意思による楽観のための読書日記

アナザ・ヘブン(下) 飯田譲治・梓河人 ***

柏木千鶴が死んだことによって解決したと思われた被害者の脳が食べられてしまうという連続怪奇殺人事件、しかし事件の被害者だった木村敦にそのナニカの脳は乗り移っていた。そしてその木村も飛鷹の家族を襲ったところを危機一髪駆けつけた早瀬の拳銃で殺害された。報道は「犯人死亡」であったが、飛鷹も早瀬もナニカが次の犠牲者に乗り移っていることを疑わなかった。そして次の犠牲者は産婦人科医師で美人の笹井瑞紀、早瀬の好みのタイプだった。瑞紀に乗り移ったナニカは徐々に人間世界に慣れてきているようだった。瑞紀に乗り移ったナニカは早瀬に狙いを定め、誘惑の作戦に出た。騙されそうになった早瀬であったが、飛鷹の電話で瑞紀に乗り移ったナニカを見破った。しかし、それでも信じられない早瀬、早瀬にベタ惚れの朝子は早瀬が瑞紀に近づくのを妨害しようとする。しかし妨害すればするほど朝子と瑞紀の魅力差を思い知る早瀬、しかし、結局瑞紀に乗り移ったナニカは正体を表し、死ぬ間際に警察鑑識の赤城に乗り移り、乗り移られたことを瞬時に悟った赤城は、犯人を示す三本指のサインを飛鷹と早瀬に残し、自らの頭を銃で吹き飛ばし、ナニカは吹き飛んでしまう。

これで本当に事件は解決かと思われたが、次の犠牲者は朝子だった。早瀬を愛する朝子、朝子に乗り移ったナニカは朝子の心に影響を受ける。朝子は心の底から早瀬を愛していたので、ナニカにもその愛が影響したのだ。ナニカの力は弱り、最後には朝子の体から水になって排出された。水は飛鷹と早瀬によって蒸発され、ナニカはこの世から消滅した。しかし、水蒸気も空から雨になって落ちてくるかもしれない、という余韻を残しながら、三本指のサインはWaterを示す手話、という意味であったことを飛鷹の娘チカが思いつく。奇跡の人、ヘレン・ケラーが最初に覚えたサインがダブリューだ、と言う話し。

ナニカとはこの世に巣食う悪意の象徴であり、人の脳に存在する悪意を好物としてこの世に降り立った悪意のシンボルであった。殺人、戦争などという大きな悪意だけではなく、邪な心は小さくても多くの人の頭に宿る、それをナニカは餌食にしていたのだ。そのため善意の被害者の脳は食べられないし、朝子の無償の愛には敵わなかった。目に見えるものしか信じられない刑事の飛鷹と、UFOの存在を信じる早瀬、直感的に生きる朝子、そしてカルトに興味を持つ飛鷹の妻美冴、そして頭が柔らかく賢い娘のチカ、この世には悪意はあっても、多くの個性のぶつかり合いと組み合わせで成り立っている、ナニカは結局はこの世の強さには敵わなかった。この世にもある「アナザ・ヘブン」、多くの人が願う平和や愛情こそが本来のヘブンの構成要素であるというお話である。



読書日記 ブログランキングへ

↓↓↓2008年1月から読んだ本について書いています。

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最新の画像もっと見る

最近の「読書」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事