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『クジラは食べていい』 小松正之

2007年05月30日 | 新書教養


クジラは食べていい!.jpg



今年はアラスカのアンカレッジで、国際捕鯨委員会(IWC)が始まりました。例によって、捕鯨国イジメのようなものが展開されるはずですが、ここ数年は徐々に環境団体のあやしさが知れわたり、日本などの捕鯨国が他国の理解を得つつあったと感じていましたが、今年はまた厳しい状況に追い込まれそうだと報道がありました。


かつては、日本は単にクジラを獲って食べるということだけで、国際的に孤立し、商業捕鯨を止めさせられ、いまだに調査捕鯨しかできなくなってしまいました。日本人が普通に考えれば、同じ哺乳類である牛を何万頭も殺して食べているのが許されて、なぜ鯨は許せないのか理解に苦しみますよね。

しかも捕鯨に強行に反対している英、米もつい一世代前は捕鯨大国で、儲からなくなったからやめただけです。少し前に、ご紹介した衝撃的なノンフィクション大作、『復讐する海ー捕鯨船エセックス号の悲劇(ナサニエル・フィルブリック(著) 相原真理子(訳) )』 には、実に情け容赦なく、アメリカがクジラを殺して、油だけをとっていたかが書かれています。


ところが今では、国際捕鯨委員会(IWC)が開かれると、周辺で米・英・豪の国々、グリーピースなどの環境保護団体が過激な運動を展開します。そんな中で孤軍奮闘、外国政府や環境団体と“正論”で渡り合ってきた、当時、農林水産庁の小松氏の胸のすくような主張と実際の活動が描かれているのが本書です。 

クジラは食べていい(小松).jpg


官僚と言えば…、松岡利勝氏が自殺しただけでなく、官製談合システムを発案した緑資源機構の「陰のドン」と呼ばれた山崎進一氏までも自殺してしまいましたので、ますます官僚や官僚出身の政治家には、不信の目が向けられて当然でしょう。そんな農林水産庁の一官僚の本なのです。


この方は、本当にすごいです。官僚はどこの国でも悪人と決め付けられている印象ですが、(あえて否定はしませんが(笑))、小松氏の活動がなかったら今頃、捕鯨船は博物館の展示品だけになったのじゃないかと思われるほどの活躍ぶりです。


以下が目次です。



序章 日本の市場から魚が消えてしまう!?(クジラ過剰保護が生んだ漁業者の嘆き)

第1章
 食糧危機を救えるのはクジラだ(このままでは魚がいなくなる!?;「捕鯨禁止」が生態系を破壊する! ほか)

第2章
 IWCに巣食う魔物たち(捕鯨を葬り去ろうとする反捕鯨国の数の暴力;科学的根拠をねじ曲げるIWC本会議の実態 ほか)

第3章
 反捕鯨「環境団体」の正体(金集めのために宣伝行為をする反捕鯨環境団体;南氷洋調査を妨害するグリーンピースの卑怯なやりくち ほか)

第4章
 捕鯨再開までのカウントダウン(京都会議合意からはじまる日本の捕鯨推進運動;IWC健全化は会議の透明化からはじまる ほか)



環境団体の金の流れや、それに乗って票を集めるためには何でもしようとする政治家連中を描いたり、突然、捕鯨反対にまわってしまった小国が、裏で大国や環境団体からのイジメ(おどし)をうけていたなどの事情を調べ上げ、一歩も引かぬ交渉を展開しています。

そういった態度が徐々にではありますが、捕鯨反対だった諸外国の尊敬や信頼感を生み、本当に少しずつ状況は改善されつつあるそうです。こんなサムライのような官僚ばかりなら日本の未来は明るいと感じる次第です。 


本書は確か、勝谷誠彦氏の著作の中で(書名は失念) 推薦されていたもので、勝谷氏は小松氏のような方こそ、総理大臣になれば良いのだとまで述べていたと記憶しています。その気持ちがよく分かりました。真の国際人とはこういう方じゃないかと思います。

鯨の問題に限らず、日本の外交交渉を考えさせてくれる一冊で、多くの方にお薦めします。


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8 コメント

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鯨は食べていいんです、そう思います (Dan)
2007-05-30 15:41:47
今日のブログを開いて、「あ、この方知ってる」と思い、小林よしのり氏責任編集の「わしズム」を本棚から引っ張り出して、探しました。
ありました、2003年9月25日発行のVol.8に小松正之VS小林よしのりのクジラ対談「安けりゃいいのか!?日本の魚」
当時、この記事を読んで、「へ~、官僚の中にも、こんな骨のある人物がいるのか」って、とても感動しました。
VIVAさんも書いておられますが、この記事にも胸のすくような主張を展開されております。
日本人は鯨体を100%利用しますが、西洋の商業捕鯨は鯨油のみで利用して、残り90%の鯨体を海洋投棄するなんて知ったら、日本と西洋を一緒にするな!って思いますよね。
反捕鯨国は、日本が捕鯨を続けて鯨を絶滅の危機に追い込んだなんてえらそ~に言いますけど、その前にあなた達が、乱獲したでしょって私も言いたい!
すみません、鯨大好きなもんで、熱くなってしまいました。
小松氏のような方が総理大臣になれば、日本も生まれ変わるかもしれませんね。
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先を越された! (milesta)
2007-05-30 21:06:40
私も捕鯨の本を採り上げようと思っていたら、先を越されてしまいました。しかも私の本はちょっと古いかも。それにVIVAさんの本とても面白そうです。

きのう、BBCの記者がやっとまともな記事を書いているのを見つけました。ちゃんと日本まで取材に来て書いているので、いろいろ考えたようです。
http://blog.goo.ne.jp/kitaryunosuke/e/00d566fc82799dc8484304c060eba8df
以前コメント欄に書いたように「何を食べて良いか悪いか誰が決めるの?」と思っていたので、同じようなフレーズがあって嬉しくなりました。
それにオーストラリア環境相の感情的な捕鯨批判にも釘をさしてくれていますし。

だけどIWCは今年も厳しいんですね。まだまだ西洋社会は「自分が決めていいんだ。」と勘違いしてますね。小松氏は孤軍奮闘なのでしょうか?韓国はクジラ食べるのに共闘してくれないんでしょうか?
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Danさん (VIVA)
2007-05-31 00:52:09
そうでしたか。小林よしのり氏の本に出ていたんですか。まったく知りませんでした。本書も良い本だと思いますが、そういうことでしたら、そちらの方もぜひ読んでみたいです。

今年はどちらかで活躍していらっしゃるのでしょうかね。

貴重な情報ありがとうございます。
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milestaさん (VIVA)
2007-05-31 01:03:59
興味深い記事をご紹介くださってありがとうございます。はい、この本がおもしろいことは、間違いないと思います。よろしければお読みになってください。


それにしても、オーストラリア人によく伝えておいていただけませんか。文化が違うのだってば!と。お願いしますよ(笑)。
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アルジャジーラによると (山ちゃん)
2007-06-01 21:47:42
Japan 'may quit' world whaling body(↓)

http://english.aljazeera.net/NR/exeres/B8DA8950-711A-44B2-B797-693AA8A3A3C1.htm

アルジャジーラによると、日本は今回はかなり激しく反捕鯨国とやりあっているようです。(BBCとCNNでは大きく取り上げられてないようですが、アルジャジーラではすぐわかる位置にありました)
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山ちゃんさん (VIVA)
2007-06-01 22:11:07
今まで、授業をしていたので、ご紹介の記事を読んでびっくりです。日本の外交とは思えません(笑)。すごいですね。

本気でやめちゃうんですかね?駆け引きですかね?

本書なんかを読みますと、もういい加減さっさと飛び出した方が良い!なんて思ったていたのですが、まさかこういうタイミングで突然発表されるとは思ってもみませんでした。

それにしても、山ちゃんさん、IWCのニュースをアルジャジーラまでチェックされているとは…。敬服いたします。また、いろいろ教えて下さい。ありがとうございました。
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たまたまです (山ちゃん)
2007-06-01 22:14:11
アルジャジーラの英語版はRSSリーダに入れているもので・・・。(^_^; ただ、それだけです。
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山ちゃんさん (VIVA)
2007-06-01 22:25:52
そうでしたか。またご実家が捕鯨でもされているのかと思いました(笑)。うそです。

明日の新聞の扱いや、今日のニュースでも大きく報じられますかね。

いずれにしろ、貴重な情報ありがとうございます。
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