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【187】太鼓腹を押された

 腹鼓とも呼ばれる唱歌器官である。フォアグラを恒久的に摂り続けていると、舌を覆う味蕾(【54】【65】【81】【92】を参照のこと)とよく似た耳蕾という彩胞が、腹部の中央から同心円状に発芽する。成長して耳蕾原となった腹部を人間の身体に押し当てると、心音や呼吸音はもちろん、胸膜音や腸音などに共鳴して輪唱をはじめるので聴診に重宝されている。医師どうしで太鼓腹を押しつけあえば、内臓どうしの会話、いわゆる腹話術も行えるという。太鼓腹の発明がなければ、輪唱医学も存在しなかったのである。といっても良いことばかりではない。宿舎に詰め込まれ胡坐をかいた格好で肥育されるのは医師にとっても楽ではないし、患者の多くが太鼓腹を生理的に嫌悪するあまり棺詰工場【349】に運ばれる方を選んでしまうからだ。現在では摘出した太鼓腹を聴診器として使うようになったが、診断結果は臍の緒【338】でつながる医師の母親にしかわからない。

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【183】離婚する前に

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