こちらも山岳小説のトップ10に入っており、かつ、新田次郎文学賞を
受賞した山岳ミステリー集となれば、期待していたのだが...
黒部の羆、灰色の北壁、雪の慰霊碑の3つの短編山岳ミステリー集だ。
黒部の羆は、ちょっと、実験的な感じがした。自分が遭難して救助して
もらった後、自分も救助隊に入り、同じような若者たちを救助する
のだが、どこで話が切り替わったか、わからないように書いてあるのだ。
灰色の北壁も、謎が、伏せられたまま進行していくので、ちょっと、
毛色の違うミステリーだ。
最後の雪の慰霊碑も、死んだ息子の山に登る父親の話なのだが、
自殺するのではないかと周りのものが思い込んで救出に向かうという
話だ。
どれも、非常にユニークな筋なのだが、少し、どろどろした人間関係も
あり、正直言って、やや、期待していたものではなかったようだ。