「第5回ソルベー会議」
「M of Beauty」に収められている「四の喫茶館物語」にある「スリット」は言うまでもなく電子の波動説のことを言っている。電子が粒子か波かについての議論は量子論が確立されることによって結論付けられた。
量子論が確立されたのは「第5回ソルベー会議」においてというのが定説である。その会議の集合写真はとくに有名で、教科書に出てくる理論物理学者のほとんどが出席している。自分もこの写真を眺めるのが好きだ。アインシュタイン、キュリー夫人、プランク、ボーア、シュレジンガー、パウリ、ドブロイ、ボルン、ローレンツ、まだ26歳(!)と思われるが、この年「不確定性原理」を発表したハイゼンベルグもいる。
アインシュタインが登場してからボーアが量子論を確立するころ、物理学で懸案とされた多くの矛盾点が実は矛盾ではなく、そもそも前提が間違えているのだ、という仮説が提唱され、実験によってそれらの正しさが確認された時代であった。「電子は波か粒子かでなく、波でもあり粒子でもある。」「光は波でもあり粒子でもある。」「光より速いものは存在しない。」「質量はエネルギーに変換できる。」などなど。
物の2面性。同時に真逆の存在であり、正体がつかめない人の比喩としてここでは使われている。答えは「どちらか」でなく「どちらでも」。