの家来の熊さんビックリの擬人化されつくしたリアルな熊さんなのであった。
その姿があまりにリアルであったため、私は
「もしかして、人、入ってんのかいな」
と、
「動物園」
という落語を思い出したぐらいだった。
とはいえ、熊さんがシャケを捕まえて前足を器用に使ってシャケの薫製作りを実演販売したり、デカイ熊と小さな熊と園長さんが出て来て、滝口順平と名古屋弁の南利明がセリフをあてていたわけではない。(古くて分かりにくいネタであるが、分る人は分るであろう)
そんなハンナ・バーバラのアニメーションではない。
ヤンゴン動物園のクマは、熊舎にある二メートル角ぐらいの浴槽に浸かり、気持ち良さそうに入浴していたのだった。
「なに?そんなのどこが面白いの?」
とおっしゃるアナタ。
アナタには是非ともヤンゴン動物園を訪れていただきたいと思うのである。(バンコク経由でタイ航空の格安航空券が往復?60000くらいからあります=とりがらご案内)
「ウァー、見て見て」
と叫んだのは、そう、Tさんなのであった。
「なんですか」
とTさんの指さした方向を見て、私はひっくり返りそうになった。
熊が浴槽に浸かり、顔を洗ったり、持って入っている棒を持って温度を調節するかのように、かき回したりしているのだ。
しかも肩までしっかりと浸かってあたり眺める姿は、まさに「オヤジ」そのものなのだ。
浴槽に浸かっているだけの熊ならば珍しくないが、顔を洗うとは。
それに顔を洗ってはため息をつき、後ろのカベにもたれかかり、
「う~~~」
と唸っているところも、銭湯につかりに来た仕事帰りの大工の棟梁てな感じなのだ。
浴槽を独り占めしているこの熊はこの熊舎のリーダーらしく、棟梁という喚び方にいささかの間違いもないように思えた。
カバと戯れ、象と遊び、そして「ひょっとして、着ぐるみ?」と思えそうな熊を観察できたことに、私は200パーセント満足していた。
さすが開園100周年のヤンゴン動物園なのであった。
つづく
なんでもこのサルは「反省猿」で一世を風靡した猿回しのサルなのだそうだが(先日死去)、ウォークマンに聞きほれる人間じみたサルの哲学的な表情は忘れられないものがあった。
この映像を思い出すたびに、ことCMではiPodもウォークマンの敵ではないと思うのだが、時代は流れた。
ところで、猿に限らず動物を擬人化して楽しむというのは、鳥獣戯画の時代から人間不変のエンタテイメントでもある。
ウォーパールーパーにしろ、エリマキトカゲにしろ、クリオネにしろ、ナメ猫にしろ、その姿には自然不自然の違いはあるものの、擬人化された面白さがある。
動物も人間と同じ地球上の生物なので、共通点を見いだすのはたやすいが、人間は彼らのその「人間に似た」仕草や、行動を楽しんでしまうという、妙な性格を持っているのだ。
例えば。犬が人間のマネをしていることを人間は「ハハハハ」なんて笑って見ることができるが、人間が犬の物まねをしたところで犬は「ワンワンワン」と喜ばないのだ。
ということで、なんのことを言いたいのかというと、ここミャンマーのヤンゴン動物園には、人間に極めてよく似た仕草をしている熊がいたことを私は言いたいのだ。
熊というのは不思議な動物で、四つ足で歩いているかと思うと、シャケなどを捕まえて食べる時は二本の前足を手のように使って器用にむしゃむしゃとがぶり付くのだ。
その姿ははるか太古から金太郎さんのおとぎ話にもあるように、またアイヌの彫り物などにも見られるように人々に愛されてきている。
私が目撃し、衝撃を受け、しばし見とれてしまったヤンゴン動物園の熊は、金太郎さんの家来の熊さんビックリの擬人化されつくしたリアルな熊さんなのであった。
その姿があまりにリアルであったため、私は
「もしかして、人、入ってんのかいな」
と、
「動物園」
という落語を思い出したぐらいだった。
とはいえ、熊さんがシャケを捕まえて前足を器用に使ってシャケの薫製作りを実演販売したり、デカイ熊と小さな熊と園長さんが出て来て、滝口順平と名古屋弁の南利明がセリフをあてていたわけではない。(古くて分かりにくいネタであるが、分る人は分るであろう)
そんなハンナ・バーバラのアニメーションではない。
ヤンゴン動物園のクマは、熊舎にある二メートル角ぐらいの浴槽に浸かり、気持ち良さそうに入浴していたのだった。
「なに?そんなのどこが面白いの?」
とおっしゃるアナタ。
アナタには是非ともヤンゴン動物園を訪れていただきたいと思うのである。(バンコク経由でタイ航空の格安航空券が往復?60000くらいからあります=とりがらご案内)
「ウァー、見て見て」
と叫んだのは、そう、Tさんなのであった。
「なんですか」
とTさんの指さした方向を見て、私はひっくり返りそうになった。
熊が浴槽に浸かり、顔を洗ったり、持って入っている棒を持って温度を調節するかのように、かき回したりしているのだ。
しかも肩までしっかりと浸かってあたり眺める姿は、まさに「オヤジ」そのものなのだ。
浴槽に浸かっているだけの熊ならば珍しくないが、顔を洗うとは。
それに顔を洗ってはため息をつき、後ろのカベにもたれかかり、
「う~~~」
と唸っているところも、銭湯につかりに来た仕事帰りの大工の棟梁てな感じなのだ。
浴槽を独り占めしているこの熊はこの熊舎のリーダーらしく、棟梁という喚び方にいささかの間違いもないように思えた。
カバと戯れ、象と遊び、そして「ひょっとして、着ぐるみ?」と思えそうな熊を観察できたことに、私は200パーセント満足していた。
さすが開園100周年のヤンゴン動物園なのであった。
つづく
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