ポン太よかライフ

得した気分、首都圏見て回りの旅、美術館散歩

ホキ美術館、写実絵画と建築を楽しむ

2012-06-14 17:31:02 | 博物館、美術館行ってきました
ちょっと遠いので、気になっていたのですが、なかなか行けない美術館の首都圏近郊版
ホキ美術館に行ってきました。
千葉県千葉市緑区あすみが丘、千葉からほど近いJR外房線土気駅からバスで5分ほどのところにあります。

    

2010年11月3日に開館したばかりで、中空に浮かぶ箱の形をした斬新な建築も2011年度「第7回 日本建築大賞」に選ばれるなど日建設計(山梨和彦)の意欲作で注目されています。
コレクションは、医療用キット製品トップメーカー株式会社ホギメディカルの保木将夫氏が収集した森本草介、塩谷亮、五味文彦日本の現代写実絵画作品、約300点から成り、常時160点ほどが展示されています。現代の写実。ホキ美術館名品展を開催中

現代日本の写実絵画ばかりを見るという機会はなかなかないので、地上1階、地下2階の三層の計500メートルにわたる回廊型ギャラリーをめぐり個性的な作品群をじっくりと堪能することができました。

とても新鮮で個性的な展示に感じられたので理由を考えてみました。

本物そっくりに描かれてはいてもテーブルからあふれ出さんかの様に様々な品物が描かれた、オランダの富を誇示する静物画の濃密さとは作品の持つ熱が違い、

アメリカのスーパーリアリズムとも違う。

とりわけ戦後の抽象表現主義の反動として、ポップアートに次いで現れたスーパーリアリズムは、日常的な風景や路上、街角などを写真と見間違えるほどリアルに描きますが、写実主義とは違い写真に撮られたイメージを感情なしで忠実に書き写し没個性的といわれています。ど肝を抜くような技法が目的化した超写実は人の足を止めるインパクトがあり、感情的なものを避けたクールさこそが身上といった感じがします。

もちろん日本の写実表現といってもいろいろな作家がいるのでひとくくりというわけにはいきませんし、ホキコレクションから外れた日本の写実表現作家の中には、ぞっとするような残酷さを個性として打ち出す方もいます。
ドイツに行った時に、開催されていたメキシコのフリーダカーロの美術展が人気で、美術館を取り巻いた行列のあまりの長さに驚いた覚えがありますが、世界中で現代人のアートの志向が不安を抱えた時代を映しているのかもしれません。作家個人の体験や感情をもとに、従来の美意識を覆す表現や画題で見る者に痛みを突きつける方に傾いているものがあります。


しかしホキで多くの作品展示があった森本草介や野田弘志に見る日本の写実表現の印象は、美術の潮流とは別の、もっとまなざしの温かい、大衆が受け入れやすい心地よい画面、写実表現でいえば、アメリカのアンドリュー・ワイエスの郷愁に近いものを感じました。
優れた絵というものは、近寄って細部を見ても絵になり、見るほどに吸い込まれます。

ワイエスの場合は、田舎の日常で見られる何の変哲もない壁のシミ、使い込まれたバケツのへこみや扉の傷を描いて、生活していた人々の気配を漂わせ懐かしさを感じさせます。
人に対しても、物に対しても、一瞬の光景を切り取った画面ではなく、深く知った対象の時間の幅が凝縮されたような深みが愛着として感じられます。

ホキのコレクションでは、あるがままというより、もう少し理想化された創造が働いているようで、見る人の感情的な部分に訴えかける工夫を感じます。
金属の錆の一つ、黒板の消しかけのチョークの痕、半透明のシールの再現など、驚異的な写実表現の技術で時間を凝縮し見る者を飽きさせない一方で、皮膚の下に透ける血管の青さまで描き込み、演出用の家具調度や衣装で飾り、構図を工夫し、まるで写真にいろいろな効果を施すようにドラマティックな光や色調を加えて、女性の肌や子供のしぐさを清楚で美しく愛らしく描写します。美術の動向と両極のところにあるのかもしれません。

筆致がわかるようにガラスに入れないで見せてくれていますが、あまりのリアルさに思わず…という人が後を絶たないのか、「作品に触らないでください」の表示がところどころにあって苦笑しました。

美術館内部は、繊細な細密画の観賞を妨げないように、壁面の目地、ピクチャーレールやワイヤーを排除した!!シンプルな壁、足あたりがやわらかで継ぎ目のないゴム床(優れもの)、フラットな天井、調光した全館LED照明などが使われ、所々に自然の風景を取り込むガラスがはめ込まれて意外な視界が開け、館内の散策が楽しい空間になっています。



濃密な観賞に疲れた後は、明るく素敵な雰囲気のカフェでランチを頂きました。
座り心地の良い椅子で、ホキ美術館の特集記事の載った雑誌を読みながらしばし待つうちに、ハヤシライス(サラダとコーヒー付き1,500円)
が来ました。ボリュームたっぷりで満足しました。

図録は、ミュージアムショップで頼めば送ってくれるので、身軽に帰ることができました。印刷すると筆致が分からなくなるので、風景などまるで写真の図録のようでした。









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