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【350】指紋

 指紋は、神へと至る道のひとつとして虚無僧【355】から施される精緻な迷路で、契約相手(個人から神まで)との証書として用いられている。通常なら十の指で事足りるが、足の指を合わせれば最大で二十の契約を交わすことができる。四十八の手をもつ原文ママ【227】などは四百九十もの契約を交わした多重債務者なので、自らの作り出す書物【205】ほども自由意思を行使できない。カルサワ君【四一】が願いはじめていた神との契約には、二十指のすべてを証書にしなければならない。契約を破棄するには指をつめるしか方法がない。原文ママはいま四百九十の指をゲンマン機に突き出して、五本ずつ切り落としているところだ。だが同じ指が生えてくるところまでは計算に入れていなかった。三十二本目の小指でそういう契約を交わしていたことなど忘れる契約だった。

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【345】唐突に順番がまわってきたのだった

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