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【349】棺詰工場

 霊柩車は、卵【○】運ぶ列【11】の反対側にある入口から棺詰工場の中にあっけなく入ると、棺【297】を降ろして去っていく。六人の工員たちが棺を運び込んだ生産ラインには、蜂の巣状の墓穴に覆われた流線型の巨大な構造フレームが泰然と横たわっている。両面合わせて三百六十ある墓穴に、棺が次々と埋葬され、磨き上げられた歴史の鱗【340】で封じられていく。亡弔席からその様子を眺めていた家族や知人たちは、生まれる【212】ことのなかった故人を想い、鱗に刻まれた歴史【302を語り継いでいくのだろう。構造フレームは名残を惜しまれながら、ベルトコンベアーによって次の工程【354】へと運ばれる。

 

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