萬文習作帖

山の青年医師の物語+警視庁山岳救助隊員ミステリー(陽はまた昇る宮田と湯原その後)ほか小説×写真×文学閑話

secret talk56 時計act.7 ―dead of night

2018-01-07 23:34:30 | dead of night 陽はまた昇る
唯ひとつの夜に、
英二side story追伸@第5話 道刻


secret talk56 時計act.7 ―dead of night

ベッドに座る君の隣、座れたらいい。
それなのに座れない、君の隣だから。

―俺ってこんな純情だったんだ?

心裡ひそやかに笑ってしまう、意外すぎて。
こんなに躊躇うほど嫌われたくない、好かれたい何をしても。

どうして?

「消灯後って湯原、何してた?」

思いついた言葉なんとか笑いかける。
ほら?「なんとか」精一杯の自分だ。

「…べんきょうしてた、けど」

応えてくれる視線の睫が長い。
おだやかな深い陰翳きれいで、ふれたくなる。

「ほんと湯原は努力家だよな、」
「宮田もだろ…テキスト出たままだ、」

長い睫の視線そっと机ながめてくれる。
その唇やわらかに微かに笑って、ふれたい。

―キスしたいとか俺、変態かな?

男の自分が湯原にキスしたがる、たぶん普通じゃない。
男同士だから一般的じゃないのは当り前、それ以上に自分が誰かの唇を求めるなんて?

「そのテキスト登山の生理学だろ、山岳救助隊になる勉強…本気なんだなってわかる、」

深い声おだやかに告げてくれる、その唇かすかに笑って綺麗だ。

「宮田こそ努力家だと俺はおもう…がんばってる、」

きれいだ、呼んでくれる唇が綺麗だ、あの唇にふれたい。
自分を呼んで長い睫やわらぐ、黒目がちの瞳が自分を映す、あの睫ふれたい。
こんなの普通じゃない、こんな自分は知らない、でもほら?白シャツ小柄な肩に、コットンパンツ細い腰にふれたい。

「ありがとな湯原、」

微笑んで自分の顔、でも鼓動の底が叫びだす。
ふれたい、触れたい君に、この手を伸ばせば届くのに動けない。

※校正中

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